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2023.8.1 新日本プロレス G1 CLIMAX 33 DAY11 高松大会観戦記

すっかり定番化したキン肉マンっぽさのある優勝トロフィー

お久しぶりです。もるがなです。はじめましての方ははじめまして。最初に書いておきますが今回はめちゃくちゃ長いですよ。もはや小説です。なんでかって……

行ってきました!高松大会!


コロナ禍では自粛に加えて色々とタイミングも合わず見送っていたのですが、やはり生で見ないと伝わらないものもあるよなと思い、久しぶりの地元観戦に踏み切りました。いつもと少しばかりテイストが違うと思いますが、お付き合いいただければ幸いです。写真も載せますが手持ちのiPhoneなのでクオリティは察してください。拙い写真ではありますが、これはこれで昔のケータイ写メ全盛期の古のプロレスブログっぽさは出せるんじゃないかと(笑)懐かしくないですか?こういうの?いや、それにしても美麗な写真を撮れる人、本当に凄いですよね。では前置きもこのぐらいにして、さっそく書いていきましょう。


◼️第1試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Aブロック公式戦
ヒクレオ vs 清宮 海斗

今回の興行の中で最も勝敗が気になっていた試合であり、この試合のために観戦を決めたと言っても過言ではありません。清宮への会場の反応、もとい新日ファンの反応は本当に様々で、清宮参戦以後の「変化」を知るためにはやはり現地に足を運ぶしかないだろうなと。

さて、問題の清宮への歓声なのですが、思った以上に目立っていたなというのが正直な感想です。配信で見ていたので好意的な反応があるのは知ってはいたのですが、いざ目の当たりにするとやはり感慨深いというか……。当然ここは新日本で清宮は他団体の外敵なわけですから、ブーイングとサムダウンで応じるグループもリングサイドにいたにはいたのですけれど、それに負けじと野太いつんざくような「清宮!」という歓声もチラホラ聞こえており、それが残響音となって「刺さって」いたのも事実なんですよね。確実に自身のファン、もしくは一連の戦いを通じてファンに変えた人間を会場に連れてきているのは間違いないですね。あと会場で聴く清宮のテーマ曲のアガりっぷりは中々のものがありますよ。あれだけで応援したくなります。

対するヒクレオの入場。これもやはり現地観戦でないと伝わり切らない部分の一つであると言えるでしょう。圧倒的なサイズ感の差。個人的にはプロレスにおいてそこまで体格差を重要視はしないのですが、それでも実際に目の当たりにしたときのインパクトはやはり凄まじいものがあり、文字通りの大人と子供の差がありましたね。

近場の客が思わず「デケぇ……」と声を漏らすほどの体格差

開幕早々、ショルダータックルで体格差をより強調させる清宮。この辺りの「わかりやすさ」もさることながら、上段のそれを撒き餌にいきなり下段からの低空ドロップキック。実にロジカルで戦術としても理に適っており、足殺しの動線を作りつつ「どう戦うか?」を明確にしたのも上手いですよね。

そんな清宮に対して落差のある打撃で主導権を取り戻すヒクレオ。清宮の打撃も強いのですが、ヒクレオもかなり強かった印象です。そしてその後に続けた鉄柵へのホイップ。いやあ……シンプルながら度肝を抜かれたというか、交通事故のような衝撃音が僕のいた二階席まで響いてきて、どよめきからの悲鳴。そして一瞬の静寂。我に帰ったようき歓声を上げる周囲の観客。この一連のリアクションがたまらなく「リアル」でしたよ。

その後のコーナーへのスネークアイズはヒクレオの巨体に貼りつくようにして難を逃れた清宮が、背後から膝裏への低空ドロップキック。そこからロープを使ってのダーティーな足折りや武藤直伝のレッグブリーカー。さらに変則的な雪崩式でレッグブリーカーを見舞うなどして攻める清宮。こうして俯瞰で見ると清宮のテンポ感は乗りやすく、ちゃんとリズムをつけているのが伝わります。そして足狙いでヒクレオを捩じ伏せる姿に土台にある「強さ」をちゃんと感じましたね。「清宮強いなあ……」という呟きがどこかから聞こえてきまして、それには同意するしかありません。

ヒクレオも先ほど不発に終わったスネークアイズを見せてコーナーに清宮の頭を叩きつけると、ド迫力のラリアット。そして2メートル越えのブレーンバスターで一気に取り返します。特にこのブレーンバスターが圧巻の一語であり、後ろに身体を傾けて流しながら投げ捨てるタイプではなく、しっかり直立不動で頂点まで抱え上げてそこから自由落下で叩きつけているんですよね。当然の如く衝撃音は凄まじいものがあり、会場の空気がどよめきとともに震えたのを肌身で感じました。

清宮の攻撃をゲームに喩えるなら30〜40ぐらいのダメージを多段ヒットで連発する感じであり、ヒクレオは120〜150ダメージの痛恨の一撃を返すといった印象でしたかね。生で見ると配信とは全然違い、思った以上にヒクレオが使う技の「重さ」を感じました。それは単なる衝撃音の大きさだけではなく、質量の違いとでも言いますか、明らかにパワーがケタ外れなんですよね。

起死回生のドラゴンスクリュー

巻き起こるチャントの中、波に乗ろうとするヒクレオの動きを昆虫標本のように止めた清宮のドラゴンスクリュー。そして90年代のプロレス近代史の名シーンの一つである武藤vs高田のインスパイア。ドラゴンスクリュー+足4の字固めのコンボで一気にヒクレオの足を折りにかかります。年配の観客が近くにいたのですが、足4の字固めで「コレだよ、コレ」とにんまりと笑っていたのが凄く印象的であり、プロレスにハマった年代が違えど、全員に通じる「共通言語」なんだなと実感してしまいました。

武藤直伝の足4の字固め

これは何とかロープに逃れたヒクレオですが、清宮はエルボー連発で猛攻を仕掛けます。武藤殺法の後に三沢殺法を入れる清宮のバランス感覚は見事なもので、武藤のコピーなど揶揄に過ぎず、清宮は武藤と三沢のハイブリッドなのだなと実感しますね。このエルボーも非常に当たりが強く、ゴッ、ゴッという鈍い音がしっかり響いておりました。

