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Netflixアニメ「アーカイン」が物凄い!!映画「アキラ」の純粋進化系を見る思いだ。

Netflixで予告編を見て気になっていた「アーカイン」を見た。しかし、予告編をの数倍上を行くドラマに圧倒された。
もし予告編を見て気になった人は、内容的にネタバレは含まないが見てから読んでもらっても良い。というか、その方が良いかも。

予告編よりも密度の濃いドラマなんて初めてかもしれない。
まず、最初に掴まれたのはもちろん映像である。3Dでありながら絵画を思わせる画像で、何よりも細かいカット割りにもかかわらず、全てのカットのレイアウトが完璧!それを絶妙なカメラワークで見せていくのである。1話40分見るだけでドッと疲れるほどの息を呑む質量!

とにかくディテールの作りこみと色彩設計が美しい。そして、キャラクターの動きが素晴らしい。モーションキャプチャー的なリアル感にアニメならではケレン味もプラスされている。それに加えて表情が絶妙なのだ!

「アーカイン」はライアットゲームズの「リーグ・オブ・レジェンド」というゲームがベースになっている。その中のキャラクターの前日譚という位置づけだ。科学の力で繁栄を誇っているピルトーヴァーという都市と、そこの掃きだめと言われている地下都市ゾウン。そのゾウンに住むヴァイとパウダーという姉妹が内乱の引鉄となり、大きな時代の流れに翻弄されていくというストーリーだ。

ディズニーでもなければピクサーでもない、もちろんジャパニメーション的(ここではリミテッドアニメーションという意味で使ってます)な感じでもない。その割にはしっくりくる既視感もある。この感覚って何だろう?と思ったら、映画「アキラ」を見たときに感覚が近かった。
「アキラ」のネオ東京の色合いとロトスコーピングを多用したキャラクターの動き、世界観の作りこみといったものと「アーカイン」が共通する何かを感じるのだ。

「アーカイン」のアニメーション制作はパリに拠点を多くFortiche Production。フランスと言えばメビウスやエンキ・ビラルに代表されるバンド・デシネの国である。アキラの原作者であり監督の大友克洋もバンド・デシネの影響を少なからず受けているので、そこに起因するものかもしれない。
「アキラ」は制作費7億とも11億とも言われているが、公開時の興行成績は7億5千万だった事を考えると、こういった作品を続けることは体力的にも難しかったのかもしれない。それが30年以上たった今、わずかに残ったともしびが海外の作品に根付いて開花した感がある。
実際にライアットゲームズのクリエイティブディレクターのリンケ氏はDEADLINEの記事でこんなことを言っている「アニメーションには観客を完璧に作られた架空の世界に惹き込んできた実績があります。スタジオジブリや「君の名は」「アキラ」「カーボーイビバップ」のように」と語っています。

皮肉なことに、これだけ日本のアニメーションの影響を受けながら、世界的には「イカゲーム」を1位から引き下ろした作品として評価されているというのに、日本のNetflixチャートではなかなか上位には上がってこない。

確かに映像の密度は「イカゲーム」の数倍上を行っている。そして、ドラマとしてもかなり濃い人間模様を描き出している。それもキャラクターの演技力あってこそ。実はアニメを見て演技という事を意識するのは今まであまり無かった。それはアニメーターの描き上げたものという意識が根底にあったのかもしれないが、「アーカイン」に関してはホントに全てのキャラクターが実に良い芝居をしているのである。これは自然な演技というのとも違っていて、アニメでは実写映画的な自然な演技は物足りなく感じてしまうものだが、誇張表現されながらも絶妙なバランスで違和感ないものに仕上げている。モーションキャプチャーで動きのデータを取り、フェイシャルキャプチャーで表情のデータを取りながらも、アニメーターのアレンジが入っているのは言うまでもないが、それが上手すぎるのだ。そういったアニメーターも含めた演者の姿が垣間見れることで「演技」というニュアンスが色濃く出ているのだろう。

これはアクションシーンにも言えてて、実際の人間ではあり得ないようなアクションはアニメならではだが、それが重さや痛みを感じるアクションに仕上がっている。まあ、これもカメラワークとカット割りが素晴らしすぎる!

