朧月夜

鹿児島の離島で暮らしています。

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最近の記事

ご挨拶

ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとゞまりたるためしなし。世中にある人と栖と、又かくのごとし。 月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり。 生来の気まぐれ虫が動き出し、秋風に後を押されて、突然旅に出てしまい、大変ご迷惑をおかけしました。 いろいろ悩みましたが、島日記は本日をもって終わりにしようと思います。 noteを始めて書くことの愉しさを知りました。 634日、毎日続けてこられたのは、皆さまが読

    • 島日記 旅へのいざない

      やっと見つけたスタインベックの「チャーリーとの旅」 県立図書館のスタインベック全集にあった。 古い二段構えのカビっぽい本だろうと思っていたが、意外と新しく1998年発行の読みやすい装丁だった。 昨日連絡があったので早速受け取りに行った。 スケッチの本も借りたくて。 本を手に外へ出ると、なんとも気持ちのいい日差しである。 そのまま坂の下にある、公園グラウンドに降りて行く。 ベンチがないのでセンダンの大木の根っこに座った。 購入した本を喫茶店(これも死語?)で開けるように、借

      • 島日記 老い心地 (再掲)

        黒井千次の「老のかたち」を読む。 その中のエッセイのひとつ「老い心地」について。 「世に老い心地というものがあっていいのではないか、と思いついてからしばらく経つ。最初それは、頭のどこかを漂うぼんやりとした影に似たイメージとして現れた。なんとなく優しく柔らかな感じなのだが、捉えどころのないものでもある。」 こういうタイトルの本に手がいくということは、私も、もう老いに足を踏み入れている証拠だ。 ティールームで、六十代、八十代ほどの母娘だろう客がいた。 歳とった方の客が不注意

        • 島日記 すたれていく言葉

          いつもの色の朝焼けだ。 今日も穏やかな晴れの日になりそうだ。 平凡な日常にうんではいるものの、朝は平穏に迎えたい。 朝のルーティンが壊される出来事は起きてほしくない。 こんなふうにして、変化を嫌う年寄りになっていくのだろう。 先日借りてきた図書室の本の一つ「消えた言葉辞典」を眺めている。 へー、ホー、フーンと言いながら。 昨日「移ろいゆく」を書いたが、言葉の世界の移ろいである。 この本は三省堂の国語辞典に限ったもの。 以前、三浦しおんの「船を編む」が映画化されたが、辞書

          島日記 移ろいゆく

          月桃の実が朱色になった。 庭から少し摘んでテーブルの上におく。 数日で、つややかな色はあせてしまう。 しばらく前までは群生地まで採りにいき、洗って干して、ラッピングして売ったり、プレゼントしたりしていた。 今はその気は失せてしまった。 瞬時で朝の空が変わりゆくように、四季があるように、自分の気持ちも移ろいゆく。 朝と夜でも気分が違う。 十年ひとむかしとはよく言ったものだ。 「一度決めたらやり抜く」人もいるだろう。 私は気が多いのであれやこれやに興味が移る。 これから先は

          島日記 移ろいゆく

          島日記 ドパーミンいっぱいの豆

          見たことのない豆が並んでいる。 ムクナ豆とある。 生産者も「ああ、あの人か」 好奇心で買ってみた。 まずは、薬と毒は紙一重ということだ。 インド原産、日本でも江戸時代以前までは「ハッショウマメ(八升豆)」といって作っていたようだ。 「レナードの朝」で投与された薬の原料になったLドーパ(レポドパ)、ドパーミンの前駆体がたくさん含まれているという。 noteを書いていなかったら、フーンで終わっているところだが。 水につけること2日、炊飯器で炊いて保温12時間、黒くなったら水

          島日記 ドパーミンいっぱいの豆

          日記 晴れたり曇ったり

          掃除の仕事をしていると空が山が森が海が見える。 空、山、森、海。 今年から増えたコテージの名前だ。 手前から順に、高い場所からつけているので覚えやすい。 以前からあった部屋は名前はついているが、大、小、や、何畳の部屋とか、海側、山側、真ん中は川とか隠語で呼んでいた。 新しい部屋と間違えるので、今は正式名称で呼ぶようになった。 これがなかなか覚えられない。 それはさておき、掃除の日は景色を堪能できる。 もしこの仕事が都会だったら続けられなかっただろう。 noteの写真も掃除

          日記 晴れたり曇ったり

          島日記 星のかたちのフルーツなど

          時々珍しいトロピカルフルーツを見かける。 画像はスターフルーツ。 以前食べた時は酸っぱすぎて、飾りもの果物かと思っていた。 先日、地元産の並ぶ店で見つけて食べたら、ほんのり甘くシャキシャキして梨の食感がした。 梨のように甘くはないが、淡白で好きな味だ。 上と下では味が違うので、スティック状に切るといいと後で知るが、やはり星の形に切りたい。 完熟したら黄色になる。 こんなに笑顔になれるなら、他のフルーツもケチケチせず、横目で見ないで食してみよう。 次はムクナ豆。 初めて見

