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嫌なことをまた一つやめた話。

「伯父が危篤だから、葬式の手伝いのために帰ってこい」と言われて、実家のある新潟に帰省している。

実家は苦手だ。
正確には「実家にいる母親」が苦手なのだ。
昔から、重い統合失調症でしょっちゅう妄言を言ったり、家族や他人を攻撃する言葉を吐いたりする母親だった。

帰省初日、家に滞在した時は地獄だった。
数分おきに妄言を吐く母親と一緒の部屋にいるのが嫌で、暖房の壊れた自室で毛布を被ってじっとしていたのだが、今度は何が気に入らないのか大声で喚き出す。
深夜に父親が帰ってきて宥めるまでそれが続き、おかげで初日は一睡もできなかった。

さらに具合の悪いことに、危篤だった伯父がちょっと回復し、私の滞在期間がいつまで続くか分からなくなったのだ。

このまま家にいたら私が心を病んでしまう。
もう手伝いを投げ出して埼玉に帰ろうかな…と思っていた矢先、いつか撮ったスクリーンショットが目に入った。

https://x.com/taichinakaj?s=20

なるほど、埼玉に帰る前に、私にはまだできることがあるのかもしれない。
そう思った私は「嫌なことをやめて、新潟に滞在する方法」を考えることにした。

「嫌なこと」と「嫌でないこと」を仕分けする

今回の場合、嫌なことと嫌でないことは以下のとおり。

嫌なこと
・母親と物理的に接触すること
・母親の声が聞こえるところにいること

嫌でないこと
・母親の影響力が及ばない場所で、母親との接触を必要としない活動をすること

つまり、「母親との接触を一切せず、私の役割を果たす」ことができれば万々歳なのである。

今回の帰省における「私の役割」を明確化する

葬式の手伝いは何度かやっているので、そろそろ私にも自分の役割が見えてきている。
ずばり「テレビゲームで言う『残機』になること」である。

父親にとって、今回帰ってきた私は
・葬式の手伝いをしてくれる
・声をかければすぐに応じられる場所にいる
・問題なく葬式の手伝いができるコンディションを維持してくれる
・自分の身に万が一何かあった時、自分の仕事を肩代わりしてくれる
という4点を「叶えてくれると期待できる」という状態であることに価値がある。
この場合、実際にできるかどうかよりも「それが期待できる状態でそこにいてくれる」ということが重要なのだ。

スーパーマリオも、残機ゼロの状態で操作するのと残機が1つでもある状態で操作するのは全く心の余裕が違うだろう。
残機があるからこそ、心に余裕が生まれ、操作がスムーズになる。
私は父が、葬式という名の激務ゲームをクリアするための残機になる必要があるのだ。

そして、残機の絶対条件は「勝手に消えないこと」。
つまり、私の最低限かつ最大の仕事は「残機の役目を放棄して飛ばないこと」である。

葬式の手伝いなんて流れ作業に身を任せていれば終わるものであり、せいぜいオマケの雑務だ。
本質的には「残機があるという安心感を担保する」というのが私の仕事である。

なので、伯父が死ぬまでの間、私のやるべきことは一つ。
「いかに滞在のストレスを最小限にして、葬式まで新潟に滞在し続けるか」に尽きる。

そして、私のストレス源は家にいる母親なので「家の中にいるのをやめる」ことが解決方法になった。

「嫌なこと」をやめたスキマを「嫌でないこと」で埋める

父親としては、私が家に滞在することは必須条件ではなかった。
母親の世話は父親がやっているため、私がふだん家の中にいなくても「呼ばれればいつでも家に帰れる場所」にいれば、それでじゅうぶん私の役割は果たせた。

なので「家の中にいるのをやめた代わりに、呼ばれればいつでも家に帰れる場所にいる」をどうするかが、具体的な私の課題となった。
家にいることの最大のメリットは「お金をかけずに滞在できる」ことであり、その恩恵は滞在期間が伸びるほどに顕著になる。