ロープに飛び、反撃を狙うヒクレオでしたが、その間を外すように放ったローリングエルボーがドンピシャで、一回転という「隙」が間を外すこととして機能していたことに感動してしまいました。そしてこの試合で一番の歓声を引き出した清宮のタイガースープレックスホールド!ヒクレオの巨体をしっかりと投げ切って固めたのは素晴らしいですね。周囲の観客も一斉にカウントを始めましたし、キックアウトを許しても清宮への大歓声は止まず試合のボルテージは一気に急上昇しました。

続いて狙った変形タイガードライバーは堪えられて不発。これを巨漢相手に決められるか否かは今後のテーマになってきそうですよね。そしてヒクレオが巨体を浴びせかけるアバランシュホールドで返しますが、この衝撃の凄まじさたるや。巨漢の嗜みとして配信だとついつい流しちゃう一発なのですが、生観戦だとエグいほどのダメージでゴリゴリに削られたのが伝わってくる一発であり、その躍動感や清宮の小兵ぶりも手伝ってか殺人技のようになっており、前述の足4の字固めと合わせて、これらが必殺技だった時代のどこか懐かしい空気を感じました。本来なら必殺の一撃であることが両者によって証明されたといっても過言ではありません。

勝機とみるやヒクレオは一撃必殺のゴッドセンドを狙いますが、清宮は低空ドロップキックでのカウンター狙い。これもかわすと寝ている清宮をチョークで捉え、再びゴッドセンドを狙いますが、ここは清宮が一発逆転のフランケンシュタイナー。昔の武藤vs中邑のIWGP戦やNOAHでの潮崎豪戦を彷彿とさせる頭をガッチリとホールドした完コピぶりで、ヒクレオの巨体をしっかりと押さえ込みました。正直「勝った!」と思いましたよ。

しかしながら惜しくもこれはカウント2。ジャンピングニーから再びフランケンを狙いますが、これを抱えて止めたヒクレオの脅威のパワーたるや。観客のどよめきと悲鳴が凄かったですよ。

フランケンを支えて止めたヒクレオの怪力

「ボムくるよ!まずい!」そんな声が背後から聞こえてきてヒヤヒヤしましたが、これは何とか背後に着地した清宮。安堵のため息も束の間、不用意に走り込んだ清宮にズバリとカウンターで決まったパワースラム。清宮の身体に巨体を密着させ、そのスピードを殺さずに逆に反動として利用し、真円を描くように叩きつけたこの一撃は凄まじく、これが実質決まり手でしたね。

清宮の加速も加えて一気に叩きつけた超高速パワースラム

最後は無慈悲のゴッドセンドで清宮敗北。これ、撮りたかったんですけど清宮の勝利を疑ってなかったせいか、手がガタガタと震えてiPhoneを落としそうになったので諦めました。心の弱いオタクです。いや、清宮はヒクレオに負ける可能性があるとnoteに書いたのは自分なのでぐうの音も出ないのですけど……まさかこうなるとは……自分の言霊を呪うしかないですね……教育教育教育教育教育死刑死刑死刑教育教育教育教育教育。ドビーは悪い子!ドビーは悪い子!

……すみません。取り乱しました。いや、それにしても観戦前はヒクレオは2メートル級チョークスラム、ゴッドセンドの一芸が光る選手だという認識で、それ以外の技の格はそこまででもないかなと思っていたのですが、生観戦して認識を改めました。ありゃバケモノですよ。この試合でもアバランシュホールドやパワースラムなどの技のグレードが一段上というか、巨体が繰り出す技のインパクトが強く、想定以上に技の威力の凄まじさを感じたんですよね。全てが必殺技ですよ。それにジェイ・ホワイト、KENTAを倒した実績に続き、清宮に土をつけるというジャイアントによるジャイアントキリングぶりに恐れ入ったというか。清宮のタフネスさは知っていても、それを打ち砕くだけのリアリティは確かに感じました。

ヒクレオが勝ったことに納得のいかない層もいると思いますが、キャリアやタイトル歴で「格じゃない」と思っているのであればそれはただの権威主義ですし、そうでないならヒクレオを舐めすぎです。このサイズ感の違いは思った以上に大きく、技術差を埋めるだけの絶望的な体格差があったということですね。

あと敗因を挙げるならやはり試合時間にあり、20分の制約は大きかったですね。60分や30分の意識で戦い20分以内に終わるのと、20分以内で決着を着けようとするのは意識レベルでの「狂い」が生じますし、どうしても短期決戦を仕掛けなければいけない関係上、スタミナ配分も変わってきます。そもそも清宮の真骨頂は20分過ぎだと思いますし、逆にヒクレオがフルパワーで戦えるのはにSTRONG王座戦を見ても分かる通り20分以内だと思うので、それをいなすだけの時間が足りなかったのかな?とも。体格に差があるなら当然出力も違うわけで、燃費の良さでは勝てなかった感じですかね。

とはいえ、清宮も悪かったわけではなく、むしろヒクレオ戦は今回の生観戦の中でも屈指のベストバウトでしたし、このG1を通じての試合のクオリティの高さは微塵も疑うところはないでしょう。そのパワーが映えるだけ清宮の受けが上手かったのだとも思いますよ。でも悔しい!ちょー悔しい!生で見るなら勝って欲しかったと強く強く思いますし、清宮の勝利を生観するのがこれからの目標の一つになりました。

◼️第2試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Bブロック公式戦
YOSHI-HASHI vs グレート-O-カーン

独特の雰囲気を持つオーカーンの入場

オーカーンの試合、生で見るとどこか不思議な空気感がありましたね。所作に笑いは起きつつもコミカルに寄りすぎることはなく、キワモノと断じるには妙な親近感がある。すっかり見慣れて愛着すら生まれた本来は怖いはずのB級ホラーを見るのに近い感覚というか、これはちょっと意外でした。そして言語化しにくいものがありますね。

