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冬の日本海の良さを考える

日本海側の住人になると、本当に冬が嫌いになる。

晴れる日がなくなり、毎日、雨、雪、くもりが繰り返され、たまに雷まで鳴る。
若い頃は気にならなかったが、おひさまを見ない日が続くと、人間は気持ちがどんどんふさぐようにできているものらしい。

その上冬は、空だけでなく、青く透明で美しかった海までも、どんよりと濃い灰色に染めてしまう。
高い波があちこちで砕け、釣りもシュノーケリングも楽しめない。
何をして過ごせというのか?と絶望的な気分になる。

世の中には「ギャップ萌え」という嗜好もあるわけで、日本海の冬と夏のギャップに萌える人も中にはいるのかもしれない。
だが、私には高度すぎて、なかなかそこに「萌え」を見いだせない。

つまり、冬の海が全く好きになれない。

敦賀はもう、半歩冬に入り込み、海も冷え始めたため、魚たちは温かい沖に逃げている。
堤防からは、竿を出してもなかなか釣れなくなってきた。
夕方、たぶん今シーズン最後の釣りから帰り、寂しい気持ちで、
「一年中、夏だったらいいのに」
と思いながらTwitterを開くと、こんなツイートが目に入った。

松本大洋さんから、ひと言。

「夏のきらきらした海も好きですが、冬のどんよりした海がとても好きです。耳がちぎれるくらいの痛い潮風もカッコいいです。」

冬の海が好きな人なんて、いたんだ。
衝撃だった。
いるはずない、と思い込んでいたネッシーを見た気分だった。

そこで思い出したのが、我が師・古賀さんのお言葉である。

「嫌いなもの、苦手なものでも、視点を変えたり、それを好きだと言う人たちの気持ちを想像してみることで、好きになれることがありますよ」

私のnoteを読んでくださっている方にはバレバレだと思うが、私は、視野が狭く、好き好き嫌いがはっきりしていて、自分の意見にこだわりがちだ。
古賀さんは、そんな私が過去に書いたある文章を読んでくださっていて、上のような的確なアドバイスをくださったのである。

さも自分の意見のように書いているが、こちらのnoteなんて、まさに古賀さんがおっしゃっていたことだと思う。
対象を好きにならずに、いい文章なんて書けるわけがないのだ。

そこで、私はこのnoteを書き上げる間に、冬の日本海を好きになることにした。
ファンとして周りに推せるくらいの熱量で、冬の日本海を愛してみようと思ったのである。

とっかかりは、やはり、「冬の日本海が好きな人たち」を探すところからだろう。
その気持ちを理解できれば、私もきっと好きになれるはずだ。

まずはじめに、検索サイトで「冬の日本海」と入力してみた。
すると、こちらの動画が並んで5つも、表示された。
『冬の日本海は意外とサーファー多い』というタイトルの演歌である。

NHK E-テレの『ビットワールド』という番組内で流れていたショートアニメ『あはれ!名作くん』の中で登場した歌らしい。
聞いてみると、なるほど、の連続だった。

たしかに、冬の日本海でも、そんなに大荒れしていない時ならサーファーはいる。
寒くないのんか、この人たちは?と思って見ていると、陸では皆「さみー、さみー」と言っていたので、水温も気温も快適ではなさそうではあった。
ただ、人がいないので、初心者のコソ錬には最適だし、冬なら波はいつでもそこそこあるし、海岸の駐車場は無料だし、何よりドライスーツさえ着てしまえば、そこまで海水温を気にせず海に入れる。

行ける!
装備をそろえれば私でも泳げるし、海の楽しさを味わえるはずだ。
そういえば、自分へのご褒美としてフルオーダーで作った「漁師仕様の厚さ9mmのウエットスーツ」も、明日届くと連絡があった。
これは、試してみねばなるまい。
快適に泳げるとわかれば、冬の日本海を嫌う理由は無くなる。
よし、12月の海でシュノーケリングに挑戦だ。
(テンション1UP)

