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みかんの国にいる私

松山のプレイパークを運営する団体が主宰している「哲学カフェ」に参加して来た。
スタート18:30。
なので21:00時現在、帰宅の途についた私は遅い時間の電車に乗っている。
夜の街を走る路面電車。
ちょっといい。

電車は一両のみで、車内は縦長の青いシートが両側にしつらえられており、その前に吊り革が下がっている。
床も壁も全てが、木でできている。
ワックスをかけて丁寧に使ってきたのだろう、床面が染み込んだオイルの色をしている。
子供の頃乗っていた名鉄西尾線がこんな感じだったな、と思い出す。
今も走っているのかしら、あの旧型車両。

夜の車内は空いている。
路面電車はどこまで乗っても「大人200円、子ども100円」だ。
好きなだけお城の周りをぐるぐる回っていられそう。
今度、暇な時に怒られるかどうか試してみよう。

さて、車内の写真を見て、何かお気づきだろうか。

近くに寄ってみよう。

吊り革にみかんが貫通して、ぶら下がっている。

車内広告も、でこぽん、せとか、みかんと、全て柑橘類。
すごい、ここは本当にみかんの国なのだ。
幸せなオレンジ色で溢れている。

「西尾線に揺られて高校に通っていた私よ、君は50年後にはみかんの国で暮らしているんだぞ、信じられる?」
と、心の中のティーンエイジャーの私に語りかけ、
「そういえば、いつも語りかけるのは高校生の自分だな」
と気づいた。

雪の積もった手稲山を正面に見る大学の寮の4階で。
神戸に向かう阪急電車のチョコレート色の車両に乗っている時に。
飛行機の轟音が響くマンションで赤ん坊を抱きながら。
馬渡橋のすぐ下の大岩から流れに飛び込む時に。
日本海の波に揺られてウミウシを探しながら。

幸せだなあと思う瞬間、いつも10代の私に話しかけていた。

「信じられる?生きていれば、いいこともあるし、幸せだなって思えることも待っているんだよ」

それらは、過去の私の選択の結果として得られたものではあるが、もしかするとこうして語りかけていた私の言葉が、時を超えて高校生の私に届いていたのかもしれないな、と思う。

そうだったらいいな。
多分、悪いことは、あの子には何も教えてないはずだから。
ひたすら、幸せな未来だけを夢見て、耐え抜いてほしい。
いいこと待ってるよ。

**連続投稿769日目**

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