こういった映像を一瞬も見逃しくない作品は字幕ではなく吹き替えで見ることにしている。特にアニメーションに関しては吹き替えに抵抗が無かったのだが、回が進むごとにだんだんと違和感を感じ始めた。キャスティングが合って無いというわけではない。手堅い声優陣を集めてキャラクターにもぴったり合った声質をしている。特に主人公のうち一人、妹のパウダーは感情の機微が難しい役柄だが、それを丁寧に演じていて何度も泣きそうになった。

でも、なんだろう、この違和感は?と考えてみたら、声が演技しすぎているように感じるのだ。
それを実感したのは後半になって登場するフィンが出てきて確信に変わった。このフィンの声は楽曲も提供しているMIYAVIが演じている。実はこのキャラクターだけオリジナル(英語)も吹き替え(日本語)もMIYAVIが担当しているのだ。つまり、監督、もしくは日本での音響監督にあたる役割がキャスティングに関わっていると思われる。それに対して他の吹き替えのキャスティングは日本のスタッフに一任されているのは想像できる。

フィン(シーズン1後半で登場)

日本のアニメーションは悲しいことに、Netflixの世界公開に比べると少ない予算で制作を強いられることが多い状況なので、画の枚数も必然的に少なくなる。そうなってくると、それを補足するのが声優の声の演技力なのだ。出来る声優になればなるほど声に感情を乗せるテクニックを持っている、無意識にそうなってしまっている部分もあるかもしれない。それがこの細部まで綿密に描き込まれた「アーカイン」では表現過多に思えてしまうのだ。

劇場公開アニメーションとなると、声優ではなく普通の役者を起用するケースが多い。客寄せという意味も多分にあるのだろうが、予算を使って描写を丁寧に見せられることによって、俳優の演技の方が声優より合っているという判断に至るケースも少なくないように感じる。

しかし、そんなことは微差でしかなく「アーカイン」がアニメーション業界に大きな礎となったのは確かだ。

ヴァンとパウダーの姉妹の葛藤と成長に泣き、科学と権力という狭間に立つジェイスとビクターのドラマにも痺れる。その中でも、自分が惹かれたのは一番複雑なキャラクター、シルコだ。今シーズンの一番の敵役といってもいいシルコだが、このシルコの野望の裏には深い哲学があるように思えてくる。

シルコ(酷い男なのだがなぜか身近なものには信頼は厚い)

あと、特筆すべきは音楽だろう。前述のMIYAVIの描きおろしの曲も後半のクライマックスで効果的に使われるが、イマジン・ドラゴン、プシャ・T、そしてスティングなど錚々たるメンツがこの作品のために書き下ろしを提供しているという。だからか、多彩な顔ぶれの割にはストーリーに寄り添った一貫性が出ているのである。

ゾウンの中で実写のイマジンドラゴンとJIDの演奏するシーン観れるとは!
バーチャルプロダクションを探求している自分にとっては垂涎もののMV!
ちなみにオフィシャルの方のMVはイマジンドラゴンもアニメのキャラクターになって登場!

とにかくシーズン2の制作も決まったようだし、もう一度、字幕で見直してみようと思う。

そして、ここまで惹かれるんだったらゲーム「リーグオブレジェンド」もかなり面白いに違いない!と思って始めてみたが、全く面白さがわからない。マップ上でチマチマ動くチャンピオンと呼ばれるキャラクターに「アーカイン」の登場人物にあるような複雑さがあるようには全く思えないし、これをプレイしながら「アーカイン」のような世界観を想像できるほど自分は夢見がちな男じゃなかった。。。

あと、「アーカイン」には関係ないのですが、前述の声優でも登場し楽曲も提供しているMIYAVIのMVを、8年前に自分が撮影していたので、そのリンクも貼っておきます。撮影冥利に尽きるシンプルなMVで、MIYAVIの表現力が半端ないのが垣間見れます。

久しぶりに衝撃だったためにドラマのレビュー書いてしまった。
とにかく「アーカイン」は最近の中では必見のドラマシリーズです。

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