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轟京子のオタクがNIJIROCKに行きました。

にじさんじに所属するバーチャルライバー、轟京子を応援し始めて2年以上になる。明るくて性格が良く、何よりギャルである。それがいい。ギャルはいい。
服飾の専門学生としてデビューし、ライバーの衣装をデザインする配信や、チャー研やボーボボやサウスパークを語る配信を行ってきた。歌系の企画にも参加し、夏には力の入ったホラー配信も行ってきた。そのどれもが私にとっては魅力的であるのだが、デビューした時期があまりよくなかったせいもあってか、登録者数という点では伸び悩み、3D化が決定する10万人にも今年ようやく達した。

NIJIROCK NEXT BEATという3Dライブが行われるという告知を見た時、私は本当に嬉しかった。たとえそれが他のライバー達が持つ数字のおかげだとしても、本当に嬉しかった。
にじロックはにじさんじのライバー7名によるリレー形式のロックフェス風配信で、定期的に行われてきた。メンバーには、Rain Dropsとしてメジャーデビューしているジョー・力一、緑仙、三枝明那や、高い歌唱力で人気の高い加賀美ハヤトや夢追翔、配信頻度は少ないながらアングラな人気を持つ雨森小夜といった人気ライバーたちがいる。
おそらく、彼らの力がなければ京子さんの姿をライブで見るのは難しかっただろう。

京子さんの配信の同接数はアベレージで250〜300人程度で、アーカイブの再生数も4桁にとどまることが多い。数字理論を持ち出すつもりはないが、やはり他の方々と比べると少なくはなる。リアルイベントを行っても参加するファンの数は多く見込めないはずだ。
事実、私はぴあアリーナMMで京子さんのファンを見かけることはできなかった。私の両隣には三枝さんのファンが座り、前方には夢追さんと加賀美さんのファンが座っていた。会場内では雨森さんと同じ格好をした女性や、緑さんや力一さんと同じ髪色の方々がいた。
そんな中、一目見てわかる京子さんのファンを見つけることが、私にはできなかった。

人気のライバーが多数出演する上に、チケットは抽選制。きっと、このライブに来られる京子さんのファンは多くないだろうということは、大方予想ができていた。
その分、会場に来られない京子さんのファンの分まで、彼女のことを応援しなくてはならないという使命感のようなものを、席につきながら感じていた。

スクリーンに映っていた事前番組が終了して、影ナレが流れる。

会場の照明が落ちる。

ドラムが鳴る。

ベースが鳴る。

ギターが鳴る。

ライブが始まる。

ステージにいきなり7名の姿が映し出される。
その一番左側に轟京子がいた。

轟京子が、いた。

轟京子は存在した。確かに私の目の前に彼女は存在していた。動き、歌い、彼女は、確かに存在していた。

1曲目のSalamander、2曲目のフルドライブと、立て続けに彼女は歌った。

私は泣いた。

この2年間、たくさんのにじさんじやその他の箱のバーチャルタレント達が3D化するのを見てきた。初配信をリアタイで見ていた人たちがどんどん3Dになっていくのを見てきた。ライブで、イベントで動く姿を見てきた。
その度、京子さんはまだなのにな、という思いが強まっていっていた。

私は半ば京子さんの3D化を諦めていた。
それどころか、今年の春で引退するのではないかとも思っていた。
今年の春、京子さんは専門学校を卒業して、就職することになった。その時点ではまだ登録者数は7万人ほどだったように思う。正直、もうにじさんじで10万人を超えていないライバーの方が珍しいような時代になっている中で、この数字はあまりにも少なかった。
だから、無理をして配信を続けるのではなく、タイミングもいいことだし、いっそここで引退して自身の生活に注力しても、それが彼女のためになるのであればそれがいいと思っていた。京子さんと同じくらいの時期にデビューしたライバー達が次々と引退して行くのを見ていたし、十分その覚悟もできていた。

しかし、京子さんは配信をやめなかった。

京子さんは社会人になり、配信頻度は少なくなった。パソコンも壊れた。そんな中で上げた全身タイツの実写動画がバズり、登録者数が10万人を超えた。
いや、全身タイツ実写動画でかよ。
でも、なんとなくこんな動画で10万人を達成するのも京子さんらしいと思った。
そして、これも社会人になっても活動を続けると決めた彼女自身の選択によって達したものに違いなかった。

しかし、登録者数は増えど同接数はあまり変わっていなかった。数字だけで判断するのは良くないが、コメント欄にいる顔ぶれもあまり変化がなく、10万人というのもただバズった動画だけを見てとりあえず登録したという人たちばかりで、彼女のファンというものはそこまで増えてはいないのではないかと思っていた。

