見出し画像

サスマタは沖縄にあったのか

11月26日、東京上野の貴金属店で強盗未遂事件が発生した。ヘルメットをかぶり、バールのようなものを手にした3人組の男がショーケースのガラスを叩き割り商品を奪おうとした。すると、大柄な店員がサスマタを手にして強盗たちに対抗した。店員の反撃に驚いたのか、強盗たちは後退りして店の外に出た。店員も外に出ると、強盗たちが乗ってきた2台のオートバイをサスマタで殴り始めた。おそらくバイクをどうにかして取り戻したかったのであろう、強盗たちはしばらく逡巡していたが、サスマタを振り回す店員に圧倒されてオートバイをそのまま置いて逃走した。

事件の様子は一般人によって撮影され、上にあるように、その動画はニュースでも放送された。サスマタを手にして強盗に立ち向かった店員の姿は印象的でSNS上でも話題になった。また、事件後、サスマタにも注目が集まり、その売上が急増しているという。

ところで、サスマタとはそもそも何であろうか。

サスマタ(刺股)は、罪人を捕まえるための道具である。その歴史は室町時代にまでさかのぼり、江戸時代には捕道具とりどうぐとして広く使われていた。先端に二股の金具がついた棒で、犯人の首や胴体を拘束するのに用いる。長脚鑽さすまた琴柱棒ことじぼうとも呼ばれた。琴柱とは琴の弦を支える部品で、サスマタの金具部分と形が似ているからである。

弦を支える白い部分が琴柱

サスマタは銃のような飛び道具には非力だが、刃物や今回のバールのような武器には有効だから、今日でも利用されている。江戸時代には、サスマタのほかにも、突棒つきぼう袖搦そでがらみなどの捕具があり、サスマタと合わせて三道具みつどうぐと呼ばれた。

上から刺股、袖搦、突棒。於和歌山城、筆者撮影。

ここから先は

608字 / 2画像

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?