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Fukushima Waterと言い出した 共産党の汚染水扇動


──汚染魚の次はFukushima Waterだ。こんな蔑視と差別が共産党の風評加害マニュアルでは許されているらしい。批判しないなら、報道機関も同じ穴の狢である。

お魚さんはダメでもFukushima Waterはヨシ

 9月16日、日本共産党宮城県委員会に属するすげの直子市議、花木則彰元市議、金子もとる県議(以下JCP仙台青葉)が、処理水放出については9日ぶりに「海洋放出に反対します」と幼児の写真を使用してX(ツイッター)に投稿した。

JCP仙台青葉のXアカウントが投稿した放出反対の主張

 ところが2時間程度で消去され、数時間後に画像内のセリフが差し替えられて再投稿された。

放出反対の主張 差し替え版

 画像内の幼児口調の語りから「お魚さんはいいの?」が消え、論旨そのものが「当事者の理解を得たか否か」に変わっている。急な変更で間に合わなかったらしく、幼児が口にするはずのない「当事者」「理解」「処分」などの熟語が生々しく使用されている。
 いったい何があったのか。
 共産党中央が党内に通達した「汚染魚」使用厳禁の指示に「お魚さんはいいの?」が抵触して、決定事項に従っていないと党関係者から添削されたのだ。
 いっぽう9月8日にポストされた「Stop Fukushima Water Release Now」と書かれた画像は、添削されることも削除が求められることもなく放置されている。

9月8日の投稿

 つまり「汚染水」を「Fukushima Water」と言い換えるのは、党の見解と方針にかなっているということになる。「Fukushima Water」を和訳すれば「福島水」だ。こんな造語までするのは、福島県と漁業関係者を蔑視して、蔑視によって発生する差別を揺るがし難いものにしようとする意図があるからだ。
 この一連のできごとは、共産党がとんでもない風評加害政党で、差別心剥き出しのヘイト政党であることを端的に表している。

風評加害マニュアルを作成した共産党

 JCP仙台青葉が「お魚さん」と投稿したり、この投稿を日本共産党の関係者が添削して再投稿を許したドタバタ劇の背景に、「汚染水キャンペーン」を立て直さざるを得なくなった同党ならではの事情がある。
 9月7日に村井あけみ氏がXで「汚染魚」と発言して批判が殺到した。これを受けて党中央が関係者に向けて、安易に「汚染水」発言をしないよう指示を飛ばした。「撃ち方やめ」の指示を受けて、議員たちは「汚染水」について語るのを一斉にやめた。
 11日に小池晃書記局長は会見で「汚染魚はだめだが汚染水は許される」と党の公式見解をあきらかにした。だがどのように表現したらよいのか党関係者や議員らにはわからず、下手なことを言えば村井氏なみに叱責されたり公認が取り消されかねないと党内は及び腰になった。こうしたなかふじしまともこ氏だけがXで「汚染水」放出反対を主張し続けた。
 「汚染水」という言葉を不自然なくらい避けていたことから、ふじしま氏にも党の指示が及んでいたのはまちがいない。しかし彼女はれいわ新選組支持者から党員になったばかりの市議で、党中央が出す指示の重さと真意を理解できなかった。12日の発言以降14日の言い訳を残して沈黙したのは、市議会の会期中で忙しいためではなく「勝手に喋るな」ときつく上層部から指導されたからだろう。
 こうしたなか日本共産党の機関紙しんぶん赤旗は、9月16日に「福島第一原発 汚染水問題どこに」と題する解説記事を掲載した。
 内容は9月14日に志位和夫委員長がラジオ日本に出演して語ったものと同じで、ALPS処理水を強引に「汚染水」と呼ぶための根拠が説明されている。

2023年9月16日に「福島第一原発 汚染水(アルプス処理水)問題どこに」 しんぶん赤旗

 「汚染水問題どこに」と紙面1ページの大半をさいた解説は、風評加害再開を指示する「撃ち方はじめ」の合図といえる。「汚染魚」発言の失敗を踏まえ、ふじしま氏のような暴走発言を抑止するため、党公認の風評加害マニュアルがつくられたのだ。冒頭で紹介したJCP仙台青葉のポストへの添削は、この志位氏公認のマニュアルをもとに行われたのである。

共産党が怯えたわけ

 共産党が「汚染水」の主張に神経質な態度を取るのは、「強い怯えのせい」と共産党の党員をやめたばかりの人物が指摘する。
 村井あけみ氏が[どうぞ、もっとしっかり汚染魚を食べて、10年後の健康状態をお知らせください。]とXで発言した直後から、賛否ともども激しく意見が飛び交った。
 このときいつものなら「汚染水放出反対」の論陣を張る報道機関が、「汚染魚」発言の翌日になっても櫻井よしこ氏や国家基本問題研究所を牽制する報道を行わなかった。しかも黙殺されただけでなく、この話題を取り上げた記事は村井氏を批判する色彩を帯びていた。
 しんぶん赤旗の発行部数は日刊紙約20万部、日曜版100万部とされている。「原発存続反対」の立場から「汚染水放出反対」を唱える朝日新聞の発行部数は約430万部、毎日新聞は約193万部、東京新聞は約40万部で、これらの合算とWEB版のページビューがなければ、共産党の主張は都合よく世の中に広がらない。このため村井氏と共産党の悪評だけが世の中に溢れることになった。
 原発事故以来のできごととしては、本年2月の松竹伸幸氏の除名処分でも共産党を擁護する報道がなく、同党の印象は致命的なまでに傷ついて未だに回復していない。
 原発存続を反対する報道機関から下駄をはかせてもらっていた共産党にとって、櫻井よしこ氏や国家基本問題研究所への牽制記事さえ書かれなかったことはかなりショッキングなできごとだったのだ。

風評加害発生回路と報道機関

 村井氏の「汚染魚」発言をめぐるできごとから、報道機関が「風評のソース」を取り上げずに黙殺したり、積極的に批判すれば「風評被害」が発生しないことがあきらかになった。
 3月に開催された東日本大震災・原子力災害学術研究集会で、筆者は「風評加害」の発生に必要な因子として報道・政治家/活動家・不安層を挙げ、三者がかたちづくる三つ巴になった「風評加害の発生回路」を発表した(図1)。福島県の産品が忌避されたり、不妊や奇形やがん発症といった偏見を生じさせた風評被害は、三つ巴の循環によって生み出されたのである。
 今回の「汚染魚」発言では、報道が三つ巴の循環を遮断し、批判的論調でさえあったことで、一般層が「食べて応援」を実行し「共産党への批判」を強めるに至った(図2)。

図1 風評加害の発生回路
図2 

 なかなか浸透しなかった「風評加害の発生回路」という考え方が、「汚染魚」をめぐる一連のできごとによって多くの人に実感されたはずだ。
 「風評」は漠然と生まれて、いつの間にか被害をもたらすものではない。風評被害と風評加害は一対のものである。発生源がなんであれ、「風評加害」は報道機関の加担なくしては成立しない。報道機関は「風評加害」を未然に止めることができる。「風評被害の発生が懸念される」と報道が語るとき、批判が伴わないなら加害に加担していることを意味する。
 報道機関は「Fukushima Water」を批判できるだろうか。できないなら、彼らは共産党らと同じ穴の狢の差別主義者ということになる。


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