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ギアファンde日常。「ナワーブと靴の中の小石」

ナワーブと靴の中の小石

エドガーと他愛ない会話をしながら、ギルドの庭を散歩していた時。
ふと、足の裏に違和感を覚えて立ち止まる。
チクリと刺すような軽い痛み。それと、ゴロリとした異物感。
靴の中に小石が入ってしまったようだ。

普段の長いブーツは洗って乾燥させている最中で、今日は短めの靴を履いている。
そのせいで、歩いた拍子に小石でも入ってしまったのだろう。

我慢して歩こうかと思ったが、どうも気になって仕方ない。
エドガー以外、周囲に誰もいないことを確認する。
「エドガー、すまないがちょっと待っててくれ」
「お?おー」
隣を歩いていたエドガーに一声かけ、片足から靴を脱ぐ。
靴を傾けると、ごく小さな石がコロリと転がってきた。

再び靴を履く。足の違和感はすっかりなくなっていた。
「すまなかった。小石が靴の中に入ってしまってな」
「なんだぁ?おめーそういうの気にするタイプかよ」
頭の後ろで手を組みながら、エドガーが言う。

「普段の靴なら入らないんだがな…なにぶん、今履いているのが短い靴だからな」
「ふーん。俺そういうの、全然気にしねえけどなぁ」
そういうエドガーの足元を見ると、こいつも俺と同じくらいの短い靴を履いている。

「お前、いつもと靴が違うな」
「ん?あー、今洗って乾かしてんだよ。これは代わりの靴」
「なんだ、俺と同じか。…待てよ」
ふと気になり、エドガーに尋ねてみる。

「お前も靴に小石が入ってたり…いや、考えすぎか。気にしないでくれ」
我ながら子供じみた質問をしてしまったと思ったが、エドガーからの答えは想定外のものだった。
「あー、するする。ゴロゴロ入ってる」
「…は?」

うっすら嫌な予感がし、さらに聞いてみる。
「…片方だけでいい。靴、ひっくり返してみてくれないか」
「えー?まぁいいけどよ」
そう言って、エドガーも片方の靴をすぽっと足から外す。
そのまま靴を逆さにひっくり返す。

バラバラバラバラ…
いくつもの小石が音を立てて落ちてくる。
下手すると、小さな山がひとつ、できてしまうのではないかと疑うほど。

「お?意外と入ってたな。やっぱ履きなれてねえ靴はダメだなー」
からから笑うエドガー。

足は痛くないのか?とか、流石にそれは気にしろ、とか、言いたいことはいくつも浮かんできたが。
「…靴、早く乾くといいな」
その一言だけしか出てこなかった。


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