2023.7.26 新日本プロレス G1 CLIMAX 33 DAY8 試合雑感

◾️第1試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Cブロック公式戦
HENARE vs “キング・オブ・ダークネス”EVIL

HENARE入場時にディック東郷の奇襲。そこからマイクで呻き声を響かせ、さらに客席に雪崩れ込むなど、EVILのレスラーとしての汎用性の高さは素晴らしいですね。スタイルがきっちりヒールとして固まっていながら、相手が誰でもどんな試合順でもしっかりと仕事をこなす。色々言われつつも役割の多さを見ると新日が大切に扱うのも分かる気はします。

戦法は悪辣でも根底はゴツゴツバチバチへの適性は元から高く、ドツキ合いでもグダつかないのが利点であり、また受けっぷりもいいのでHENAREのパワーと怒りが存分に伝わってきます。椅子をストレートで撃ち抜いたシーンはハイライトでありましたが、椅子をすかさずディック東郷がHENAREに投げ渡すファインプレー。椅子での誤審狙いはフェイクで、まごついた隙を狙ったEVILの金的が本命であり、そのままEVILで勝利。ディック東郷→EVILの視線誘導がちゃんと戦術として機能しており、幾重にも積み重ねて本命を通すやり方はまさに「詐欺」だなと。一つの壁となっているEVIL相手の勝利がならなかったのは残念ではありますが、この勝ち方はヒール冥利に尽きますね。

◾️第2試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Dブロック公式戦
後藤 洋央紀 vs アレックス・コグリン

どんな凶器を持ち込んでのコグリンの肉体美には敵いませんよね。この筋肉が一番の凶器ですよ。

後藤の負傷した腹部に対して椅子攻撃などは見舞いましたが、シンプルな張り手が目立ったのは意外性がありましたね。最後は中腰から一気に持ち上げるぶっこ抜き式のジャックハマーで荒武者を粉砕してコグリン勝利。負傷によるエクスキューズがあったとはいえ、驚きの番狂せです。投げすら反動で苦しむ後藤とのいい対比になっていましたし、残念ではありつつも負けも仕方ないかなという印象でした。

◾️第3試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Cブロック公式戦
鷹木 信悟 vs マイキー・ニコルス

わりとソツなくシンプルにこなすからこそ、逆にリズムの狂いや粗が必要以上に目立った印象ですね。鷹木の対応力が高いだけに瑕疵が目につきやすいというか。トップロープ最上段からのブレーンバスターは良かっだけに、この試合はロープワークの攻防の噛み合いの悪さが惜しかったですね。最後はフライングボディシザースドロップのような形で押し潰すように鷹木が勝利。こんな勝ち方は鷹木にしては珍しく、逆にいいもの見れた気はします。

◾️第4試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Dブロック公式戦
棚橋 弘至 vs 矢野 通

棚橋、だいぶ膝がキツそうですね。互いに手の内がわかっている攻防はいいのですが、以前ほどのバリエーションはない印象もあります。

フォーリンラブでの多少のもたつきやシーソーホイップの受けのときの膝の状態は心配でありつつも、スリングブレイドの高度はまずまず。しかしながらそんな足の状態でも放つハイフライフローの意地たるや。矢野相手だろうが、どんな状態であろうが、これを見せることに意味がある気はします。試合終了後の一本指立てがかなり印象に残りました。

◾️第5試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Cブロック公式戦
石井 智宏 vs エディ・キングストン

エディキン、憧れが一番の武器というのがロマンがあっていいですよね。石井相手の地獄のチョップ合戦は見応えがあり、後楽園という空気感とのマッチも素晴らしいものがあります。使っている四天王remixとでもいうべき技の数々は当人に合っている技も合っていない技もあるのですが、合ってない技はその合わなさが逆に味となっていて、これはズルいですよね(笑)

踏み込んで加速するバックフィスト・トゥ・ザ・フューチャー二連発でも石井は崩せず。石井も意外性のあるコードブレイカーを変奏として見せ、最後は垂直落下式のブレーンバスターでエディキンに勝利。いやはや、面白かったです。この熱量とノリやすさは群を抜いていますよ。この組み合わせはSTRONGの王座戦でまた見たいですね。

