2023.8.9 新日本プロレス G1 CLIMAX 33 Dブロック最終戦 試合雑感

◼️第6試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Dブロック公式戦
矢野 通 vs アレックス・コグリン

入場時に襲ってきたのはまさかのゲイブ。因縁さえあれば襲撃する狂犬ぶりがたまりません。矢野もコミカルではなくシリアスなブチ切れモードで対応。場外乱闘で荒らし回ったあとはテーピングによるチョークとGBH時代の荒々しさを見せましたが、このチョーク攻撃を受けてるコグリンの表情が最高すぎて笑いましたw

リング内での鬼殺しこそ不発に終わりましたが、もう一度介入したゲイブに場外テーブル葬の形で鬼殺しをお見舞いすると、バーバー矢野を彷彿とさせるハサミを取り出しての矢野の暴走モードが止まりません。しかしながら隙をついてのベルト殴打からジャックハマーでコグリンが勝利。良くも悪くも矢野のサービス精神のせいで予告されたブチ切れであり、キレたことそのものにサプライズ性はほとんどありませんでしたが、それでも普段とは違うだけに見応えはありましたね。



◼️第7試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Dブロック公式戦
ジェフ・コブ vs シェイン・ヘイスト

マイキー・ニコルスも悪くはないのですが、やはりシングル適性はシェインのほうが高いですね。緩急やダイナミズムさが売りであると同時にわりと受けのリアクションも良く、それでいてちょっと悪ぶってる感が愛嬌に繋がっているという。ボムバレーデスもいう一撃性のある技があるのも好感度は高いですね。

対するコブはやや精彩を欠いてるような印象ですが、キャメルクラッチをかけられながら持ち上げるなどのパワーは健在で、得意とするスラムやスープレックスでシェインを振り回すものの、やや攻めきれない感じがありましたね。両者ともにそこまで悪くなく、また手が合っていないわけでもないのに、全体的に鈍重でテンポの悪さが引っ掛かりましたね。

その杞憂は現実となり、最後は無理やり足に絡みついたシェインがコブをリングに戻さずに執念の両者リングアウト。めちゃくちゃグダグダなリングアウトで笑いましたが、最初から引き摺り落とすことを予告していた上に、変に決まりすぎてなく恥も外聞もなく足にしがみついて止めたあたりが逆に凄くリアルであり、執念を感じましたね。こういうのって綺麗に決めすぎないぐらいがちょうどいいとも思います。


◼️第8試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Dブロック公式戦
後藤 洋央紀 vs ザック・セイバーJr.

手負いの荒武者vs執念と絆のバトン。シェインのなりふり構わぬアシストを活かそうと、ザックも負傷した脇腹へバックブリーカーを叩き込むなど容赦なく攻め立てます。

後藤も珍しくロープを使ったタランチュラ式の首4の字固めなど業師としての引き出しを存分に見せてきます。ザックはザックで珍しくラリアットを乱発するなどして後藤の領域で張り合おうとしますが、やはりタフさや膂力では後藤が上なせいか、肉弾戦ではかなり苦しい戦いを強いられましたね。途中からは後藤の攻め手を潰す方向にシフトし、左腕を潰し、右腕を潰し、ヘッドバッドも潰したわけですが、そんな後藤が最後に頼ったのはミドルキックで、最近見せませんでしたがこれも一応は得意技なんですよね。ここら辺の打撃の流れがシームレスかつ理に適ってて面白かったです。

GTRを切り返してのサムソンクラッチ→ヨーロピアンクラッチなどで揺さぶりをかけると、ザックが選んだのはグラウンド卍固め。このまま後藤を絞り上げると、そのまま反転して足をデスロックに、両腕を羽折りでガッチリ固めて脱出不能の拷問技でタップを奪いました。久しぶりにザックのサブミッションアーティストぶりが出ましたね。これでザックはブロック突破確定であり、今までの新日への献身やマッチクオリティを思うと妥当の選出だと思います。

◼️第9試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Dブロック公式戦
棚橋 弘至 vs 内藤 哲也


G1ブロックの最終戦。幕を引くのがこの二人というのも色々と感慨深いものがありますね。内藤は勝てば1位通過で負ければブロック敗退という両天秤。棚橋はすでにブロック突破の芽は潰えているものの負け越しで終わるか勝ち越しで終わるかの「個人の戦い」がかかっており、それ以外でも勝てばコブとザックの二人が決勝トーナメント進出確定というねじれも手伝ってか、最終戦に相応しい熱を帯びていたように思います。

