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【敦賀だより12】マジな釣り人は釣った魚に餌をやらないどころか、コンクリートの上に転がしっぱなし

こちらの記事で、釣りのお師匠様とリールとルアーを手に入れたことは書いた。ピッカピカのピンクとブルーのルアー。気分が上がる。道具が揃ったらやってみたくなるのが人情というもの。

師匠からは
「最初は絶対人が多いところでやらないでね。釣り針は凶器だからね。誰かの目に入ったら失明させちゃうからね」
と念押しされていたので家の前の誰もいないサッカー場でルアーを飛ばす練習していたのだが、魚もいない、水もないところでただ投げて巻いていても全然面白くない。そこで、晴れた平日の昼間ならそんなに人もいないだろうと思って敦賀新港の海釣り公園に行ってみた。

とんでもない勘違いだった。うじゃうじゃいる。
ほぼ10mおきに釣り人がいて、皆さん遠くの海面に向かってルアーをひゅんひゅん投げている。

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時々、銀色の魚を海から引っこ抜いてクーラーボックスにしまっている人がいる。
(師匠ったら、釣れない釣れないっていうけど、簡単に釣ってる人たちがこんなにいるんじゃん。私にもまぐれでかかるかもしれないよー? 今夜はお刺身定食だな!)
お気楽にまだ釣れてもいない夕飯の刺身のことを考えてよだれをたらしながら海釣り公園エリアの先まで歩いて行った。

先輩方の隙間になんとか入れてもらって自分の竿を取り出しリールをセットする。ルアーをつないで海に向かって第一投。
糸が見えない。乱視で近視で老眼なので自分の竿から伸びている糸が海面のどの辺に落ちたのか眼鏡があっても全く見えない。

(この手ごたえは50mは飛んだな)
と悦に行っていたら、右隣のおじさんがちらちらこちらを見ている。
何かと思ったら、おじさんが巻いている糸(岸壁から10mくらいのところで海に潜っている)に私の糸が絡んでいた。
10mちょっとしか飛んでなかったのか。サッカー場で練習した時はもっと飛んだのになーと思いつつ、すみませんすみませんとペコペコしながら糸を外してもらう。

後ろにいる人に針を刺さないこと、隣の人の糸に絡めないこと、できるだけ遠くに飛ばすことなどを心がけながら何度も何度も投げては巻き、投げては巻いたが、一向に魚がかかる気配がない。

ここは、うまい人を観察してその技を盗むしかないと隣の人の様子をうかがっていると、なんと左隣の方も私同様の初心者であることがわかった。しかしラッキーなことにその方は、ベテランの友人を伴ってきていたのでその友人の指導音声が無料で聞けてしまう。
「ルアーが海面に着いたらすぐに巻いてるでしょ? それじゃ棚(ターゲットにしている魚がいる深さのこと)に届かないよ。糸がそれ以上出なくなるところまで放っておいて、そこから巻くといいよ」
ベテランはビギナーの友にそう言っていた。

(ふむふむ、糸が出なくなるまで待つのね。よっしゃわかった)
早速その通りにしてみた。
するとどうだ、アドバイス通りにした途端に竿に感じる重い手応え!
(きた!)
私は大間のマグロ漁船の船長のような顔をしていたと思う。
これから魚との真剣勝負が始まるのだ!

ところが、最初にがつんという手ごたえこそあったものの、そのあと魚が生きているっぽい動きを全く見せない。ずしっとその場にとどまったまま、私と力比べを始めたかのようだ。もしや、私の竿にかかったのはこの一帯の海の主なのか?

まったく巻けないリールをぎりぎり巻き上げようと苦闘していると、右隣のおじさんがそっと言った。
「根がかりしとるんちゃうか」

どうやら私が釣ったのは地球だったようだ。海底の凸凹した岩のくぼみにルアーが引っ掛かってしまったのだろう。またしても、すみません、すみませんとペコペコしながらおじさんから鋏をお借りして糸を切る。

ああ、私のピンクのルアーちゃんが。3個で795円のルアーちゃんが。

結果から書くと、その日、私は持って行ったルアーを三個とも失った。すべて海に飲み込まれていったのだ。私の左隣の人も2回根がかりしていたのを目撃したので、これはもう、どう考えてもあのベテランのアドバイスが悪い。この一帯はきっと根がかりしやすいところなのだ。海底までルアーを落としたらアウトなのだ。

今度ルアーを買いに行くときに師匠に訊いてみようと思いながらすごすご竿をしまって帰る準備をしていると、私のリュックのすぐそばで魚がびちびち撥ねていた。

右隣のおじさんがさっきから何回か魚を釣り上げていたなーと思っていたのだが、おじさんは釣った魚をクーラーボックスに入れることもせずそのまま豪快にコンクリートの上に置きっぱなしにしていたのだ。

でかい。
わたしもこれくらいのを釣って帰る予定だったのに。
せめて写真くらいとらせてもらおうと、スマホを取り出して写真を撮った。

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それにしても血まみれ。口が痛そうだ。魚がしゃべれなくて本当によかった。

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歯の隙間から「俺はこんなところで死ぬために生まれてきたんじゃねえ」と言っているのが聞こえるようだ。

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何枚も何枚もサゴシの写真を撮っていたら、釣りあげたおじさんがこっちを見て言った。
「それ、持って帰っていいよ。元気なほうをもっていって食べな」
(やった!まってました!)と心の中でガッツポーズして
「ありがとうございます!」
と高校球児のような角度で深々と頭を下げて一匹頂いてきたのであった。

右隣のおじさんいい人。左隣のクソバイサー、お前はもう来るな。

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頂いてきたサゴシは、予定通り刺身にして食べた。大変美味だった。
しかし盛り付けが美味しそうに見えなかったので写真はない。

骨のまわりは焼いて食べた。何の味付けもせずに食べたが、とても美味しかった。サゴシって、こんなにおいしかったのね。

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ごちそうさまでした。次回は私が釣ったレポートを書けますように。


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