序盤はグラウンド勝負。思わず身を乗り出しそうになって慌てて居住まいを正しましたよ。これは嬉しい誤算でしたね。ただ、周囲の空気は至って平常運行というか、そんなに特筆すべきこととして捉えてないように感じました。不遇と言われるオーカーンが、レスリングという自信のある「地力」の部分で、あの桜庭すら唸らせたグラウンドテクニックを持つYOSHI-HASHIに挑むというシチュがいまいち伝わってないというか、過去にあったこの手のグラウンド勝負の時に感じたピリッとした張り詰める空気は今はほとんど感じませんでしたね。

最初こそオーカーンの片足タックルで先手を取られ、アームロック、三角絞めと極められかけて難を逃れたYOSHI-HASHIでしたが「そちらがそう来るなら」という感じで オーカーンの横回転のジャーマンホールドを脇固めでいなすとチキンウイングアームロック、腕ひしぎ十字固めで取り返してロープブレイクへと追い込みます。いやあ……これには惚れ惚れしましたよ。 

三度対峙したオーカーンとYOSHI-HASHI。今度は絡め手でフェイントの猫騙しを見せるとそこから耳を掴んでの耳そぎチョップ。両足タックルでテイクダウンを取ると、一気に肩固めを仕掛けます。

オーカーンの得意とする肩固め

より深く、地面にピンするように足をくの字に上げてから一気に身体を沈めることで極めてきましたね。それでいて見た目が地味な技に蛇のようにジワジワと動きをつけるという。このあたりの技術は本当にオーカーンは上手いものです。前の清宮vsヒクレオ戦ほどではないにせよ、オーカーンも体格に恵まれており、肩固めでフィジカルの差を活かすというチョイスは正解でもあるのです。そしてそれを裏付ける一本背負いから再びの肩固め。YOSHI-HASHIの顔が紅潮していましたね。隣の観客が連れに聞かれて肩固めの説明をしていまして、すっかりメジャーになった技だなと思いました。

スリーパーへと形を変えて追い込みますがこれは何とかYOSHI-HASHIがロープエスケープ。コーナーに叩きつけると怪鳥音から背後でのモンゴリアンチョップ。そして玉座。この技は相変わらず謎ですが、この前の手招きしての煽りはかなり盛り上がりに寄与しており、ファンが「見たい」技の一つなんだなと実感しましたね。肩固めからのスリーパー。そして臀部で押し潰すことによる呼吸器系の圧迫という意味ではちゃんと一貫性はあると思います。

バックドロップで叩きつけて有利状態を崩さないオーカーンに対しYOSHI-HASHIも逆水平で反撃するもののモンゴリアン一発でダウン。何とか低空ドロップキックでペースチェンジを図ると、コーナーにいるオーカーンに走り込んでの逆水平チョップ。客席はその音にどよめいていましたし、練度の成せる技ですよね。YOSHI-HASHIの逆水平が立派に「沸かせる」技になっていることに目頭が熱くなってしまいました。コーナースルーフェイントからの逆水平。反転トーキック。ヘッドハンターのコンボも美しいです。

走り込んで伸びやかな逆水平を打つとここ最近また使い出した昔からやってるトップロープへ固定してのドロップキック。昔は妙な間の悪さが目立った技ではありましたが、逆水平でリズムをつけて間を詰められるようになった今のYOSHI-HASHIならアクセントとして十分機能します。そしてトップロープへ登りましたが、ここで後ろから「スワントーンはあかん!」という声が聴こえてきて笑ってしまいました。あまり評判がよくないんですかね?

しかしそんな観客の思いも杞憂で終わり、ダイビングヘッドハンターを綺麗に決めて一気にYOSHI-HASHIの時間がやってきます。しかしながら粘るオーカーンがパワーボムをショルダースルーで切り返すとアイアンクロー・アルゼンチンパックブリーカー。そこから軽く揺らしてのヘラクレスカッターと大技で取り返しにきます。そして大空スバル式羊殺しからFGO。そしてTTDと一気呵成の畳み掛け。いやあ、それにしてもこのTTDといいヘラクレスカッターといい、令和闘魂三銃士が三銃士フォロワーとするなら、オーカーンは第三世代フォロワーとなるのですかね?オーカーンに感じる妙な空気感や試合の奇妙さって、こうした技の配分やチョイスにあるのかもしれません。どの技も神通力があり記憶にもしっかり残るものの、全体的にややクドい印象もあるというか、追加トッピングがやけに目立つラーメンのような感じですね。

これで終わりだと言わんばかりにブレーンクローからエリミネーターでオーカーンは幕引きを狙いますが、ここはDDTでYOSHI-HASHIが切り返します。そして雄叫びからのカチ上げラリアット。オーカーンもエルボーで返すものの、YOSHI-HASHIもカウンターで低空ドラゴンスープレックスを放ち、ラリアットの相打ちで打ち勝ちました。

そしてシットダウン式のパワーボム。所謂ダイナミックボムですね。以前のジャックナイフパワーボムから調整された技であり、YOSHI-HASHIに似合ってるとは言い難いものの、貴重なYOSHI-HASHIの大技レパートリーの一つです。そして熊殺しを狙うもこれはオーカーンがパンケーキホールドで回避。雄叫びと共にコーナーに突進したオーカーンを逆に全体重を乗せてのスクールボーイで切り返すYOSHI-HASHIと、互いに譲らない攻防が繰り広げられます。

身体ごと預けての全力スクールボーイ

そして逆水平、ラリアットに続くYOSHI-HASHI三種の神器である得意技の一つ、トラースキックで動きを止めると、大技である熊殺しでオーカーンを叩きつけました。大一番の技の一つというのもあってか、観客も大合唱でのカウント。これはギリギリで返されましたが、この試合一番のどよめきでしたね。

ここ一番での大技、熊殺し。

そしてフィニッシュのカルマを狙いましたが、これはオーカーンがアイアンクロー・スリーパーで捉えます。オーカーンの技はネタ臭が強いせいか個人的にはあまり好みではないのですが、逆にこのアイアンクローシリーズは大好きで、プロレスオタクらしいプロレス技という感じがあります。そこからスイッチしてのエリミネーターはトラースキックで迎撃。走り込んで頂狩を狙いますが、これをアイアンクローで捉えての高速エリミネーター。ほぼ投げっぱなしというか叩きつけのような感じで決まり、万事休す。オーカーンがYOSHI-HASHIを下しました。YOSHI-HASHIのこのG1での試合のクオリティは高く、安心して見れますね。

