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ハエを箸で捕まえた本部朝基

以下の話は、東京大道館で本部朝基に師事した丸川謙二氏が語ったエピソードである。

昭和15(1940)年頃、丸川氏は宮本武蔵の映画を見に行った。それで、その映画の中で有名な宮本武蔵が箸でハエをつかまえるシーンがあった。映画を見終わったあと、丸川氏は本部朝基にそのシーンについて語った。

出典:Miyamoto Musashi scene

「師匠、宮本武蔵が箸でハエをつかまえていました。びっくりしました。さすがは達人ですね」
「そうか、それほど驚くことかね。それなら丸川君、君が一度やってみたまえ」

本部朝基にそう言われて、丸川氏は箸でハエをつかまえられるか試してみたが、やはりできなかった。それを見ていた本部朝基が、

「それなら、わたしがやってみよう」

と言って、やってみると、簡単に箸でハエをつかまえた。その光景を見て、丸川氏は「さすが師匠は達人だ」と感心したそうである。

また、別の機会にこんなことがあった。家の周りをうろついている野良猫がいて、丸川氏が近づいてつかまえようとすると、猫は警戒してすぐ逃げてしまう。しかし、本部朝基が近づくと猫は逃げずにそのままつかまえることができた。

丸川氏によると、本部朝基にはこういう不思議なところがあって、常人とは違う様子を何度も目撃したそうである。それで、丸川氏は口癖のように「師匠は不世出の人だ。あんな人はもう二度と現れない」と言っていた。

ちなみに、昭和15(1940)年には、片岡千恵蔵主演で、宮本武蔵の映画が3本上映されている。そのうちのいずれかに件のシーンがあるのかもしれない。

(語り手:丸川謙二、聞き手:本部朝正、平成6(1994)年7月24日)

出典:
「宮本武蔵と本部朝基」(アメブロ、2016年10月22日)。


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