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ソーラー検討中の社内担当者向け資料(後編);EPCと交渉

前回の記事では、ソーラー導入する際に検討すべきことについて実際の体験を元に解説しましたが、今回はその次のステップである「EPCとの交渉」について同じように解説します。前回の記事は下記からご参照ください。

さて、EPC会社との打ち合わせを行い、実際の屋根もEPCと共に確認し、事前検討事項もほとんど検討し終わったら、いよいよEPCから提案書をもらう段階です。

発電量シミュレーションの精査

提案書をもらった段階で必ず精査すべきなのが、この発電量シミュレーション結果の精査です。なぜならば、この発電量自体がそのまま投資回収年数に影響するためです。

ほとんどのEPC会社は、発電量のシミュレーションの際にPVsystというソフトウェアを使用します。このソフトウェア上でソーラーシステムに関するパラメーターを入力することで、そのソーラーシステムがどれくらい発電するかを試算することができるのです。(下記記事は参考まで)

僕含め、ほとんどの社内担当者がソーラーシステムに関するテクニカルな知識は持ち合わせていないと思うので、それでもなんとなくシミュレーション結果を精査できる簡易的な方法を紹介します。

今回、Pizza 4P's Xuan Thuy店に導入したシステムのPVsystシミュレーションはEPC業者とのNDAもあるので、別の例を用いて解説します。

まず見るべき数値はこの一点。年間の発電量(下記の赤線で囲った部分)です。

これが実際に一年間でどれくらいの電力が発電されるか、という試算結果です。この画像の例ですと、年間39.75MWhの発電となります。

この発電量に1kWhあたりの電気代を乗じると、実際にどれくらいの電気代削減になるかが計算でき、投資回収年数もわかります。単純です。

じゃあ、本当にこの数値が正しいの??という部分についてどう考えるかというと、その右に書いてあるSpecific prod.という数値を見ます。

先ほど見た年間発電量が、このソーラーシステム全体で合計どれくらいの発電量になるか、という数値であるのに対し、こちらのSpecific prod.はこのシステム1Kwpあたり換算でどれくらいの発電量か、という数値です。

もう少し説明しますと、今回導入するソーラーの規模は、この例の場合ですと29.6kWpと書いてあります。(下記の赤で囲った箇所参照)

つまり、29.6kWpの規模のソーラーシステム。そして、Specific prod.とは、年間発電量(39.75MWh)をこのソーラーシステムの規模(29.6kWp)で割った数値となります。

39,750kWh ÷ 29.6kWp = 1,342.9kWh

さて、このSpecific prod.は非常に参考になる数値です。なぜならば、参考程度ですが自分でも比較できる指標があるからです。例えばGlobal Solar Atlasは、世界中のどこでも、ソーラー1kWpあたり大体どれくらいの発電量が見込めるか、がすぐにわかります。

例えば、僕の住むホーチミンですと、Specific photovoltaic power output(下記の青字になっている箇所)として1,398kWh/kWpと出てきました。

年間発電量などのデータも見ることができます。

しかし、このGlobal Solar Atlas上の数値はあくまでも概算ですので、参考程度です。

このGlobal Solar Atlas上の数値よりも、EPCから出てきたPVsyst上の数値があまりにも大きかったり、ほとんどロスが考慮されていなさそうであれば、その際は要チェックです。

発電量を補償してもらう

とは言っても、上記の発電量シミュレーションを精査したところで、こちらはソーラーに関する専門的な知識もないし、EPC会社に「これはこういうものなんだ!」言いくるめられてしまうこともありますよね。

EPC会社からしたら「こんなに発電量があるから、これだけ電気代下がりますよ!」と言えた方が良いですからね。けど、実際にそれほど発電量が見込めなかったら嫌ですよね。

そういう際は、発電量の試算結果にEPC会社にコミットしてもらう方法があります。

もし仮に、実際の発電量がその数値を下回った場合には、EPC会社にその差額分を返金してもらおう、ということです。

先ほどの例を使うと、Specific prod.が1,343kWhと書いてありますが、例えば実際に設置一年後に累計発電量を計算したところ1,100kWhしかなかった!という場合には、その差額243kWhに1kWhの電気代単価を乗じた金額を返金してね、という感じです。

こういった交渉ができることを知らない方もいるので、テキトーな試算結果を出されてしまうこともあります。しかし、この方法を知っているだけで、そういったリスクを下げることができます。

Pizza 4P's Xuan Thuy店の場合は、この補償について提案したところ、ある程度の幅(例えば、1,400kWh〜1,700kWh)を実際の発電想定範囲として、その下限(1,400kWh)を下回ったら、EPC会社が4Psへ差額分を補償、もしくは、その上限(1,700kWh)を超えたら、逆に4PsがEPC会社へ差額をボーナスとして支払う、という契約に落ち着きました。

価格交渉

価格については、前回の記事でも少し話しましたが、だいたいの業界コストの平均値が1kWpあたり10万円です。もちろん、ソーラーの規模、国や地域、バッテリーの有無、などによって価格は変わるのですが、おおよその目安としてこの数値を参照すると良いでしょう。

また基本ですが、2〜3社から相見積もりを取得して比較するのは必須ですね。価格だけでなく、発電量のシミュレーションや、提案書のクオリティ、発電量補償の条件といった比較においてもとても参考になります。

投資回収年数の試算

発電量のシミュレーション数値と、システムの見積り金額があれば、何年間で投資回収するか計算することができます。

参考までに、投資回収年数の計算テンプレを共有します。

解説&注意点
1)黄色セルが数値をインプットする箇所です。その他は数式が入っています。
2)自家消費型のソーラー設置を想定しています。売電となると、もう少しパラメータを追加する必要があると思います。
3)あくまでもテンプレですので、個々のプロジェクトに応じて修正しながら使ってください。
4)本テンプレ使用に際して、個別の質問は受け付けません。

かなりシンプルなフォーマットですが、小規模な事業体であれば、これくらいで十分かなと思います。

 

以上、EPCとの交渉についてでした。







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こんにちは。ベトナムのホーチミンに住んでます。Pizza 4P'sというレストランのサステナビリティ担当です。