◼️第3試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Aブロック公式戦
成田 蓮 vs チェーズ・オーエンズ

G1の勝ち星や試合のクオリティ含めて令和闘魂三銃士の中で一歩出遅れてるのが見て分かるせいか、場内は成田への応援ムード一色で、この温かさに救われた反面、悪く言うなら小学校の運動会のような、ストロングスタイルに感じる畏怖とは真逆の弛緩した空気が漂っており、こうした同情や憐憫の視線は成田からするとかなりキツいものがありますね。

名乗りを挙げる成田

試合前に少しプロレスファンの方とお喋りしたのですが、そのときに出た話題の中で「成田をどう見ていいかわからない」というのがあり、これは目から鱗でしたね。格闘技とプロレスの境目が曖昧だった時代に生きた人間には通じるストロングスタイルという概念が、今となってはピンとこない人が増えたわけで、今の新日でそれを掲げ、貫き通すことがどれだけ困難で無謀な道なのかというのがいまいち伝わっていない印象があります。言うなれば棚橋の解いた呪いや価値観を再び蘇らせようとしているに等しく、また新規のファンだけでなく、そうした概念から逃れられないオールドファン層に成田が届いているかと言われたら閉口せざるを得ないわけです。成田自身も伝えるべき信念やイデオロギーといった言葉が絶対的に足りていないというのもあり、それもあって現状は「頑張る若手」の枠から出ていないのかなと。

本来、その価値観がどういうものであるかをわかりやすく周知させるためには本来なら格闘色の強い相手やそうした空気になる試合をやるべきではあるのですが、そうしたプッシュは受けておらず、前回のネバ6でのEVIL戦に続き、今回のオーエンズ戦でも敢えてそうした価値観とは真逆の選手と当てることを優先してるフシがあり、ストロングスタイルの怖さよりもヒロイック性のほうを重視してる印象は見受けられます。確かに「異なる価値観の相手、場所であっても我を貫き通す力」と仮定するならそれもまたストロングスタイルの一面ではあると思いますし、その概念が拡散と浸透を繰り返した今となっては広義の括りでは入るとはと思うのですが、その言葉を掲げる以上、格闘技としてのプロレスの地力の強さといった狭義の意味のほうが求められるわけで、色々と厳しいものがありますね。

試合はじっくりとした立ち上がりながらヤングボーイ扱いするオーエンズに成田が怒りの特攻。ストロングスタイルに必要な絶対的な要素の一つである「怒り」は申し分ないのですが、まだ幼子の駄々のような感じであり、そこに「怖さ」は感じません。しかしながらオーエンズに見せたエルボーはかなりゴツゴツと入っており二階席まで音が届いていましたね。打撃のヒッティングの弱さが引っかかる部分ではありましたが、ひとまず上は大丈夫かなと。それをすかさずクロスチョップで遮断したあたりオーエンズは老獪であり、またこうした老獪さを見せると成田の青さが際立ってしまうという。続くフライングニールキックで何とかペースは守ったもののエルボーに反して蹴りはまだ未発達で、これは今後の課題ですかね。

ただ、打撃に反してハーフハッチを始めとするスープレックスのブリッジの美しさはやはり特筆すべきものがあり、流石にこれには場内も息を呑んだのが伝わってきました。

成田の武器である美麗なブリッジによるハーフハッチ

しかしオーエンズも譲らず、ダブルリストアームサルトからの成田スペシャル4号を腕パッチンで防ぐと、虎の子のパッケージパイルドライバーを仕掛けます。この何度も持ち上げる仕草での成田危うしのシーンは非常に盛り上がったのですが、実は個人的にはあまり好きではなく、ここまで足が浮き、持ち上げる体勢になっても決まらないというのは技の説得力の観点からすると少々リアリティに欠ける印象があり、その前段階で堪えて欲しいんですよね。この試合一番の盛り上がり所ではあったのでアリとしてもいいのですが。

オーエンズのパッケージドライバー

これは何とかクリアした成田でしたが、オーエンズは攻め手を緩めず。Cトリガーにハンマーロック式ラリアットであるジュエルハイストを狙います。

オーエンズのジュエルハイスト

しかしこれを切り返しての絡みつくように極めた成田のコブラツイスト!成田のもう一つの武器ですね。これが決まれば終わり!ほどの神通力は通ってなくとも、先ほどの清宮の足4の字と同じ共通言語の技。「コブラ!」という観客の嬉しそうな声、しっかりと届いておりましたよ。同程度の体格のオーエンズというのもあってわりとガッチリ極まっていたような気はします。

成田のコブラツイスト

ジリジリとロープへ逃れるオーエンズ。コブラツイストの攻防の見所の一つですが、寸前でスリーパーホールドへと切り返す成田。柴田の姿がフラッシュバックすると同時に、現在の師である鈴木みのるの薫陶も感じる重みのある技です。ただ、フィニッシャーであるPKの一部分である柴田のスリーパーと、フィニッシュとしても使ってるみのるのスリーパーと比較すると、成田のスリーパーは現状だと繋ぎ技の感じが強いので、今は無理でも今後はたまにはこれでタップを取るシーンがあってもいいんじゃないかと思います。そうするとより怖さが増すかもしれないですしね。

相手をコントロールする成田のスリーパーホールド

そしてオーエンズを中央へとコントロールすると、そのまま再びコブラツイスト!首ではなく頬骨をガッチリ決めて捻じ切るタイプのコブラであり、オーエンズから一瞬でタップを奪いましたね。かのアントニオ猪木もインタビューで「アバラ折りと言われてるが本来は首が極まる」と言っており、コブラツイストの復権に一役買ってる印象があります。場内は驚きの声に包まれており、一応はストロングスタイルの面目躍如といった感じですかね。

頬骨を極めて一瞬でタップを奪った成田のコブラツイスト

◼️第4試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Bブロック公式戦
タイチ vs エル・ファンタズモ

ELPの会場人気、ヤバイですね。E!L!P!の入場テーマが乗りやすいというのもあるのですが、ファンタズモの客煽りが上手く、自然と乗せられた感じがあります。あと子供人気が凄く、小さい子や小中高生の声援はズモ一色でした。

