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【安曇野から発信する潤一博士の目】21~氷河時代の安曇野「植物化石とオオツノシカの化石から」

 1957年3月に、安曇野市明科の吐中(とっちゅう、海抜580m)で、オオツノシカの化石とたくさんの植物化石が発見されました。KOBAYASHI,K.(1958)と小林国夫(1965)によると、植物化石は、チョウセンゴヨウ、ヒメバラモミ、トウヒ、コメツガ、シラベなど亜高山帯針葉樹の球果などと直立した樹幹でした。年代はほぼ16,000年前でした。

直立した針葉樹の樹幹
KOBAYASHI,K.(1958)より

 発見された針葉樹は、現在、亜高山帯(海抜1,800m~2,500m)に生育するもので、当時の安曇野(海抜600m~700m)では、現在よりも1,500mも低い所に亜高山帯の針葉樹が生育していたのです。オオツノシカは、長野県北部の野尻湖底でも発掘されており、氷河時代を代表する大型の哺乳動物です。植物化石から推定して、当時の安曇野は、年平均気温が現在よりも7~8℃ほど低く、まさに氷河時代の真っただ中でした。下の写真は、当時の安曇野をしのばせる風景です。

木曽御岳山の田ノ原(海抜2,180m)
トウヒ、オオシラビソ、シラベ、コメツガなどが多い
八ヶ岳の橫岳(海抜2,100m)
トウヒ、シラベなどの針葉樹林
田ノ原のオオシラビソ球果

(地質学者・理学博士 酒井 潤一)


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