渡部 幹

マレーシア在住の研究者。サンウェイ大学、サンウェイビジネススクール教授、同スクール経営…

渡部 幹

マレーシア在住の研究者。サンウェイ大学、サンウェイビジネススクール教授、同スクール経営学部学部長。専門は、社会心理学、組織行動学、社会神経科学とそれらの周辺分野。

マガジン

最近の記事

WAKUWAKU留学フェアでいただいた質問への回答

先日「マレーシア・インターナショナルスクール ワクワク留学フェア2022」というオンラインイベントにて講演させていただきました。その際に多くの質問をいただいたのですが、時間内に答えられなかったご質問について、こちらで答えさせていただきます。 質問1 マレーシア留学では転校が多いと聞きますがその理由はなんだと思われますか?また親としてはIBを学んでほしいと考えていますが、子どもがまだ小さく(幼児で)大きくなってから途中で合う合わないが出てくることが予想されます。先程のお話です

    • 「あるある」のない文化でこそ、コミュ力は磨かれる

      家族で日本に戻ってきている。コロナ禍のため、3年ぶりの帰国となった。 子供たちはひさりぶりの帰国に大喜び。祖母を含む親戚たちにも会って、可愛がってもらい、楽しく過ごしている。 昨日のことだった。家族で妻の実家にお世話になっているのだが、義母が朝食を準備してくれ、その中に納豆が入っていた。11歳の次男はひきわり納豆が好物で、それを知っている義母が用意してくれたのだ。 次男はもちろん喜んで食べたのだが、面白いことがあった。 パックに入っている納豆から、からしとたれを取り出

      • 留学して身についたものBEST3:第1位 レジリエンス(または、生命力 笑)

        京都大学に赴任していた頃、これからアメリカの大学院に留学しようとする学生さんに質問を受けた。 「先生がアメリカ留学して、一番伸びた能力は何ですか?」 僕はしばらく考えて、 「生命力!」(笑)と答えた。以来、同じ質問にはその答えをしている。 生命力がつく、とは、簡単には潰れない、あきらめない、しぶとい、ということだ。最近になって、これはビジネスでよく言われている「レジリエンス」と同じだということに気づいた。レジリエンスとは、分野によって多少定義は違うものの、基本的に「折

        • 留学して身についたものBEST3:第2位コミュニケーション力

          前稿から留学して身についたものBEST3を書いている。第3位は「英語力」だった。 この項では第2位について書く。 第2位はコミュニケーション力(傾聴力)だ。英語力とは違う。 前稿で書いたように、もともと英語が苦手な僕は、留学という「自分を追い込む環境」に置かれて泣く思いを何年かして、やっとなんとか英語でコミュニケーションをとれるようになってきた。 しかし、発音は相変わらず日本語訛りだし、話すことを事前に準備していない場合には、まともに話せない。即興でのスピーチは、多分日

        WAKUWAKU留学フェアでいただいた質問への回答

        • 「あるある」のない文化でこそ、コミュ力は磨かれる

        • 留学して身についたものBEST3:第1位 レジリエンス(または、生命力 笑)

        • 留学して身についたものBEST3:第2位コミュニケーション力

        マガジン

        • 大学教育とキャリア
          0本

        記事

          留学して得たものBEST3ー第3位:英語力

          僕が留学したのは今から25年も前のことだ。博士号を取るためにUCLAの社会学部の大学院に入った。そこでほぼ5年過ごしたが、そこで自分は何を得たか、今になってやっと整理がついてきたように思う。 そのことについて少し書く。ただ、これはあくまで僕個人の経験からのものだ。他の方々に当てはまるかどうかはわからない。 今思えば、留学によって向上したものは3つあると思う。ひとつずつ順に紹介していきたい。 第3位:英語力 話は僕の高校時代まで遡る。 今でこそ日常的に英語を使って仕事

          留学して得たものBEST3ー第3位:英語力

          英語力より先に身に着けるべきこと

          前稿では、東大に入ってもなお英語力に不安があり、日本の英語教育にも不備を感じている学生さんからの質問に対し、僕がどう答えたかを述べた。 僕の答えは2つあり、ひとつは「国の教育制度に頼らず、自分で英語力を伸ばそうとする」こと、もうひとつは「英語力よりも、国際的なコミュニケーション力をつけるべし」だった。 今日は後者について書きたい。 極論になってしまうが、僕は、個人が留学する理由や、親が子供たちを留学させる一番の理由は「英語(外国語)習得」であってはいけないと思っている。

          英語力より先に身に着けるべきこと

          実践的英語を「自分で学ぶべき」理由

          先日、東京大学でゲストスピーカーとして、簡単な講義をさせていただく機会があった。もちろんオンラインでだ。英語の授業の一環なので、僕が英語で20-30分程度の講義を行い、その後学生さんたちから質問を受け付けるというものだった。その質疑応答もすべて英語だ。 講義では、日本人が思っている以上に、日本の「情報ガラパゴス化」が進んでいるという話を簡単にしたのだが、流石は東京大学の学生さんで、皆すぐにポイントをつかんでくれ、様々な質問をいただいた。 そのときにある一人の学生さんからい

          実践的英語を「自分で学ぶべき」理由

          失敗しない親子留学のために

          失敗しない留学のために 文筆家で、自らもご長男さんを留学させてきた野本響子さんも書いているように、留学に正解はない。その時々でベターだと思われる決定をするしかない。例えばマレーシアでは日本よりも、圧倒的に教育制度の種類が多いので、何が本当に自分の子供を伸ばすのによい教育かを考えるのは大変だ。 僕には、今まで書いてきた小学生の姉弟の他に、実はもう一人、彼らよりずっと年上の息子がいる。彼は日本で生まれ育ち、日本のインターナショナルスクールを卒業し、カナダの大学に留学した。卒業

