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今話題のエフェクチュエーションとは?

前回、「伴走型、新事業共創サービス『エンゲルス』」についてご紹介しました。

DAOをベースとしたフラットな組織形態を活かした共創サービス。という言い方もできるのですが、組織論的にはティール組織やホラクラシーを踏襲しています。

特にホラクラシーでは「未来は予測可能であるという幻想を手放し、目の前のセンサーを頼りに組織をかじ取りしていく」ダイナミックステアリングという考え方が提唱されています。

今回の、エフェクチュエーションで提唱している「予測ではなくコントロールによって対処する」を見て、上述のダイナミックステアリングを想起しました。

不確実性の高い世の中、もはや精緻な予測などは不可能で、そこに膨大なリソースを割くよりも、まずは仮説を持って動き出し、そこで生じた局面に対し、知恵を絞り対処していく。

ティール組織やホラクラシーが組織面からの解決を図ろうとしているのに対し、エフェクチュエーションは思考様式/行動様式からのアプローチであると理解しました。

もう一つのキーワードが「コーゼーション(causation)からエフェクチュエーション(effectuation)へ」。コーゼーション(因果論)とは、予測可能である前提で精緻な予測を立て、ロジカルな打ち手や収益予測を提示していく為、聞き手のの納得感が高い。

「未来なんて誰も予測できないので、出たとこ勝負で対応します」という計画を経営会議に諮ったら、どうなるでしょうか?(笑)。

組織(特に大きな組織)でコンセンサスを得るには、どうしてもコーゼーション的アプローチに頼らざるを得ないというのが実情と思います。

一方、そもそも予測が不可能な現実社会に対して、「仮の予測に基づいた精緻でロジカルなプラン」にどういう意味があるのか?というジレンマ。

「ブラック・スワン」(ナシーム・ニコラス・タレブ著)の中で語られている、「理論に合わせて現実を作り変える」というリスクすら生じかねません。

世の中の構造は、複雑で、ランダムで、予測不能である。だから、どんなに高度な科学・数学・物理学を駆使しても、完璧な理論武装・モデル化は不可能である。

崇高な学者は、理論化・モデル化に没頭するあまり、さまざまな前提を張り巡らし、自分のモデルが機能するように、現実世界を作り変えてしまう

エフェクチュエーションがスタートアップ起業家の思考様式・行動様式の共通項から抽出したと言われると納得します。大人数のコンセンサスを必要としないスタートアップであるからこそ実現可能。

■エフェクチュエーション5つの原則

・手中の鳥の原則(Bird in Hand)
・許容可能な損失の原則(Affordable Loss)
・レモネードの原則(Lemonade)
・クレイジーキルトの原則(Crazy-Quilt)
・パイロットの原則(Pilot-in-the-plane)

繰り返しになりますが、精緻でロジカルな計画策定にリソースを割くのではなく、仮説を元に手持ちの札で行動を開始し、仲間・賛同者を増やしていく。そこで新たに生まれたものを計画に反映させ、精度を上げていく。

一見、都合が悪いと思えること(酸っぱいレモン)であっても、工夫して結果に繋げられないか考える(おいしいレモネード)。

出会いを大切にし、仲間との共鳴を通じて、自分一人では描けなかった完成形を目指す(パッチワークキルト)。完成形に必要なピースを埋めるのではなく(ジグゾーパズル)。

最後の「パイロットの原則」は、上述のダイナミックステアリングそのもの。常にコックピットに並ぶ計器を見ながら、臨機応変に操縦を行う。

このような思考様式に基づき、実践を重ねる起業家が成功を掴む。それでは、大企業はどうすれば良いのでしょうか?

「エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する5つの原則」の共著者である神戸大吉田准教授は、インタビュー記事の中で以下の様に解説されています。

コーゼーションがこれまで重視されてきた理由の一つは、社内外の利害関係者に説明する際にその方法が適しているからです。目的から逆算するコーゼーションの発想は、意思決定が合理的であることを主張しやすいのです。そのため、実際にはエフェクチュエーションで進めている取り組みを、コーゼーションに翻訳して伝えることが有効な場合もあるでしょう。

企業の中では立場上、エフェクチュエーションが許されず、コーゼーションで動かざるを得ない人もいると思います。その人たちとパートナーシップを組むためには、先ほどお話しした問いかけ(asking)を活用してコミュニケーションを取りながら、お互いの許容可能な範囲や大事にしていることを確認しつつ、双方にとって意味あるプロセスをつくっていく必要があります。

不確実性の高いVUCAの時代が、再び予測可能な世界に戻ることはなく、不可逆であることは誰の目にも明らかです。

組織論としてティールやホラクラシー、意識・行動様式としてエフェクチュエーションと、何が有効であるかは解明されつつあります。

まさに勇気を持って「新しい常識」への一歩が踏み出せるか。それこそが、この先の企業や組織の明暗を分けることになる。積極的にダイナミックステアリングの操縦桿を握れた者が新しい時代の勝者になる。

激動の時代において、挑戦者に伴走し、副操縦士(co-pilot)として一緒に操縦桿を握っていく。「エンゲルス」を通して実現したいのは、そんな未来。

<追記(11/28)>

エフェクチュエーシヨンとAIを駆使して人生を切り開くVUCAの時代を生き抜く処方箋。という視点で書かれた良記事を見つけたのでご紹介致します。

<追記(12/09)>

エフェクチュエーションの考え方に沿ったキャリア構築の実例がわかりやすく解説されたnote記事。

転勤妻の仲間とは、
「先が見通せないから一貫したキャリアがつくれないよね」
「転勤先で新しい仕事を始めたとしても、子供の預かり先とか生活インフラを整えることがまず大変。子供が環境にすぐなじむかもわからないし…」
なんていう不満をよく漏らしていました。
ひどい時には1年に満たない期間で引越しを余儀なくされたこともあったので、当時は本当に理不尽だと思っていました。

けれど、振り返ってみれば「転勤妻」であることは悪いことばかりではなかったのです。
というのも、転勤先で知り合う様々な人と一緒に、毎回手を変え品を変え一貫して子育て世代のウェルビーイング、キャリア形成に携わる企画をやっていました。

実は、私自身、エフェクチュエーション的に動いていたのです。


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