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ギアファンde日常。『エミルと雨の日の朝』

エミルと雨の日の朝

ぱちり、と目を開ける。
窓ガラスから見える空を見ると、うっすらと灰色がかった色をしている。

耳を澄ますと、さあさあと雨がギルドの壁を打つ音がする。
今日の天気は雨らしい。
そういえば、布団の外に出ている顔は、ちょっぴり肌寒い。

「うーん…」
ごろん、と寝返りを打つ。
今日は、やけに意識がハッキリしない。
今日の気分は、厚い雲に覆われた空のように灰色だ。

こういう雨の日の朝は、どうしてもスッキリと起床できない。
あと5分、と頭の中で声がする。
そうだよね、まだ早いよね、あと5分…

「エミル、起床の時間だ」
ばさあっ、と布団が宙を舞う。
「ぎゃあっ!?」
身体を包んでいた暖かい布団が消え失せ、寒さの中に放り込まれる。
「さっ、さむ…!」

「エミル」
いつものように、スンッとした顔のフォーが布団を手に持っている。
「ふ、フォー…お、おはよ…」
「エミル。この時間には着替えて支度を整えなければ遅刻をしてしまう」
「で、でもあともうちょっと…」
「『父さんに怒られるのは嫌』だからと、エミルが俺に言った」
「…」
ごもっとも。何も言えなくなってしまう。

「そうねぇ…」
くっと伸びをする。気だるい身体に少しだけ元気が戻る。

フォーが来てから、雨の日に父さんに怒られることが減った。
本当は自分で起きた方がいいのは分かってる。
でも…ちょっとぐらい、いいよね?

なんてことを考えながら、あたしは着替えの服に手を伸ばす。


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