観客のコールは二分……と見せかけて内藤コールが圧倒的に多く、これはやはり決勝トーナメント進出が直接的にかかっているというのもあるでしょう。しかしながら最終戦での棚橋というのはやはり内藤にとって特別な相手であるせいか、それに対しての警戒心は根強く、心中穏やかでなかったファンも多かったと思います。

空気感ってね、コンディションを凌駕するんですよ。棚橋も内藤も近年のコンディションはあまりいいほうではなく、特に棚橋の今回のG1はかなり動きに難があったわけですかそれでもこの試合に限って言うならそれが瑕疵には見えず、むしろその互いに限界を超えていく姿勢こそが、何よりも今の棚橋と内藤を暴き出していく。この二人の対戦はリバイバルにはならないのです。

やはりそれが一番に現れた箇所は、棚橋の場外ハイフライアタック。棚橋を今まで見たきた人間なら誰もが知る王座戦モードの技であり、今のコンディションで放つことにはデメリットしかない。そんな中でこれを選んだ棚橋の覚悟たるや凄まじいものですよ。

そんな棚橋に内藤が選んだ返歌は、ハイフライフローに対してまさかの膝を立てての「剣山」での迎撃……!いやはや、これには目を見張りましたよ。棚橋の内藤へのハイフライフローはアタック→正調の二段構えであり、アタックの時点で抱き止めるように内藤が受けるのが二人の攻防の鉄板なのですが、続く正調のハイフライフローは内藤は基本的に転がって回避していたんですよね。以前はそこからデスティーノへと繋いでましたし、近年はジャックナイフエビ固めなどで押さえ込んだりすることが多く、膝での迎撃って少なくともここ2〜3年ではやってこなかったんですよ。そんな内藤が、自身も爆弾を抱えている膝での迎撃を選んだ意味を思うと、なんというか言葉が出ませんね……。偶然にも最悪な選択を、どうしてこう躊躇なくやることができるのか。内藤の刹那性は凄まじいですよ。本当に。

消耗戦の様相を呈してきた中で、棚橋は何度も首固めを仕掛けます。かつては棚橋を「丸め込みしかない男」として悪い意味での代名詞となってた技ですが、晩年の今、それに縋ることが逆に味わい深いというか。チラッと繰り出したスリングブレイドからの横十字固めこと「スリングブレイドル」はかなりのレア技でしたし、これを躊躇なく出すあたりに棚橋の本気度が窺えましたね。

ダルマ式ジャーマン、トゥエルブシックスと往年の技を連発しましたが後者は不発。棚橋は張り手を見舞うも、それに唾を吐きつつ、内藤がこのリーグ戦で使い出した新技であるトルネードDDTパッケージホールド。棚橋の脳天が凄まじい勢いで打ち付けられ、そのまま押さえ込んで内藤の勝利となりました。この技、ザックを葬った技でもあるのですが、ここにきて棚橋を撃破したことで必殺技としての箔が付きましたね。ただ、公式の決まり手である「スイング式首固め」はちょっと……。どうせならちゃんとした技名を付けて欲しいですね。

いやはや……棚橋敗北がショックであると同時に、内藤の決勝トーナメント進出が嬉しいという矛盾。またしても情緒がグチャグチャになってしまいました。この試合において内藤が強調していたのは「今」という「もう戻ることのないこの時間」であり、棚橋戦を懐メロにする気はさらさらなかったわけなのですね。今、この瞬間だけを生きていき、その瞬間の中で交わされる感情や熱情こそにプロレスをやる意味がある。サステナビリティーの真逆であり、持続可能性などカケラもない刹那の領域に内藤はいて、今しか見れない内藤を僕たちはひたすらに共有し消費していく。こうなったらもう最後まで追いかけるしかないんですよ。内藤哲也の決勝トーナメント、期待しますよ。





さて、これでABCDブロック全ての試合が終わりました。いよいよ明日から決勝トーナメントの始まりです。いやあ……緊張しますね。G1レビューもあとちょっとです。もう少しだけ頑張っていきましょう。ではでは、今日はここまで。

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