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ギアファンde日常。「アートゥロと帰り道」

アートゥロと帰り道

夜の闇の中に眩しく浮かび上がる、街の灯。
その光に包まれながら、俺たちは帰路についていた。

「ちくしょぉ〜、フォーのやつ、今日もエミルにべったりでよぉ〜!」
夜でも分かるぐらいに真っ赤な顔をしたバックスが、エドガーとナワーブに両肩を預けながら歩いている。

「団長ォ、その話、飲み屋でもさんざん聞きましたよォ」
バックスと同じくらいに赤ら顔をしたエドガーは、しかし意外にしっかりした足取りでバックスを支えている。
…あ、いや、そうでもないな。ちょっとよろけた。
向かい側のナワーブの眉間に皺が寄る。腰、大丈夫か?

「全く、あんなにへべれけになるまで飲んで、明日どうするんですかねぇ」
先程まで、バックスとエドガーが飲ませようとするところから必死で逃げ回っていたエインズが、呆れた声で言う。
「まあ、あいつらのことだ。明日にゃ酒が抜けてるだろ」
そう言ってやると、エインズはやれやれと言った様子で「脳筋だなぁ〜」と毒づく。

「俺ぁギアと結婚なんて認めねえぞ〜!エミル〜!」
呂律が回っているかも怪しいバックスの雄叫びが、闇夜に響く。

街の灯りに照らし出されるバックスの赤ら顔には、いくらか皺が刻まれている。
年輪のようなそれを、ぼんやりと眺めながら歩く。
団長の顔。父親の顔。
そして何よりも、歳月を重ねてきた一人の男の顔。

お互い、こんなになるまで一緒にやってこれたんだな。

「副団長、なに笑ってるんすか」
エインズの不思議そうな声に、自分の口元に笑みが浮かんでいたことに気づく。
「いや、別に」

夜の闇を照らす街灯りの中を、俺たちは歩いていく。


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