だから不安だった。彼女のステージが始まったとして、どれだけの人が彼女を応援してくれるだろうか。
激しい抽選争いの中、きっとあの同接300人程度の中から10人も来ることができればいい方だろう。でも、会場は5000人規模だ。そのうちの10人なんて、少なすぎるのではないか……。
だから、先述の通り、私は必死に応援しなければという使命感にも似た感情を持ちながら、京子さんのステージを待っていた。

しかし、そんな杞憂はあまりにも簡単に打ち砕かれる。

トップバッターをつとめた三枝さんの次、2人目の出演者として京子さんがステージに上がる。
その瞬間、彼女を応援する色であるピンク色の光が会場を覆い尽くす。

さっきまで隣で三枝さんを必死に応援していた2人も、夢追さんや加賀美さんのファンである2人も、誰も彼も皆、ピンク色のペンライトを振り、京子さんに無言の声援を送る。

私は泣いた。

これが君のしてきたことの結果だ。
確かにこのステージに立てたのは他のライバーたちの人気によるところも大きいだろう。しかし、君が今このステージに立っているのは、ピンク色の光を一身に浴びているのは、すべて君のしてきたことの結果だ。
京子さんが最推しであるとか、京子さんを特に応援しにきたと言う人は、もしかしたらこの観客席では少ないかもしれない。しかし、この会場を埋め尽くすピンク色の光が、今ステージに立っている君を、今この瞬間、観客全員が全力を持って応援している証左だ。
そしてその光の中で、君は本当に楽しそうだった。嬉しそうだった。だから、私も楽しかった。嬉しかった。

足跡、緊張気味のMC、感情のピクセル。

披露したのは2曲だけだったけれど、ずっと脳にあのステージが焼き付いて離れない。

バーチャルタレントのライブというのは、単にスクリーンに映し出されるものを見せられているに過ぎないという意見もある。

でも、あれは、私にとってはそんな程度のものじゃなかった。
ただのスクリーンに映し出された映像なんかじゃなかった。

初めて見る歩いている姿。話す時のちょっとした仕草。MCで他のライバー達とふざけている時の動き。会場の拍手に驚きながらも嬉しんでいる様子。
どれも初めて見るはずなのに、それは私が思い描いていた彼女の動きに重なる。

確かに轟京子は存在した。

そして、その実在する轟京子を、5000人もの人間が、そしてこのライブを見ているであろうもっとたくさんの人間が、一心に応援している。

私は泣いた。

心のどこかで諦めていながら、心のどこかで期待していた光景がそこにはあった。

申し訳のないことに、今まで私は彼女にほとんど期待というものができていなかった。登録者数が少ない現状を見て、ライブに出られなくても仕方ないとか、3Dになれなくても仕方ないとか、引退してしまっても仕方ないとか、諦めに似た気持ちを持ちながら応援していた。
しかしそれは心のうちでそうなって欲しい、ならないで欲しいと期待しているからこそであって、その期待が叶わなかったときのことを思い、裏切られたくないという私の臆病な精神から、私自身が諦めの感情で塗りつぶしていたものに違いなかった。

君はいつか、「私たちが見たいものを見せたい、やりたい」と言っていた。まさしく、このライブがそれだった。これは私が君に見た淡い夢であり、君が私に見せた確かな現実だ。

これから先、私は君に期待してしまうだろう。でも、それはきっともう裏切られることはない。そんな気がしている。

これからもたくさんライブに出て欲しい。早く3Dお披露目配信をして欲しい。引退などせずに、ずっとサウスパークやチャー研について話し続けていて欲しい。そして、そんな期待をぶち破るほどの何かをしてくれるのではないかという期待もしている。

本当にいいステージだった。

この景色を見せてくれてありがとう。

またどこかで、君の歌う姿を見ることができるなら、きっと私は幸せだろう。


もちろん、京子さん以外のステージもどれも良いもので、初めてライブというものに行ったが、十二分に楽しむことができた。
特に終盤のぶっ生き返すとBABY BABYの流れは高校生のころよく聞いていて、カラオケで友達と一緒に歌っていたのを思い出して、思い出補正もあるのだろうが、とてつもない感情の昂りがあった。
ライブ後しばらく余韻に浸り、そして京子さんのステージを思い出して、泣いた。

ライバーの皆さん、生バンドの皆さん、スタッフや運営の皆さん、お疲れ様でした。
そして、本当にありがとう。



でも雨森さんとイチャイチャしてたピエロのジジイは本当にくたばれ。