ファンタズモの物理的な意味での空間支配力は大きく、見る側の視線もフラフラと彷徨うせいか、二階席だとよりその立体感が伝わってきます。場外ダイブにリング内へのケブラーダと、やはりこうした飛び技は現地観戦だと最も歓声が起こりやすく、また映えるんですよねえ。

ファンタズモの躍動感のあるライオンサルト

タイチの蹴りも鳴らしてる音がハードなせいか一撃ごとに観客の悲鳴に似た声援を誘っていましたし、これぐらいのハコだと盛り上がりやすく、また初観戦で最もキャッチーな選手の一人なのだろうなと思いました。印象に残りやすいというか。こんな感じで現地観戦込みで印象の変わるレスラーがいるのが生観戦の醍醐味の一つですね。

最後は外道クラッチの応酬からファンタズモがELP・タイチ・外道クラッチで勝利。まさにファンタズモ・ワールドな試合でしたね。

◼️第5試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Aブロック公式戦
SANADA vs ゲイブ・キッド

奇襲が目立つせいか意識してゲイブの入場テーマを聞いてこなかったのですが、今回は前入場かつ生観というのもあってあらためてじっくり聴いてみましたが、実にハードかつスタイリッシュでいいですね。会場の空気もどこかピリピリと落ち着かない感じになっており、赤いライトの中鉄柵やら椅子やらを放り投げて荒れ狂うゲイブに悲鳴の声が上がっていました。やってることこそヒールのそれではあるのですが、往年のヒールレスラーを彷彿とさせるこの「怖さ」はまさしく昭和の香りであり、カジュアルに消費されるような軽薄さがないことに驚いてしまったのですよ。あと生で見ると意外とゲイブの身体に厚みがあったのも印象的でした。

入場時に鉄柵を放り投げて威嚇するゲイブ

王者のSANADAは後入場でしたが、リングに立つゲイブとのバチバチの視殺戦はピリッとしましたね。SANADAの爽やかすぎるテーマ曲と場内の空気の落差が凄かったです。

そんなゲイブに一歩も引かずベルトを掲げるSANADA。これは油断と捉えるより、野良犬にビビらない王者の豪胆さと解釈したほうがいいですかね。しかしそんな好機を逃さないのがゲイブであり、背後から奇襲してゴング前に開幕。場外戦で荒らし回ります。

最初にゾッとしたのが椅子攻撃のシーンであり、表ではなく内側の部分で脳天に振り抜くデンジャラスさ。リングに戻ってゴングを要求して試合開幕と同時にSANADAに放ったバックドロップもかなり厳しい角度で落ちており、側の観客が「垂直落下じゃん……」とドン引きしてたのが印象深かったです。ゲイブの狂犬ぶりは最も柴田の血を色濃く感じる、と前のnoteで書きましたが、このバックドロップの角度も柴田を彷彿とさせますよね。今のゲイブは本当に無軌道な青春をひた走っていた2003〜2004年頃の柴田に近いなと思います。

青息吐息のSANADAをトップロープに座らせての単純なプッシュによる真っ逆さまの場外落下。清宮戦でも見せたやつですね。ゲイブの良さって変に回りくどい技を使わず、一貫して使う技が基本技かつ原始的な技ばかりなのが好感が持てるポイントです。これイメージ戦略としてやってなら見事なものですよ。

トップロープからの叩き落とし。これは痛い!

そして落下したSANADAを嘲笑うかのようにIWGP世界ヘビーを肩にかけてのアピール。危険な空気の緩急として見事かつ、蛇足になっていません。笑いが起きたのも束の間、放り投げての大ブーイング。いやはや、ゲイブには魅了されっぱなしですね。

IWGP世界ヘビー級王者ゲイブ爆誕!

場内中に響く逆水平に、椅子に向かってのキャノンボール。悲鳴が場内に交錯します。SANADAコールも起きましたが、チラホラと「SANADAやり返せ!」という焦れる声も。わりと今の王者SANADAは盤石だと思いつつ、まだ査定めいた印象を抱いてる人は多いのかもしれなくて、それが分かったのがこの生観戦の収穫の一つでもありました。なんとかリングに戻ったSANADAでしたが、ゲイブが噛み付く狂犬ぶり。これに少し笑いが起きたのが意外で、噛みつきってやっぱりコミカルに映るのかな?とも。

ゲイブにやられ放題なSANADAでしたが、低空ドロップキックからの正調ドロップキック。そしてプランチャで自分のペースに。この切り替えが以前よりスムーズかつ王者の貫禄があり、変にまごつかずこれを出すだけで反撃のターンと分かるのはいいですよね。そしてゲイブのお株を奪うかのような場外鉄柵攻撃から場外パイルドライバーというテクニカルでありつつもえげつない技でやり返します。このまま攻めるかと思いきやゲイブはわりと冷静で、場外カウントの間隙を縫うように鉄柵へSANADAを放り投げてリングアウト勝ちを狙います。これは一瞬で「ヤバい!」という空気になったのが素晴らしく、ゲイブの荒さがいい具合にミスリードになってるというか、これで負けてもおかしくない空気はあったのですよ。レフェリーの手が降りる寸前でリングに戻り、何とかSANADAは生還を果たしました。

ネックスクリュー、いつもより仕掛けの早いラウンディングボディプレス。この並びはSANADA流の武藤殺法ですね。しかしながらこれは躱され不用意にコーナーに突進したところ蹴りで迎撃され、雪崩式を狙うも噛みつかれる。そしてゲイブがSANADAを絞首刑のフロントネックロックへ。これはえげつないですね。

宙吊りで仕掛けたゲイブのフロントネックロック

続けて放ったゲイブのブレーンバスターも昔秋山準がやってたような垂直落下式のブレーンバスターで、実に危ういイメージが漂っています。そして狙ったフィニッシャーのレッグトラップパイルドライバーはSANADAがショルダースルーで切り返し、シャイニングウィザード一閃。デッドフォールを狙うもレフェリーブラインドをついてのゲイブのローブロー。ヒールらしい技ではありますが、ゲイブだとセコいというより喧嘩の範疇の技というイメージがあるのがいいですね。

