2023.7.30 新日本プロレス G1 CLIMAX 33 DAY10 試合雑感

◼️第1試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Cブロック公式戦
HENARE vs デビッド・フィンレー

相手がストライカーというのもあってか、HENARE相手にいきなりのシバキ合い。流石にパワーの差がありますが、ヘッドロックからのマウントパンチでフィンレーもやり返します。このアメリカンなパンチを使う選手は多いのですが、フィンレーは今まで見た中だと一番似合いますね。一見同じようなストリートファイトスタイルでありながら、ちゃんと色分けできていることに関心してしまいました。

フィンレーが負傷した首をねちっこく攻めるとHENAREは持ち前のパワーで反撃。体格で勝るHENAREが負傷によるデバフがあるのと、フィンレーの部位破壊攻撃が上手く調和して苦闘になってるのは実にロジカルだなと。最後はストリーツオブレイジを切り返してのバックスライドからINTO OBLIVIONへ繋いで勝利。荒々しさとテクニカルな切り返しという相反する両面がより研ぎ澄まされた印象があると同時に、上手いだけにやや「綺麗すぎる」印象もあって、フィンレーは良くも悪くもどこか「お坊ちゃん」感が抜けませんね。それがグレてるのが最高ではあるのですけど。キン肉マンⅡ世のケビンマスクを思い出しますw

◼️第2試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Dブロック公式戦
矢野 通 vs ジェフ・コブ

矢野の仕込んできたビールを飲むコブの姿だけで元が取れた感がありますwコブはコミカルへの適性もちゃんとあるのですが、コミカルテイストの試合よりは普通の試合でサラッと見せるほうがやはり映えますかね。試合は矢野が顔面スプレーから押さえ込んで勝利。コブ、足元を掬われちゃいましたね。

◼️第3試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Cブロック公式戦
マイキー・ニコルス vs エディ・キングストン

麺ジャラスKで仕上げてきたボディは圧巻ですねwエディキンに感じる妙な親近感の一つはこの身体にあると思います。しかしそんな体格をモノともせずに一気に滞空ブレーンバスターで持ち上げるマイキーも中々のもので、G1のリーグ戦だと目立ちにくいながらもこのオーソドックスさはいいと思います。

こうしたオーソドックスなマイキーと比較するとエディキンのオリジナリティが際立つのも事実で、動きを見てるだけで面白いというのは一流レスラーの証だなと。オーソドックスvs王道コピー技という奇妙な邂逅は、不意打ちのバックフィスト・トゥ・ザ・フューチャーで勝利。このタイミングや速度は成瀬のクレイジーサイクロンが頭を過っちゃいましたね。その前に放っていたスライディングDは妙に不格好で吹き出してしまいましたし、この最後の一撃もマイキーの倒れ方がどこかコミカルでとてもよかったです。こういう試合にはオーバーリアクションで応えたいなと思いましたw

◼️第4試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Dブロック公式戦
内藤 哲也 vs アレックス・コグリン

このG1での内藤はいつも以上に自分の世界観というか空気をきっちり作れていますよね。しがらみのない自由さというか、最もロスインゴらしい内藤が拝めるというか。徹底した「らしさ」でコグリンを焦らしますが、持ち前のパワーで放り投げられます。ただ、こうした部分でも内藤の受けが光るわけで、安心して見ていますが対戦相手からするとこの世界観を崩すのは本当に容易ではないんだなと思います。

そのジワジワした内藤のペースを崩すコグリンのパワー。執拗な挑発にはあまり乗らなかった印象もありますが、トルネードDDTを抱えて一気にパワーボムで持っていったシーンは良かったですね。ただ、試合全体の印象としてはややスピードに欠けた印象があるというか、互いが互いに乗らなかったというか、ギアがかかりそうでかからなかった感じもあるというか……。コンディションが悪いようには感じなかったのが救いでしょうか。最後はリバースDDTで叩きつけてのデスティーノで内藤勝利。

◼️第5試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Cブロック公式戦
石井 智宏 vs “キング・オブ・ダークネス”EVIL

EVILの奇襲から幕を開けますが、石井は数少ない「キレさせたら怖い」空気感を纏っており、猛反撃が担保されてるのがいいですよね。EVILもEVILで手段を選ばず、石井のタフさを崩すように鉄柵へのスルーとホームラン。ホームランは未遂だったものの、椅子を首に固定しての鉄柱攻撃。すでにかなり荒々しい試合となってますね。

嘲笑うかのようなスタミナ削りとEVILの連続フォールを切り返して押さえ込む石井。こうした部分でも「怖さ」があるんですよ。先ほどのホームラン未遂もEVILに椅子をぶつけていましたし、反則の顔面かきむしりに対しての指折りなど、反撃の帳尻が合っているのも見事です。

そんな石井に対し天龍コラボTシャツを引き裂いてツバを吐き、さらに汗を拭くなど悪辣さで塗り替えにいくEVIL。石井も喉笛チョップからの延髄斬り、さらにはWARスペシャルを見せるなど漢気を感じさせるファイト。掟破りのEVILまで見せましたが、最後はレフェリーを抑えてのディック東郷介入→金的からのEVILでどうにかEVILの辛勝。ディック東郷の介入と金的が実質的に試合を決める要素となっており、この温存したカードをどう対処するかがEVIL戦の課題ですかねえ。