◾️第6試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Dブロック公式戦
内藤 哲也 vs シェイン・ヘイスト

シェインは少し悪ぶってる感があり、それが内藤の醸し出す悪ガキ感との相乗効果があっていいですよね。そんなシェインを嘲笑うかのように帽子を投げ捨ててねちっこいネックロックを見せる内藤に対し、ポテンシャルの高いドロップキックや小気味いい打撃で攻めるシェインのコントラストが面白いです。

シェインがテンポを上げれば内藤も応じてギアの変則ぶりでしっかりと張り合っていく。膝立ちでのエルボー合戦でも内藤が楽しそうな表情を見せていたのが良かったですね。

ボムバレーデスをデスティーノで切り返しつつも、シェインもラリアットで追撃を許さない。バックエルボーをボムバレーデスで切り返そうとするも、着地した内藤がコリエンド式デスティーノ。正調デスティーノは今度は逆にボムバレーデスで叩きつけてシェインの勝利。内藤の受けっぷりが素晴らしく、ボムバレーデスの一芸があるだけにシングルとしての適性はマイキーよりシェインのほうがあるのかな?とも。戦前の挑発を思えばシェインからすると絶対に勝たねばいけない試合であり、負けたとはいえ内藤も充実してるような、そんな一戦でした。

◾️第7試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Cブロック公式戦
タマ・トンガ vs デビッド・フィンレー

NEVERのタマ時代を強制終了させられての担架送りの屈辱はそう簡単には晴れず、開始早々タマの奇襲から試合はスタートします。こうした荒れ模様の試合でも元バレクラの血が騒ぐのか、適応力のあるタマでしたが、冷徹にそれを捌くフィンレーにはゾッとしましたね。

この辺りの空気感はジェイとはまた少し違うというか、ある側面においてはジェイより酷薄な印象を受けますね。技をかける際の感情のほとばしりが凄まじい反面、フォールを返された後の妙な冷めっぷりが印象深いです。なんというかヘラついてないのが逆に目新しいというか。それでいてタマの膝を狙う怖さもあり、人体破壊系ヒールここに極まれりという感じですね。

フィンレーもブルーサンダーやコンプリートダストのような大技の投げを実装したことで、プリマノクタとINTO OBLIVIONの首折り2種だった頃より全体的な攻撃力が増しており、試合も厚みが増している気がします。

最後はタマがまさかのウラカンラナで押さえ込んで雪辱を晴らす展開に。全体的にハイテンポかつハイスピードであり、前回の王座戦より個人的には面白かったですね。

◾️第8試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Dブロック公式戦
ザック・セイバーJr. vs ジェフ・コブ

前回のTV王座より5分延長という感じでありながら、立ち上がりはじっくりしたもので、その中でも持ち前のレスリングテクニックでザックに張り合いつつ、単純な衝突では重さとパワーに勝るコブが有利という構図。通常の格闘技では試合成立すら難しい階級差を堂々と落とし込んでいく。これがプロレスです。スープレックスvsサブミッションという構図こそ対等にでありながら、単なる巨漢ならまだしもパワーに加えてレスリングの下地のあるコブは実のところはかなりザックが不利であり、難敵と言っても過言ではないと思います。

最初は防戦一方だったものの、そんなコブに対しての切り崩しはロープを使ってのDDTやネックツイストに活路を見出し、さらにスリーパーホールドでスタミナを削りにかかります。一度目のツアーオブジアイランドは前回の決まり手である十字架固めで切り返し、返されてもクラーキーキャットで絞り上げますが、これは何とか逃れるコブ。さらなる押さえ込みで削ったスタミナを突破口に押さえ込みにかかりますが、これを跳ね除けたコブがレア技のF5000でザックを宙に回せると、そのままツアーオブジアイランドでブン回して勝利。パワー差を考えると結末こそ当然の帰結ながら、ザック相手はやはりコブもしんどいのか、終わった後の「チョットマッテ」が暑さも混みでリアルでしたね。この二人のプロレスは全くの初心者が見ても互いのキャラクター性や戦術が非常にわかりやすく、それでいてしっかりとしたレスリングになっているのがいいですよね。いやはや、いいものを見せていただきました。G1、最高ですね。

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