滞在期間が判然としない今、お金がかかることはサステナブルではないので「家の外で、いかにお金をかけずに1日を過ごすか」を考える必要が出てきた。

そして私が実行したのが「日中は図書館で時間を潰し、夜はネットカフェに泊まる」だった。
私の地元は、家から徒歩30分のところに図書館とネットカフェがある。
図書館は夕方17時まで空いており、当然ながら無料で使える。
明るく静かで空調も効いており、近くにはコンビニもある。
読書室の他に学習室もあり、漫画の執筆作業もできる。
1日の大半を過ごすにはもってこいの場所だ。

昨日図書館に行った時は、そこに置いてある本にはあまりそそられず、家から持ってきた本を読んだりnoteを読んだりしていた。
それだけでも朝から夕方まで、しっかり時間を潰せた。
上々の出来だ。

そして夜は、人生初のネットカフェ泊。
今まで経験したことがなかったので若干不安だったが、泊まってみたら思っていたよりずっと快適だった。

ネットカフェはすごい。
・明るくて空調が効いてる
・シャワーが使える
・あったかい飲み物が飲み放題
・軽食が買えるし、飲食物が持ち込める
・個室でYoutube見放題
・思ったより静か(他人のいびきがうるさいぐらい) 
こんな環境がカプセルホテルより安い価格で使えるのはバグだと思う。
今日もネカフェ滞在にしようと思っている。

「嫌なこと」をしなくても役割が果たせることが分かったら、ストレスが消えた

今回「家の中にいるのをやめる」を実行してみて、それまで帰省に感じていた不快な気持ちがかなり薄まったのを感じた。
私にとって「家にいる母親と接触すること」はそれほどストレスのかかる、嫌なことだったのだ。
逆を言えば、そこさえ解決できればかなり長い期間、新潟に滞在することも可能ではないか?と睨んでいる。

さらにサステナブルな方法で同じ結果を出せないか?

私はそんなことを考えている。
ネカフェは安いとはいえ、滞在にお金がかかる。
ここにかかる費用を削減できれば、さらにサステナブルに「嫌なことをやらずに新潟に滞在する」ができるようになると思っている。

私がいま考えているのが「車中泊」だ。
家にはかつて母親が使っていた自家用車がある。
「てか、その中で寝れば宿泊費ゼロじゃね?」と思ったのだ。

家の敷地内で寝るので、個人的にはネットカフェより心理的安全性が高い。
また、母親との一瞬の接触の可能性さえ許容すれば、トイレもシャワーも電源も使い放題である。
(母親との接触は永続的に存在するのがダメで、ほんの一瞬なら許容できる)
車中泊だと眠れないのでは?という心配の声もあるだろうが、私は枕が変わると高級ホテルだろうとネカフェだろうと3時間しか睡眠できなくなるので、車中泊でも大して違いはないのだ。

それを北海道出身の知人に話したところ「冬の車中泊はちゃんとした装備がないと死ぬで」と言われ、必要な装備を教えてもらえた。
明日、まだ伯父が生きていて滞在が延びるようなら、スポーツ用品店に買いに行こうと思う。

12月5日追記。

寝袋が売っていなかったので、
・ダウンジャケット
・厚手の毛布
・厚手の綿布団
の装備で車中泊を決行。
結論としては、足元以外は暖かく一晩すごせた。
足元もカイロを貼れば解決しそうなので、今日はそれを試してみようと思う。

まとめ。嫌なことをやめるには。

今回、嫌なことを一つやめるという経験を通して、嫌なことのやめ方への解像度が上がった気がする。

嫌なことをやめるには、
・「嫌なこと」「嫌でないこと」の精査(ここに一番時間をかける)
・自分が果たすべき役割の明確化
・嫌なことを「やらない」と決め、嫌でないことだけで自分の役割を果たす方法を考える
・仮説を検証して、今後も使える部分と見直すべき部分を分析する
・よりサステナブルに同じ結果を出せる仮説が出たら、それを検証してさらに分析する
…の繰り返しが堅実かなぁと思っている。

これはあくまで私の一例だが、何かの参考になれば幸いである。

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