レフェリーの隙をついてのローブロー

悶絶するSANADAに仕掛けた旋回式のツームストンパイルドライバー。しっかり飛んで頭を打ちつけており、レッグトラップと合わせたパイルドライバーシリーズとして完全にモノにしてる感じがあります。

ゲイブがしっかり飛んでの旋回式ツームストン

さらにゲイブは挑発的なプロレスLOVEポーズからのムーンサルトプレス。不発にこそ終わりましたが意外性もあり、こうしたスペシャルな技を盛り込むことでちゃんと王座戦モードとして意識していたゲイブが素晴らしいです。なんだかんだでポテンシャルは折り紙つきですね。SANADAもムーンサルトアタック式のスカルエンドで切り返し、ゲイブがパイルドライバーを狙うもこれは呼水で、再びスカルエンドへ。この一連の攻防はオカダ戦の経験がちゃんと生きているのがいいですね。

白熱する打撃戦から「ドウシタ!チャンピオン!」と頭を張るゲイブ。激昂するSANADAもいい表情をしています。走り込んだSANADAにレフェリーを盾にしての不意をついてのナックルパート。たまらずダウンするSANADAと見せかけてのダーティーな金的蹴り。荒々しいゲイブのそれと違ってスマートに決めるあたりがSANADAらしく、また現在のユニットのポジションがニュートラルというのもあるせいか、こうした「チョイ悪感」を見せてもベビーとして違和感がないのがいいですね。

そしてオコーナーノーブリッジこと原型バックロールクラッチホールドで押さえ込むSANADA。この技ってオコーナーブリッジとの併用でありながら何度かフォールを奪ってるせいか説得力があるんですよね。

オコーナーブリッジの別バリエーションであるオコーナーノーブリッジことバックロールクラッチホールド。

決まれば御の字でありつつも、恐らくはこの次のための一撃で、立ち上がりを意識したからこそのチョイスでしょう。かつては「マジシャンズロールアップ」とも呼ばれた「魔術師」パット・オコーナーの技と、続けて放った「クロスウィザード」武藤敬司の「閃光魔術」の時を超えた魔術的コラボレーション。この符合性は偶然なのか、それとも……?二度目のSANADAのシャイニングウィザードも綺麗に決まり、清宮を葬ってからもう一人の後継者としての神通力が増しましたね。生で見ると躍動感があり、何より輝いていました。完全に自分のモノにしてますね。

そして最後は一撃必殺のデッドフォール。写真で見るとしっかりゲイブの足が捩れていて、抉り込むように放った一発は現状の最上位フィニッシュホールドの風格がありましたよ。

一撃必殺!デッドフォール!

終わってみれば荒れ模様ながら王者の試合としては盤石で、この安定感は素晴らしいものがありますね。オカダ政権と棚橋政権のMIXでありつつ自分の色も出せているというか。このG1でSANADAの評価は自分の中で爆上がりしましたよ。SANADAの試合は面白いです!

◼️第6試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Bブロック公式戦
タンガ・ロア vs ウィル・オスプレイ

タンガ・ロアの破顔一笑の朗らかさは二階席にいても伝わってきましたが、どこか怖さを感じたというか、一見コミカルなキャラでありながら中身はシリアルキラーのホラー映画を思い出してしまいました。怖かったですよ!タンガ・ロア!それが杞憂でないのは後に分かるとして、後で入場してきたオスプレイは入場だけで空気感を変わったのを肌で感じましたね。やはりこの男は特別なのだなと。ジ・エアリアルアサシンの異名が耳に残りましたね。

ロアはパワーは目立つもののそれ以外に特筆すべき所はないかなと思っていたのですが、生観だと意外と打撃のリズムがよく、ハカっぽい雄叫びからのボディブローと地獄突きのコンビネーションは小気味よく、観客がノリにノッていたのが印象深かったです。

パワーやクセの強い打撃に苦戦するオスプレイでしたが、フックキックの乱打でどうにかペースを取り返します。この技のカッコ良さは異常で、近くの小さな子供が声を嗄らさんばかりにオスプレイの応援をしており、子供人気はファンタズモと並んで高かったように思います。

打撃の頻度を増やしつつヒートするオスプレイを殴打に等しいラリアットで薙ぎ倒した瞬間はどよめきが。続いてのラリアットでの一回転でも驚きの声が多く、ロアの打撃で沸いていたのはそんなイメージがなかったのでただただ驚くばかりです。

ロアのエイプシットを返し技として得意とするスタナーで切り返すと、美技、オスカッターへ。この跳躍力は素晴らしく、歓声も凄いものがありましたね。生で見ることに価値のある技の一つです。

オスプレイのオスカッターの跳躍力!

そして一気にオスプレイはこのG1で使い出した新技であるリープオブフェイスを狙います。やや仕掛けが早く躱されたものの、ここにきて飛び技のレパートリーを増やしたオスプレイの意地たるや。

オスプレイ のリープオブフェイス

場外に逃れたロアにすかさずプランチャを放ちましたが、ダブルダウン。やや心配そうな空気が会場に漂いましたが、後にその空気感は悲鳴とどよめきに変わります。場外鉄柵オスカッターを狙ったオスプレイを場外席へとフェイスバスターで投げ捨てる荒技を見せたロア。先ほど感じた「怖さ」は嘘じゃなかったんだなと。その豹変ぶりにゾッとしましたし、ゲイブの乱闘以上のこの日一番の悲鳴でしたよ。

どよめく場内。事前に観客をどかしたことによってデンジャラス性が際立った一撃

場外カウントが進む中、何とか戻ろうとしたオスプレイの不意をついたロアのスピアー。この瞬間の騒ぎっぷりは凄まじく、ロアのリングインでのリングアウト勝ちはドッと沸きました。大金星でありながら、この番狂せに遭遇できた興奮は無視できず、試合内容はそこそことしても現地観戦で印象に残った試合の一つとなりました。

◼️第7試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Aブロック公式戦
海野 翔太 vs 辻 陽太

今大会のベストバウトの一つです。辻陽太の人気は生観でようやく現実として実感したというか、9割が辻陽太の応援と言っても過言ではなかったです。高松は元よりロスインゴファンは多いイメージはあったのですが、それにしても現在のキャリアでここまでの歓声を引き出すとは。今回の興行では場内のペンライトが目立っていたのですが、辻を応援する赤のライトがチラホラと見えており、その期待感の大きさが窺えますね。