          島日記 星のかたちのフルーツなど

          島日記 また思い出した

          胸騒ぎのするような朝焼けが窓から現れた。 スマホを持って外に出たり、入ったり。 他のテーマでnoteを書いていたのだが、急遽変更した。 今書いておかないと胸騒ぎがおさまってしまう。 入学して五月ごろ、寮の屋上で少量の洗濯物を干しながら見た夕焼けが思い出された。 もっと穏やかで広大だった。 涙が溢れ出して、止まらない。 我に返った時は寮監室に座っていた。 誰かが見ていたのだろう。 これ以後、寮監室で何度正座したことか。 次からは注意や叱責だったが。 その時期はよくあること

          島日記 また思い出した

          島日記 開いたばかりの

          開いたばかりの図書室へ入る。 係の人はギリギリにこられるので、掃除は昨日のうちに済ませるのだろう。 古本の匂いと静寂が飛び込んでくる。 誰かが言っていた。 開けたばかりのバーの雰囲気が好きだと。 あれ誰だっけ。 フイリップ•マーロウだ。 違った、テリー•レノックスだ。 「長いお別れ」(レイモンド•チャンドラー著)は「ギムレットには早すぎる」が有名だが、私は、開けたばかりのバーを語るセリフが好きだ。 長くなるが引用する。 最近は「ロング•グットバイ」として村上春樹が翻訳して

          島日記 開いたばかりの

          島日記 毛布のことから

          毛布を出した。 あったかーい。 頼りなげな羽毛布団一枚では寒くなってきた。 夜はそれでも足を出したりしたが、朝はくるまって出たくないほど心地よかった。 この毛布は去年母の葬儀の後に、母のために買っておいた毛布だけれどと、弟からもらったものだ。 軽くて肌触りがいい。 もう一枚、寒くなったら上にかける毛布がある。 奇しくも、その毛布は父の葬儀の後、母が、父さんのために買ったばかりだけれどと、くれたものだ。 少し重いが、色合いもよく、もちろん肌触りもいうことなし。 気に入って長

          島日記 毛布のことから

          島日記 noteを書く時間

          コーヒーメーカーが唸っている。 明けの明星は消え、まだ太陽は見えない。 薄オレンジ色が灰色の空に広がっていくひととき。 ひんやりしている、カーディガンでも羽織ろうかな。 あ、コーヒーできた。 うぁ、ちょっと苦い、きっちり計らないからいつも違う味だ。 まあいいや、誰も文句を言わない。 一日の中でも、まだ太陽が顔を出さない薄ぼんやりした時間が好きだ。 方丈まではいかないが、寝室もない、一間きりの居間。 一日のほとんどを過ごす空間だが、朝の光が射す前の空気がいちばん落ちつく。

          島日記 noteを書く時間

          島日記 ポン酢を作る

          島には柑橘類が多いので、大量に手に入った時は絞って冷凍しておく。 皮は冷凍するか乾燥させる。 柑橘がない季節はそれでポン酢を作る。 市販のポン酢やめんつゆ類を買わなくなって久しい。 慣れてしまえば作るのが当たり前になる。 手間はかかるが、いい素材を使っても市販品より安上がりでおいしいと、思うことにしている。 この歳になれば、さしすせそ以外の調味料も必要ない。 誘惑に負けて買った珍しい調味料は冷蔵庫で眠っている。 果汁のストックがなくなったので、宅配コープに注文した。 小粒

          島日記 ポン酢を作る

          島日記 エーデルワイスの思い出

          朝6時にエーデルワイスの曲が防災無線から流れてくる。 6時、10時、12時、15時、17時にに短い音楽やチャイム流れるので、だいたいの時間はわかる。 農作業や土木作業などはチャイムが合図で休憩をとる。 それに加え、朝は船の欠航など、毎夕には役場からのお知らせ、その上、集落毎の連絡事項。 防災無線は休むことがない。 最近は苦情もあるのか、「繰り返します」はなくなった。 島に来た頃住んでいた集落では、毎日夕方小学生の朗読の放送もあり、驚いた。 読むのが苦手な子、棒読みする子も

          島日記 エーデルワイスの思い出

          島日記 雨の朝の空の色

          雨の朝だ。 音もなく降っている。 窓から見える空の色、はて何色だろう。 雲はない、一色だ。 青を薄めてぼんやりさせたような。 (画像より青がまさる) 色は細かく区分され、それぞれに名がある。 日本の伝統色にはうっとりするような呼び名がつけられている。 noteが書けない時は、色シリーズもいいなと思わせるほど、イメージが湧いてくるネーミングである。 すぐに調べられる魔法の板で近い色を探す。 青色伝統色、あるある、七十いくつも並んでいる。 その中で最も近いのは「水縹色」 浅縹

          島日記 雨の朝の空の色

          島日記 自分にエール

          団体客が入り、数日掃除の仕事は休みだったが、昨日からまた忙しくなる。 午前中だけとはいえ、連日の出勤は身体にこたえる。 農作業の仕事も始まっているので、スタッフも少なくなり、あと一月は気合いを入れないといけない。 団体客は外国の方で、森林セラピー講座の最後に現場体験をする研修のようだった。 アメリカの会社主催だが参加者は香港、シンガポールやオーストラリアの人たち。 何とグローバルなことよとパスポートも持たない身はひがんだ…… そんなわけはない、こちらはその現地で生活している

          島日記 自分にエール