          失敗しない親子留学のために

          国際バカロレア留学の成功の秘訣(と僕が思うもの)ー3(クリティカルシンキング実践編)

          前の稿では、子供のIB留学の成功のためには、親がIB学習者であろうとすることが重要で、そのためにはクリティカルシンキングを鍛えることが必要だ書いた。 ここではそのために何をしたらいいか、実践的なことを書こうと思う。以下に書くことは僕の経験から得たものなので、すべての人に当てはまるかどうかはわからない。ただ、確信を持って言えることがひとつだけある。 「対話」によってクリティカルシンキングは鍛えられるという点だ。実は対話しないで自分でクリティカルシンキングできる人もいるし、そ

          国際バカロレア留学の成功の秘訣(と僕が思うもの)ー3(クリティカルシンキング実践編)

          国際バカロレア留学の成功の秘訣(と僕が思うもの)ー2(クリティカルシンキング理論編)

          前の稿では、子供の国際IB留学の成功のためには、先生やクラスメートの親と情報交換をしっかりすることが必要と書いた。 ここではもうひとつの重要事項、親自身がIB学習者になる(あるいはなろうとする)ことについて書く。 IBプログラムで掲げる学習者像は以下の10個だ。 ①探究する人 ②知識のある人 ③考える人 ④コミュニケーションができる人 ⑤信念をもつ人 ⑥心を開く人 ⑦思いやりのある人 ⑧挑戦する人 ⑨バランスのとれた人 ⑩振り返りができる人 この中の多くは、日本の教育で

          国際バカロレア留学の成功の秘訣(と僕が思うもの)ー2(クリティカルシンキング理論編)

          国際バカロレア留学の成功の秘訣(と僕が思うもの)

          前の原稿で、子供をIBプログラムに送るには親もIB修行するつもりで、と書いた。 その中で最も重要なことは2つあると思っている。 ① 先生やクラスメートの親と情報交換をしっかりすること② 親自身がIB学習者の資質を身につける(あるいはつけようとする)ことことの2点だ。 今日は、そのうちのひとつ「先生やクラスメートの親と情報交換をしっかりすること」について書く。 その前に、娘がIBスクールに入学することになったいきさつから話したいと思う。 僕がマレーシアに赴任した当時、

          国際バカロレア留学の成功の秘訣(と僕が思うもの)

          国際バカロレア教育の難点

          これまで、3つの記事で、僕の考える国際バカロレア(以下IB)教育の本質と優れた点を紹介してきた。 でも、もちろん問題もある。2人の子供にIB教育を受けさせている親として自分が体験している。ここでは、IB教育にどんな問題があり、どう克服するかを実体験をもとにご紹介したい。 僕が思うにIBの問題は大きく3つある。 1:親の負担が大きい子供にIB教育を受けさせて一番驚いたのは、親がやらねばならないことが多い、ということだ。 まず、子供たちの通う学校では、イベントが多い。コロ

          国際バカロレア教育の難点

          Part 3:国際バカロレア教育が日本に必要な本当の理由

          以前書いたように、経済界からの要望を受け、文部科学省は国際バカロレア(以下IB)教育の普及を推進している。 その推進とは基本的に 1:IB教育校(小学校―高校)を増やすこと 2:IB修了者が優遇される国内大学を増やすこと の2つだ。だが、それでいいのだろうか。僕はダメだと思う。もっと根本的なところから制度を変えていかなくてはならない。 僕は文科省がダメだといっているわけではない。官僚としてできることは、やっていると思う。そして彼らもこれが根本的な推進策ではないことを

          Part 3:国際バカロレア教育が日本に必要な本当の理由

          Part 2 国際バカロレア教育が日本に必要な本当の理由

          前に書いた国際バカロレアの記事の中で、IB教育ではグループワークを重視すると述べた。 日本では大学に入るまでグループ単位でアウトプットを出すのを、重視しない。小学校や中学校で班決めをして何かを決めるということはやるが、それは授業の課題として自分たちの成果を自分たちで出し、それが評価される、というアクティビティとは根本的に取り組み方が違う。 大抵は、大学に入って初めていくつかの授業の中で、グループプレゼンテーションを課されたり、グループでの実習が入る。だがそれは教える先生個

          Part 2 国際バカロレア教育が日本に必要な本当の理由

          Part 1: 国際バカロレア教育が日本に必要な本当の理由

          少し前の記事で、グローバル人材の育成のために、日本の大学プログラムは制度として機能していない、と書いた。そしてそれを変えるためには、人ではなく、制度を変えるべきだとも書いた。 このことは、僕が言うまでもなく、少し国際経験のある人ならば、多くの人がすでに感じていることだと思う。もちろん、日本の教育の中枢である文部科学省でも、すでにこのことについて議論されている。その中で、グローバル人材を育てるための有力なプログラムのひとつとして、文科省が推進しているのが、国際バカロレア(In

          Part 1: 国際バカロレア教育が日本に必要な本当の理由

          多様性の国のビジネス飯

          今話題の『半沢直樹』でも頻繁に出てくるが、食事をしながらビジネスパートナーと話をする、というのは古今東西どこでも行われる。僕もコロナ前には、同僚や学生と昼食をともにすることは多かったし、独身の頃はよく飲みにもいった。 マレーシアでも同様だ。だが、さまざまな民族と宗教が共存するマレーシアでは、それはもっと難しくなる。 多くの人はご存知だと思うが、マレーシアはムスリム国家で、主にマレー系、インド系、中華系、その他少数、という民族構成である。人口全体の半分以上を占めるマレー人は

          多様性の国のビジネス飯