続いて、冬の海の楽しみ方として見つけたのがこちら、ビーチコーミングである。

さて、これから冬に向かう季節は、日本海側のビーチコーミング・シーズンが始まります。夏は南風が優勢で、黒潮の運ぶ漂流物を太平洋側に運んでくれます。けれども秋から冬にかけては北西の季節風が、日本海に停滞して浮いていた漂流物や、対馬暖流の運んできた漂流物を日本海側の浜辺に運んでくれるのです。日本海側のビーチコーマーは、漂着物の少ない夏場を「漂着の冬」と呼ぶほど、シーズンの到来を心待ちにしています。

上記サイトより

なんと、今からが本番だったのか。
確かに、お隣美浜町の海岸では、ハングルが書かれたペットボトルや、スナック菓子の袋なんかを見たことがある。
あの時は
「BTSの誰かが飲んだペットボトルだ、と偽ってヤフオクに出したら、ファンに売れるんちゃうか」
と妄想しながら眺めていただけだったが、それだけでも十分楽しかった。
何より、異国情緒をお手軽に味わえるところがいい。
「外国からの漂着物」は、子ども時代のあこがれだった人も多いと思う。
私もロマンを感じていた一人だ。
大人になった今、それがもう一度味わえるなんて、最高じゃないか?
寒い砂浜を歩き回れば、消費カロリーも相当なものだろう。
ビーチコーミングを趣味にしたら冬でも歩き回る目的ができて、ダイエットにも最適だ。
おお、冬の日本海、意外とすぐれものかもしれないぞ。
(テンション2UP)

続いて見つけ、ヘドバンしながら読んだ記事がこちら。

これは、もう、本当に心からその通りだった。
子どもは寒かろうが暑かろうが、多少天気が悪かろうが、水が好きな生き物で、水があればテンションが上がり、好きなだけ遊んでいられるものなのだった。

私が「冬の日本海が好きになれない」などと軟弱なことを言うようになった背景には、子育てが終わってしまったから、というのは絶対あると思う。
今現在、ちびっこを育てていたら、室内での閉鎖的な育児に煮詰まりまくり、絶対に真冬でも海に連れ出していたであろう。
自信がある。

自己都合で、好きになられたり、嫌いになられたりしたら、海がかわいそうだ。
日本海さん、ごめん。
私が悪かった。
私は、私の子育てを助けてくれた水が大好きだし、川も海も大好きだ。
多少天気が悪くても、日本海のことだって、大好きなんだ。
手遅れになる前に、愛だと気づいてよかった。
(テンション3UP)

そして最後は、もちろんこれだろう。
冬の日本海と言えば、カニ、松葉ガニ。
ここいらでは「越前ガニ」と呼ばれており、先日、今季の漁が解禁になった。
なんと、初競りでは、落札価格310万円(1匹)がついた一大ブランド海産物である。

冬こそ美味しい海の幸

それ以外にも、フグの養殖最北限の「若狭フグ」、脂ののった「寒ブリ」、本当に甘いじゃん!な「甘エビ」、などなど、冬の日本海には、美味しいものがどっさりなのだ。

たしかに寒くなって海水温が下がると、陸地に近いところにいた魚たちはいなくなる。
しかし、沖にはわんさかいるのだから、船酔いさえクリアできれば、これらの海の幸を、自分で釣りあげることだってできるのかもしれない。
そう考えると、夏より冬のお楽しみの方が、実はスケールが大きそうだ。

つまり、シュノーケリングも、釣りも、私がその気になりさえすれば、冬でも楽しめる遊びであり、私はその道を探ろうともせず、「オヒサマガ―」とか「ウミノイロガー」とか、文句だけ言っていたってことなのではないだろうか?

全てやってみないことには結論は出ないけれど、私は、この記事を書く前より、今の方が圧倒的に、冬の日本海に対していい印象を持っている。
とりあえず、今の仕事が終わったら、12月の海に突撃してみたい。

**連続投稿291日目**


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