見ていて飽きない「マピオン」のアップデート

マピオンのアプリがアップデートされて、地形の陰影が表現されるようになった。地図から地形を読み取ることが好きな私には嬉しい。地図を回転させると、それに連れて陰影も方位に最適化されるし、拡大していくと、等高線もかなり詳しく表示される。見ていて飽きない。

画像1

画像2


Cartographyという視点から見ても、ラインやフォントの設定、色表現全般にわたって、以前のバージョンに比べて洗練されているし、それであって描画のパフォーマンスを意識したスタイリングの「割り切り」が施されていることも興味深い。
GoogleマップやYahooマップは、「広告モデルとしての地図」なので、地図好きとしては見ていて正直あまり面白くない。マピオンだけはそうはなって欲しくないと期待していたので、今回のバージョンアップは個人的にはとても嬉しい。

マピオンは、鉄道乗換検索はできないものの、自動車向けのルート検索はできる。住所検索もしっかりできる。POIスポットの検索はできるが、Googleマップのような「何でも探せる」レベルでは全く無い。。イマドキの地図アプリとしては少し心細いところもあるが、鉄道乗換検索はジョルダンなどの別アプリに託すことにして、「地図表示を読みこなす力」がある程度備わっていれば、実用性は問題無いだろう。

GoogleマップやAppleマップは、ITインフラの一部としてマップサービスを世界規模で展開している。地図会社では、HEREやTomTomなどのグローバルプレイヤーがいる。どこも数千人以上のチーム規模であり、凸版印刷の子会社の一事業であるマピオンが、そうした企業と同じ土俵で勝負することは無理である。

一つの例を挙げると、POIスポットを自社でリポジトリを作ってメンテナンスするかしないか、で大きくコストは異なる。

POIスポットは初期的には地図会社などから調達することによって得られるが、様々なカテゴリーを網羅し、写真、口コミ情報や営業時間などの属性を加えていくには、複数のデータプロバイダーから調達していく必要に迫られる。結果的に、一つのスポットに対して、複数のデータプロバイダーからの情報が重複するため、それを整理しなければならない。加えて高い鮮度を維持するためのメンテナンスを実施するとなると、システム開発から実際の運用体制を構築する必要が出てきて、それだけで何十人〜が必要になるだろう。

さらに、ホテルやレストランの予約、フードデリバリー、タクシーの予約などのマネタイズを絡めて行くとなると、これまた別のシステム開発が必要となる。

地図事業の収益化のハードルはとても高く、これらの投資を行う体力があり、マップアプリだけでなく、様々な機能をAPIとして提供するなどのプラットフォーム事業を展開して、ようやく採算が見えてくる。

これらの大がかりな仕組み作りに投資できるような事業体が、日本企業に残存しているとは正直思えない。地図会社のゼンリン、インクリメントPは、本業の地図データの構築維持にフォーカスせざるを得ないし、Yahoo!や楽天のような国内ITプラットフォーマーが投資して勝算が読める規模でもない。

そうした事業環境を考えると、今のマピオンは、置かれた環境を良く理解し、今何ができるかを練り上げた、バランスの取れたアプローチだと思う。しかも遊び心があって、実はそこが大手には真似できない魅力の一つだと思う。

マピオンは、思い入れのあるAppleマップと並んで、私のiPhoneのトップ画面の地図アプリである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?