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桃の種を植えたら、ホウセンカの花が咲いた日の思い出。

魚座満月が近いせいか、今朝はなかなかベッドから起き上がれず、何だか少し熱っぽかった。ベッドの上を右へ左へとゴロゴロ転がり、シーツのひんやりとした部分を探し求めながら、スマホに手が伸びる。

X(まだ言い慣れない)を開いてタイムラインを見ていた時に、ふと目に留まった“ホウセンカ(鳳仙花)”という花の名前。

このポストを目にした時、子どもの頃の少し不思議な、とても懐かしい思い出が蘇り、今日はどうしてもこの話をここに残しておきたくなった。


みなさんは、鳳仙花をご存じですか?

私は小学生の頃、理科の授業だったか、夏休みの宿題だったかで、鳳仙花を育てたことがありました。赤い花がとても鮮やかで、“実が熟すと種が飛ぶ”という特性に小学生の私は興味津々で。同じような理由から、触れるとお辞儀をする“オジギソウ”も好きだったな。

そんなこともあって、鳳仙花は子どもの頃から、割と馴染みのある花だったのです。

✳︎

私が小学生だった頃のある夏の日。

冷蔵庫で冷やしていた桃を「おやつに食べられ〜」(← 富山弁で「食べてね〜」という意味)と母が切ってくれた。私はひっつき虫のように、台所に立つ母の隣りを陣取り、その様子を覗き込んでいました。

私は昔から料理をする人の手元や台所仕事を見るのが、とっても好きな子どもだったのです(今でも料理系の番組を見ると癒される)。桃を一つ切る作業であっても、母の隣りにくっついて、じーーーっと見てた。

狭い台所を忙しなく動き回る母からは「あ〜、もう!邪魔やねぇ」とよく言われていたけど(笑)私にとっては興味深くて、飽きることなく見ていられたのです。

・・・で、桃を切り終わった後に残る、まあるい種。

その種を見た時、桃が大好きな私は「この種を植えたら、桃の木が生えるのかな!?」、「うちの庭に桃の実がなったら、食べ放題だ!」と閃き(笑)わくわくしながら母に「この種、もらっていい??」と聞いたことをよく覚えてる。

きっと母には、私が何を考えているのかバレバレだったと思うけど、「はいはい、好きにしられ〜」(← 富山弁で「好きにしなさい」という意味)と言われたので、私は嬉々として、桃の種を洗って庭に行き、祖母が管理している花壇の一角に、その種を植えたのです。

「本当に桃の木が生えてくるかもしれない!」そう思うと胸がドキドキした。その折には、学校の先生や友達にも報告しよう!と心に決めたりなんかして。(ちなみに当時はまだ、“桃栗三年柿八年”ということわざは知らなかった笑)

今思うと笑ってしまうのですが、当時の私は真剣そのもの。大きな試みに興奮していたからか、土のくぼみに桃の種をちょこんと置いた時の光景を今でも写真のように鮮明に思い出せる。種に土をかぶせている時、ちょうど庭に出てきた祖母が、呆れるように笑っていたことも(笑)

その日から、せっせと水やりをする毎日が始まった。となりのトトロのメイちゃんばりに「まだ出ない〜、まだ出ない〜」なんて言いながら(苦笑)

そしていよいよ、10日ほど経ったある日。桃の種を植えた場所からひょっこりと顔を出す、小さな芽を発見!「やった〜!」と喜び、今まで以上に水やりに精を出す私。芽は、夏の日差しとたっぷりの水を浴びて、期待通りにぐんぐん成長していった。

そこまでは良かったのですが、本葉が数枚生えてきた頃、何かにうっすらと気づき始める私。「どこかで見たことあるぞ…」と、何となく嫌な予感がした。その後、茎が伸びてきた頃、その予感は的中。。

結論を言うと、順調に成長を続けるその植物は、学校で育てたことのある鳳仙花だったのです(がーん)

手塩にかけて育てていたのが、桃の木ではなく鳳仙花だと分かり「一体なぜ?」という疑念が拭えず…「きっと誰かが鳳仙花の種を蒔いたに違いない」と犯人探しを始めた私。一番最初に疑いをかけられたのは、花壇を管理していた祖母でした(笑)

けれど私がいくら「鳳仙花の種、蒔いたでしょ??」と聞いても、祖母は「ばあちゃんは知らんよ〜」の一点張り。桃の木を育て、いつか桃をお腹いっぱい食べることを楽しみにしていた分、執念深く何度も聞いたけれど、祖母からの返事はいつも同じ。ちなみに、母や姉など他の家族に聞いても、誰も知らないと言う。

この謎がずっと胸に引っかかっていた私は、中学生の頃にも一度、祖母に同じ質問をしたことがあるけれど、その時の返事も「ばあちゃんは知らんよ〜」だった。

結局、どうして桃の種を植えた場所から鳳仙花の芽が出たのか、30年経った今でも真相は闇の中。

ちなみに、その鳳仙花はその後、祖母の手によって育てられ、とても綺麗な花を咲かせました。そして桃の種は、鳳仙花の根元あたりから、植えた時と変わらぬ姿で発見されたのでした。

植物が好きで、育てることも上手だった祖母は、今年で何と101歳。今は施設に入所していて、このご時世、もう何年も会えていない。少し前に、ようやく面会が叶った父曰く、高齢の祖母は色々なことを少しずつ忘れてしまっているそう。

祖母は、桃の種と同じ場所に咲いた鳳仙花のことを、今でも覚えてくれているのかな。あの頃と同じ質問をしたら「ばあちゃんは知らんよ〜」と笑って答えてくれるだろうか。あれから随分と時が流れた今なら「もう時効だね」と、こっそり“本当のこと”を打ち明けてくれたりしてね(笑)

30年も前に咲いた鳳仙花。
一体、種はどこからやってきたのだろう。

真相は分からないけれど、思い出の中にひとつくらい解けない謎があってもいいのかもしれない。とても懐かしくて、少し不思議な夏の思い出として、これからも大切に覚えておきたい。


長くなりましたが、最後まで読んでくださってありがとうございます😊

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