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さをりのお店「コースタ814」を閉めました

敦賀では、引っ越してきてからしばらくの間、知的障害を持つ方が自宅で織っていらっしゃった「さをり織り」の布を販売していた。
カラフルで、パターンが決まっていないところ、自由に織っている感じがとてもいいな、と思ってBASEで、ECサイトを作っていたのだ。

ふらとぴ」という授産製品を販売するためのECサイト構築を請け負っている会社で、数回、記事も書かせていただいていた。
しかし、ある時期から織り手さんが、幅広の布を織ることができなくなってしまい、”手芸材料”としての「さをり織り」をウリにすることができなくなった。
何しろ、幅3㎝では、作れるものがあまりに限られる。

どうしたものかと思ったが、その後も、織り手さんは、かつてのような、ストールやマフラーサイズのものを織れるところまで回復することがなかった。
そのまま、しばらく商品の仕入れができずに、開店休業状態のまま放置して約1年。
サイトは、記念に残しておいてもいいかな、と思っていた。
だが、松山と敦賀では、もう気軽にやり取りもできないし、おそらく、織り手さんが、また大物作品に挑戦することもないだろう。
残しておいても、私の敦賀への未練が増えるだけだ。
先ほど、思い立って、閉鎖を決めた。

上記は、二年間での販売件数と売上金額。決して繁盛していたわけではない。

ショップを立ち上げてから、私にも”いいこと”がたくさんあった。
さをりの布を販売するために、作品サンプルを作ろうと、裁縫を習いに行ったし、ミシンも買った。
おかげで、趣味が増えて、楽しい経験をさせてもらったと思うし、簡単なものなら自作できる自信もついた。
繰り返す。
楽しかったのだ。
ただ、私には商売の適性が無かった。

ECサイトを自分で作り、商売をしてみる経験をしてわかったのは、パソコンの前以外の場所で、どれだけ手間暇をかけられるかが大事、ということだった。
どんなに、いいシステムがあっても、実際に商品を売るのはシステムではなく、人間だ。
販売する人が、どれくらいそこに気持ちを注げるかで、結果が変わってくる。

例えば、販促グッズ。
ほかのECサイトで購入した商品には、かわいいショップカードや、お得な商品のチラシ、お礼のお手紙などが入っていた。
私は、一切付けたことがない。
というか、そういうものを同封するという発想が、そもそもなかった。
購入してくださったお客様と、つながりを作るという気持ちが圧倒的に欠けていたと思う。
「あたしのこと好きなら、あたしが好きって言わなくても、ちゃんと好きでいてよね」
みたいな、超傲慢な態度。
そりゃ、リピートしようという気持ちにもならないだろう。

それに、また例えば、包装のオリジナリティ。
売れているショップは、そういうところにも配慮が行き届いている。
どこで売ってるのよ?と思うようなキュートな包装紙に、かわいいリボンをあしらって「私が売っているのは商品ではなく『夢』です」と言わんばかりの演出をしてくる。
とにかく、見せ方がうまい。
真似して、凝ったラッピングをしようにも、不器用な私では全く手が間に合わず、しかも、どうやら世間様と「かわいい」の基準もズレているようで、結局、色気のない透明セロファンの袋に詰めて、100均のマスキングテープで留めて送るのが精いっぱいだった。

今さらだけれど、もし、販売していたのが私でなければ、もうちょっと売れたのかもしれない。
さをりを使った「かわいい見本」も、手芸の達人なら、もっといろいろ思い付けたのかもしれない。
そう考えると、申し訳なくなる。
「絶対売ります!」
と自信満々で、布を預かってきた日の自分が、恥ずかしい。

だが、敦賀を発つ数日前、売れずに残った在庫を、織り手さんのお母さまに返却した時
「ありがとう、ありがとう」
と何度も言ってくださったので、私がしたこと自体は、きっと間違ってはいなかったのだろうと思う。
あの、コロナ禍で、対面販売が禁じられていた時期に、よくやったと思う。

『コースタ814』は閉店したけれど、さをり作品は、敦賀のB型作業所『ワークサポートひだまり』で、販売している。
お近くの方は、電話してから、見学に行ってみるといい。
かわいいさをり作品がわんさかあって、選ぶのに困るだろう。
そこから、さをりの魅力を知る人が、増えるとうれしい。

**連続投稿639日目**

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