海野の客席入場は実際に体感するとこれは盛り上がるのもわかりますよ。場内スクリーンに目をやりつつ、どこから入ってくるか場内を見渡すわけで、周りの観客もソワソワしっぱなしでした。裏を通らないと二階から下には降りられないので、仮に現れたら一度引っ込まなくちゃいけないので二階席出現はないだろうなと僕は思っていましたが、それでも期待感が膨らんでいくのは如実に感じていましたね。

海野は棚橋っぽいと言われており、それに対して賛否の声が聞こえますが、やはり自分は棚橋を部分的に踏襲してるなと思います。それはファルサの濃さであったり子供に対しての扱いであったり、その主人公属性の太陽オーラなどと言われますが、一番は入場時点からたびたび見せる「スキップ」なんですよね。コスチュームより雰囲気より、これが一番棚橋っぽいなと思います。

陽太コール一色の中、奇襲を仕掛ける海野。しかしながらそんな海野を嘲笑うように足で挟んでのフェイスクラッシャーやトペスイシーダなど、オカダ内藤以降の主流であるジャパニーズルチャの要素が最も色濃く、そして目立つのが辻陽太なんですよね。これは沸きやすい。

攻め一辺倒で見せていく辻陽太に対して、海野の受けは満点ですね。やや叫び過ぎな気もしますが、あれ場内で見てるとわりと歓声が起こっていて、こなれていくとあれもヒロイックに映るんじゃないかと思いますかね。ただ、辻とのマッチアップだとオリジナリティ&ド迫力の辻の技と比較すると、やはり難点である技の神通力の部分で劣ってる印象がどうしてもあり、歓声をバロメーターとするなら一段低く負けてるように思いました。

たとえばチェンジオブペースで使用している海野のフィッシャーマンズスープレックスはブリッジも綺麗で周りの観客の唸っていたほどに素晴らしい一撃なのですが、元の技のイメージもあってか繋ぎ技感が役割以上に強く感じ、試合構成で後に配置されている投げっぱなしのエクスプロイダーが技の役割として被ってる上にこの技のせいで不必要に技の格が落ちてるように感じます。これ、逆にしてもいいんじゃないですかね。

棚橋が使っていたエプロンを走ってのトペコンヒーロ。若手時代から使ってる高いミサイルキック。そして最近命名された垂直落下式リバースDDTであるトライデント。どれも精度は申し分ないのですが、いかんせん軽い!こればかりは経験と練度を積むしかなく、会場の辻贔屓を差し引いてもこの「技の神通力の足りなさ」は生で見ると肌感覚でわかってしまいますね。技が悪いわけでなく、むしろこのキャリアでは精度は高いほうであり、愛着があるのも伝わってきます。だからこそ惜しいというか。当然、場数さえ積めばこれから先に余裕で改善されるのはわかってはいるのですけれど、もどかしいですね。

ただ、海野の技で良かった点もあり、場外弾を狙った辻を迎撃し、それをショルダーブロックで返そうとした辻の背中に突き刺したフットスタンプ。あれは非常によかったですね。そこからのレインズ が使っていたドライブバイことエプロン着地式のドロップキック。ロープを飛び越えてのDDTで一気に攻め立てます。この辺の組み立てやリズム感は辻より上かもしれませんね。

辻も海野のデスライダーをショルダースルーで返すと、パックブリーカー、フェイスバスター、ストンピング、カーブストンプと一気に盛り返します。このパワーキャラで空中技が得意と見せかけてのストンプコンビネーション。この意外性がアクセントとして効いてますよね。そしてジーンブラスターで幕引きを狙いますが、ここは海野が足を捉えてのベストタイミングでのSTF。これ配信で見直すと歓声はそこまででもなかったですが、僕の周りの席では沸き上がってましたし、足4の字、コブラツイストと並んで知名度のある技の強みを感じました。これこそが神通力の正体ですよ。

突進する辻の足をキャッチし……
STFで一気に反り上げるSTF!いずれはこの技でタップを奪って欲しい……!


「どうした口だけか!この野郎!」と罵る海野。令和闘魂三銃士対決としての気迫は凄まじいものがあります。そこから一気に爆発した辻。壮絶なエルボー合戦!エルボーのラリーは現代プロレスの象徴かつ嫌う人も多いですが、これは互いがひたすらがむしゃらにやり合っていたのがよかったです。今の時期だからこそ許される。海野が打ち勝ち、サポーターを叩きつける!このシーンは本当に良かったですよ。意図された技よりも叫びよりも、こうした生の感情の乗ったシーンのほうがいつまでも心に残るものです。そして海野が見せたニーアッパーにバイシクルニーとトラースキックで返す辻。負けじとエルボーでブン殴り、さらには延髄斬りというこれまだ王道エースの技を見せる海野。ランニングエルボーで張り合う辻に叫ぶ海野。この仁王立ちも良かったです。それに呼応した辻がヘッドバッドで一発で昏倒させる。いやはや……この一連の応酬は見事でしたよ。ケチのつけようがないですし、レベルの高いライバル対決です。

ダブルダウンから起き上がり、互いにコーナーへともたれましたが、残り3分の中コーナースプラッシュで串刺しにする辻。あれだけ絞り出した後でのこの跳躍力には恐ろしさすら感じます。

辻のコーナースプラッシュ。この跳躍力!

そして海野をコーナートップへ据えての雪崩式狙い。この前の成田戦での引き分け前の不用意な雪崩式の反省点が活かされており、今回のタイミングはベストでしたね。そして受け手も選ぶスパニッシュフライ。この技が出たときのどよめき混じりの歓声は凄かったです。

辻のスパニッシュフライ。生観で見たい技の一つですね

さらにブレーンバスターボムで追い込むと、再びジーンブラスターを狙いましたが、これをフットスタンプで返す海野。綺麗でなく不格好で、そして危険ではありますが、これは良かったですよ。先ほども書きましたが、こういう咄嗟の局面で出した技のほうが印象深いです。恐らくはドロップキックバリエーションの一つかなと推察しますが、それだと垂直落下式ドロップキックですかね?

