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【短編小説】好きなだけ美味いものを②

「あなたの顔なんて見たくない」
そう言われて彼女にかけられたキャラメルフラペチーノは640円。少しだけ減ってるから460円位のフラペチーノ。

何故、こんな事になったかと言うと…。

----10分前

「私好きな人出来た、別れたい」
と彼女が切り出してきたのが事の始まり。
「そ、そうなんだ。いつから?」と聞くと
「半年前から会社の人と…」
と、もにょもにょ答える彼女。

…半年も前からか。
僕と手を繋いだり、抱き合ったりしていた彼女は
その時も違う男の事を考えていたんだろうか。

そう思うと腹が立ち、僕は彼女を責めた。

「二股かけてたってことだよな、結局僕の事も、別の男の子事も対して好きじゃないだよ君は。自分を可愛がってくれれば誰でも良いんだ。」

「いっつも正義感振りかざしてるけど、今やってる事って悪役じゃない?」

と言った所で冒頭の台詞。
「あなたの顔なんて見たくない。」
からのバシャァァァッ。

顔を真っ赤にして、店を乱暴に出ていく彼女とビシャビシャどろどろの僕。どんなワンシーンだよ。

家に帰宅し、シャワーを浴びソファにどかりと座る。ああ、僕は言い過ぎてしまった。冷静になるのに時間がかかった。

自分に魅力が無かっただけで、彼女は悪くない。半年も黙っていたのも、僕を傷つけたくなかったのかもしれない。…いや、半年はやはり酷いな。

好きだったから、手離したくなくて威圧するような態度を取ってしまった。いつになったら素直な気持ちをそのまま伝えられるようになるんだろう。情けなくてたまらない。

キャラメルフラペチーノ640円。
僕が奢ったキャラメルフラペチーノが、あんな形で帰ってくるなんて。
640円なら、大盛りの牛丼が食べられるな。
ハンバーガーのセットだって、近所のラーメン屋なら炒飯セットも食べられる。

ぐうぅ〜〜。
腹の虫が鳴いた。

そういえば、彼女と付き合ってからいつも星3.5以上を探してはそこで飯を食べていた。
見た目も綺麗で、女性が喜びそうな店をピックアップしていた。

1人の時は、実家からやたらと野菜が送られてくるので消化する為に野菜炒めばかり食べていた。

ジャンクな飯が食べたい!!

濡れた頭をタオルで適当に拭き、首のよれたTシャツを着て、財布と携帯だけポッケに突っ込んで外に出た。

歩いて4分、着いたのは牛丼チェーン店。この店はどの牛丼を頼んでも味噌汁が付くから超お得だ。

「すみません、牛丼の大盛りで生卵トッピングで汁だくでお願いします。」

「かしこまりました!」

一人ふらっとカウンターの席でご飯を食べるって、昔は大人みたいでワクワクしたよな。周りも
1人で食べてる男性客が多い。

「お待たせいたしました!」

トンと置かれた僕の牛丼。汁の甘い匂いがたまらないな。白い湯気が熱さを物語る、思わず唾を飲んだ。

まずは、何もかけずに1口。箸で掴めるだけ大量の肉と米を口に入れる。肉の油と米が流れていく。米って美味いな。何味?と聞かれてもよく分からんが、米美味い。

汁に浸った米の美味いこと…。
おっといけない、全部平らげてしまう前に次は紅しょうがをドサリと乗せる。
肉の油をサッパリさせてくれる。紅しょうがの赤色が、食欲を増させる。塩っぱさと少しの辛みが、牛丼にベストマッチする!

大盛り牛丼も残り3分の1。よし、生卵を入れよう。

コンコンと殻にヒビを入れ、パカッと開く。
牛丼の上に生卵が…茶色と黄色のコントラストに思わず胸が高鳴る!!

3に続きます→→→

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