◼️第6試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Dブロック公式戦
ザック・セイバーJr. vs シェイン・ヘイスト

テクニカルなレスリングの攻防かと思いきやシェインの蹴り攻撃で若干の不穏さが。そこから打撃中心の攻防となりましたが、もう少しだけ長くレスリングの攻防を見たかった気もあってちょっともったいなかったですね。ただ、この計算しつつも無軌道な試合はかなりレアで同門対決らしい対決となりました。互いにかなり自由でしたよね。

最後はボムバレーデスを切り返しての三角絞め。それをフェイントにヨーロピアンクラッチでザックの勝利。ザックはどうにかまだ芽を残していますね。

◼️第7試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Cブロック公式戦
タマ・トンガ vs 鷹木 信悟

ストーリーがやや重苦しい印象のあるタマでしたが、鷹木戦では持ち前の明るさと切り返しのスピーディーさが存分に発揮されていましたね。そうした相手に呼応して強くなるのが鷹木という男で、グラウンドコブラのような搦手を見せつつも、タマのスピードに張り合うレベルの高い技術で真っ向勝負を見せました。

タカギドライバー'98のようなレア技や掟破りの鷹木式ガンスタンとでもいうべきポップアウト式のガンスタンを見せるなど、鷹木も猛攻を見せますが、タマもラストオブザドラゴンをガンスタンで切り返す離れ技を見せ、最後は鷹木のジャックナイフ式エビ固めも空しく無常のゴング。時間切れ引き分けとなりました。それにしてもタマが鷹木の向こうを張るレベルの格になったことの再確認のような試合というか、この試合においては勝てはしなかったものの負けなかったという点のほうが大きいかもしれません。

◼️第8試合 20分1本勝負
『G1 CLIMAX 33』Dブロック公式戦
棚橋 弘至 vs 後藤 洋央紀


互いに満身創痍ながら、この二人の対峙はブシロード以前のユークス時代の遺産の一つであり、今となっては10年以上前の黄金カードなんですよね。開始早々首固めを見せたあたりが棚橋のニクいところで、当時とにかく評価の悪かった棚橋が、伝説の2007年の後藤戦の前にこれで決まるんじゃないかとネガティブに言われてた技の一つなのですよ。単なる揺さぶりではあるのですが、そうしたネガティブな文脈からの脱却を歴史的な重みとして見せたのがまず素晴らしい点ですね。

今回の棚橋は後藤の負傷もあってかややラフ仕様で挑んでおり、徹底したアバラへのストンピングやドロップキックなどで攻め立てます。後藤もこうした追いかけるシチュエーションは得意としており、棚橋の足を固定しての村正など、少し棚橋に合わせて変化球を見せていたのが印象的でした。この試合においての後藤のラリアットは光っていましたね。

この二人での雪崩式の攻防は怖いのですが、回天と雪崩式ブレーンバスターは互いに不発。雪崩式のドラゴンスクリューが帰結点となりましたが、これが棚橋のコンディション不安と後藤の負傷もあってリアルでした。ただ、棚橋は前の試合と比較するとこの試合でのコンディションは悪くはなく、対後藤戦となると気合が入るんでしょうね。ダルマ式ジャーマンは負傷箇所にも響く技で、棚橋黄金時代の象徴でもありますが、この試合ほどエグく響いたのは近年ではなかったかもしれません。

後藤の顎を砕いた張り手に、棚橋を昏倒させたヘッドバッド。技の一つ一つに歴史があるのですよ。GTRとツイスト&シャウトの撃ち合いで不意に仕掛けた昇天・改こそ崩れましたが、これは互いのコンディションを考えると仕方ないでしょう。最後は後藤の顔面に投下した意地のハイフライフローが刺さって棚橋の激勝。苦しいながらもどうにか一勝をもぎ取りました。

いやはや……かつて未来を投げ捨てて身体を極限まで張ったあの頃のような試合は今となっては不可能かもしれないという若干の寂しさはありつつも、それでも晩年に差し掛かった今の二人にしかできない試合であり、感情はいつだってあの時代に閉じ込められたままで、それが円熟味を増した今の二人から如実に伝わってくる……そんな試合でした。少なくともこの試合の熱の入り方は尋常じゃなかったですし、やはり最後にモノを言うのは魂なんですよ。動けるか動けないかなど、プロレスにおいては表象の 部分にすぎません。観客の大歓声が全ての答えだと僕は思います。いい試合でしたね。

最後にアームカバーを外してコーナーに立ったことで、見慣れたアイコンである棚橋弘至へと一気に変わったことには驚きました。アームカバーはやはり近年の棚橋のイメージが根強く、たったあれだけの所作で「あの時代」へとフラッシュバックさせたのはやばいですよね。猪木との距離感も近いようで遠くなった今の新日において、棚橋は現在進行形の伝説であり、またこの光景も伝説化するんだろうなという思いもあります。どうかその日まで。エースはエースとして君臨し続けていて欲しいなと痛切に願います。

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