腰を抑えて悶絶する辻に対して仕掛けた海野のイグニション。「頭から落ちたぞ……」と息を呑む声が隣席から聞こえてきましたが、やはり名付けは大事ですね。その後に仕掛けた抱え式の変形デスライダー。今の海野の大技の一つです。イメージとしては普段使ってるデスライダーの上位技という感じであり、これをフィニッシャーの変化球として繋ぎで使うのは個人的にはあまり好きな考えではありませんが、それでもインパクトは随一でしたね。

海野の変形デスライダー

そしてデスライダーを狙いますがこれをポップアップで放り投げると、着地を狙ってのジーンブラスター!海野が一回転して轢き殺された感があり、残り40秒で辻陽太の勝利!これは星取りがわからなくなってきましたよ。

無防備な所にブチかました辻のジーンブラスター

清宮に芽を残すという意味では辻の勝利が嬉しくもあり、負けた海野に悔しさを感じ、感情がグチャグチャになりましたね。しかしながら試合としては素晴らしく、この二人のキャリアで注目カードとしてセミを務め上げたことが何よりも今は喜ばしいですね。本当にいい試合でした。ショータもヨータも凄いですよ。

◼️第8試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Bブロック公式戦
オカダ・カズチカ vs KENTA


KENTAのオカダとの戦いは対世界と言っても過言ではなく、キャリアで勝りつつも現在の最先端にどこまで通用するかという一つの挑戦なんですよね。かつての名車が旧車となり、ガタがきた中で最新式の車と速度を競うような、そんなロマンとドラマがあります。G1の初対決のときのあの何とも言えない現状の衰えた力の限界と、辿り着けない遠い頂に対する表情が忘れられず、このカードにはちょっとした思い入れがあるんですよね。

オカダの入場時、僕のいた二階席から立ったコーナーは遠く、仕方ないかなとiPhoneを下ろしたのですが、オカダはこちらの二階席へ向けて視線を送り、しっかりと指差しで確認したんですよね。目が合いましたし、スマホで撮るのも失礼に関じて拍手を返しました。いやはや……こういう所なんですよ。視野が広いし抜かりがない。オカダは本当にプロだと思います。

オカダとKENTAの明と暗

しかしそんな思いを他所に場内はKENTAコールが多く、ややコミカルな空気ながらもこれだけKENTAが新日に受け入れられて存在感を発揮してるという事実が嬉しく、今までの道のりは決して無駄ではなかったんだなと。

この試合、集中して見てたのであまり写真がないのですが、のらりくらりと間を外すKENTAと格負けしないよう猪木憑依後の「怒り」を見せるオカダとの心理的なせめぎ合いが面白かったです。KENTAは本当にこうしたアメリカンなヒールが好きなのだなと思う反面、肉体が限界に近づきかつてのような特攻スタイルで貫くのが無理になった男が、アメリカで不評を買った挫折を糧にした結果のスタイルとして見れば非常に味わい深いものがあり、歳とキャリアを重ねた男が手段を選ばず貪欲に頂点を狙う姿には惚れ惚れするものがあります。途中に見せたニードロップ連発からフェイントを見せての顔面蹴りなど、ヒデオイタミの要素もちゃんと残っているのがたまらなく嬉しいんですよね。

それでいながら、昔のKENTAを呼び覚ますように、徐々にギアを上げて重みを増すキック。かと思えば外し、昔の自分と今の自分の差を過度に捉えすぎず、気楽に付き合ってるような気がします。この生き様って本当に学ぶものが多いんですよ。

そんな中で目を引いたのは、やはりトップロープからのダイビングフットスタンプでしょう。GHCヘビー級王者時代のKENTAの王座戦を知ってる身からすると非常に印象深い技の一つであり、KENTAのコミカルさで笑ってた客から悲鳴が上がっていました。

オカダの腹部にモロに突き刺したKENTAのダイビングフットスタンプ

あともう一つはKENTAの持ち出したシンガポール・ケインこと竹刀であり、これでの殴打でもどよめきが生まれており、部活動をやっていれば非常に身近な凶器であるというのもあってか「うわあ……」とその痛みに顔をしかめる人も多かったです。オカダが取り返して竹刀を持ち、同じように反撃かと見せかけて場外に捨てたあたりには彼のこだわりを感じました。

竹刀を持つオカダ。意外と似合ってますよねw

やはり感じたのは圧倒的なまでの体格差。KENTAを抱えることに造作もなく、だからこそ反則やのらりくらり殺法の数々が逆にリアリティとして機能する……。最後のレインメーカーのシーン、カウンターを狙ったのかどうか不明でしたが被弾前に崩れ落ちており、腕を掴まれた時点でKENTAもフラついていましたね。あれは単純に技の失敗として見るよりか限界だったという解釈のほうが個人的に好ましく、その後の開脚式ツームストン、いつもよりやや弱めだったレインメーカーも、逆に切なさと哀愁を感じるビターな結末だったと思います。

試合後のオカダはIKKO式のマイク。オスプレイ戦で落としつつも首位はキープしており、いまだに新日本の主役であることは変わりません。ペンライトの色が黄色だったのも印象深く、場内のオカダへの声援も、少し前のやや嫌われてた頃と比べると感慨深いものがありますね。讃岐うどんネタを入れましたが、終わりが22時過ぎでは食べられる場所は限られますよ!と思いつつ、ベルトがなくとも新日本の代表はオカダなんだなと。そう実感したメインイベントでした。

観客の大歓声に応える勝利後のオカダ






久しぶりの観戦リハビリというのもあってか、めちゃくちゃ長くなってしまいました……。読む人本当に申し訳ないです。つい熱量が。いや、それにしても今回で本当に実感したのですが、当たり前の話しながらやっぱり観に行くのって大事ですね。配信だと拾い切れない部分が多く、また配信での評価と生観戦での評価のだいぶ変わった選手も多いです。首都圏住まいの人と比較したら観戦数はどうしても負けてしまいますが、また機会があれば見に行きたいですね。長くなりすぎたので今日はここまで。またお会いしましょう。ではでは。

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