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ギアファンde日常。「ロビンとツツジ」

ロビンとツツジ

「あれ。こんな花、ここにあったっけ」
それはよく晴れた日の朝、家の庭を掃除していた時の出来事。
家の庭に、見慣れない鉢植えがあることに気がついたのだ。
箒を持った手を止め、しげしげと花を眺める。

「ああ、それはお隣さんから頂いたツツジじゃよ」
一緒に掃除をしていたじいちゃんが答える。
「ツツジ?」
「ばあさんがこの花を気に入ってな。苗木を1本分けてもらったんじゃ。見事に咲いたのう」
そう言ってニコニコしているじいちゃん。

慎ましやかな桃色の、5枚の長い花びら。
それが星型のように並んで、花の形を保っている。
何とも可憐な花だ。

そんなツツジを見つめていると、何かを思い出すような気がした。
なんだったかなあ。

突如、頭の中で、遠い昔の会話がフラッシュバックする。

『フラジィル。その花、どうしたんだい?』
『あら、お気づきになられました?この花飾り』
『すごいや。本物そっくりだ』
『ふふん。これは本物ですのよ!花の鮮度を保ったまま固着する魔法が掛けられていますの。素敵でしょう?』
『へえ、そんな魔法があったんだ。面白いなあ』
『まあ!花への感想はありませんの?』

そうだ。あの花。
あの子がいつの日からか、髪に飾っていた花。
あの花にそっくりなんだ。

胸が、きゅっと締め付けられる。
もう戻らない、あの日。

『今度、ロビン先輩にも差し上げますわね。もちろん、グウィンドリン教授の方が先ですけれど!』
『ええ、ひどいなあ』

そんな、他愛ない会話で笑った、あの日々。

あの花の名前、聞いておけばよかったな。


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