見出し画像

『Infernax』レビュー「俺たちのコナミ愛を受け取れ!まさかのドラキュラIIリスペクト!」

結論

 昔のドラキュラシリーズのようなレトロな2Dプラットフォーマー好き、もしくはふざけたバカゲー好きにはおすすめ。一方、アクションゲームとしては大味なので、その辺りのジャンルに全く思い入れがない場合は特別にプッシュはできない作品です。

長所

(1)溢れるコナミ愛とまさかのドラキュラIIリスペクトぶりには驚愕

 恐らくオールドゲーマー以外にはピンとこないと思われますが、本作は定期的に出てくる『月下の夜想曲』フォロワーのメトロヴァニアではなく、『ドラキュラII』のフォロワーです。いや、フォロワーというよりはオマージュ作品と言った方が正しいでしょうか。それでも新しいスキルや魔法を覚えて道を切り開く要素や、ライフやMPなどのアップグレード要素は一般的なメトロヴァニアと同様ですので、遊んでいてすぐに手に馴染む作りではあります。

 特徴的なのが、ビジュアルやBGMのスタイル。FC時代を彷彿させるフォントで構成されたUIやテキスト、8bitが炸裂したピコピコ音楽、ボス戦の前に一枚絵でカットシーンを挿入する、主人公の各種モーションなど、どれを取っても昔のドラキュラに雰囲気を寄せているのがすぐわかります。本作をプレイすれば昔からゲームを長くプレイしているオールドゲーマーは涙を流して、その手に握りしめたコントローラを濡らすことでしょう。

 ちなみにタイトル画面でオールドゲーマーお馴染みのコナミコマンドを入力すると、実績が解除されて主人公がマシンガン所持の魂斗羅スタイルになるのは笑いました(既視感のある決めポーズやジャンプがローリング体勢なのも笑いどころ)。「いやいや、あんたらどんだけコナミが好きやねん(笑)」となるのは必至です。

(2)実は押し付けがましくなく、遊びやすさを大切にした作り

 本作は前述したように『ドラキュラII』リスペクトゲームです。よってプレイを始めるとすぐにその難易度の高さに絶望する人がほとんどでしょう。ダクソの大ヒット以降、高難易度の死にゲーがそれなりに流行っているとはいえ、最近のゲームは非常に遊びやすい作りのものが多いので、それに慣れてしまっているとなおさらです。私も序盤のなんでもない雑魚に何回も殺されました。

 しかし、ゲームモードは高難易度のクラシックモードと死んでもペナルティを抑えたカジュアルモードの二つが用意されていますし、装備をしっかり整えて、主人公をアップグレードすれば違うゲームかと思えるほど難易度は下がります。開発陣は熱心なオールドゲーム好きだと思われますが、ライト層にオールドゲーム由来の高難易度を押し付けず、気楽にクリアできるように調整した姿勢は素晴らしいと感じました。

 また、主人公をアップグレードしても嫌らしいジャンプギミックに死にまくると思いますが、それもチートコードで装備できるジェットパックを使えばかなりストレスが軽減されます。序盤は難しくてやる気をなくす人も多いでしょうが、その序盤さえ乗り越えればめちゃくちゃ遊びやすいカジュアルなゲームになるので、是非序盤でゲームを投げずに頑張っていただきたいところです。

(3)レトロゲームリスペクトのわりにやけにこだわったグロテスク表現

 本作は何故かグロテスク表現にやたらこだわりがあります。敵を武器で殴れば返り血が操作キャラに付きますし、マップを移動するたびに敵に人間が殺されている演出が多用され、背景では張りつけにされた死体なども書き込まれています。さらに主人公が敵に殺されると殺され方の演出が敵によって変わるという『DEAD SPACE』に通ずる、何故か殺され方を作り込んでしまう斜め上な美学も披露してきます。

 まあこんなことを書いてますが、本作のグロさはどちらかというと爽やかなグロさという感じに仕上げてあり、例えると『北斗の拳』みたいなものをイメージしてもらえるとわかりやすいです。秘孔を突いて頭がバーンとなって「ひでぶっ」みたいな。そんな感じのなんとなく笑ってしまうような後味の良い爽やかなグロさは本作の尊い部分であり、光る魅力の一つではないでしょうか。

(4)マルチエンディングで展開が変わる

 本作は主人公が取った行動によってストーリーの展開が変化します。大まかに善行を積むか、悪事を働きまくるかのどちらかですが、このような展開の変化は昔のメガテンみたいで微笑ましくなりますね。

 ちなみに、最悪ルートの主人公は本当にロクでもないことばかりするのですが、前述した爽やかグロ表現のお陰でなんとなく笑ってしまうのが本作の凄いところではあります。

短所

(1)序盤がとにかくストレスが溜まる

 前述しましたが、主人公が弱い序盤は難易度が高すぎて、めちゃくちゃストレスが溜まります。アップグレードで難易度が抑えられることを認識していないプレイヤーは早々とゲームを投げる可能性は十分にあります。

(2)とにかく移動が大変

 本作はセーブポイントへ移動できる手段として、魔法のテレポートが用意されていますが、これが手に入るのが中盤なので、それまでは非常にマップ間の移動がだるくて大変です。画面を切り替えるたびに敵がリポップしますし、いやらしいジャンプアクションも乗り越えなければなりません。

(3)普通にプレイしようとすると理不尽すぎるプラットフォーム部分

 本作は理不尽に片足をつっこんだジャンプアクションを何度もやらされます。ドラキュラシリーズお約束の歯車を飛び越えていく、落ちてくる足場を連続で飛び越える、乗っていると崩れる足場のギミックと非常にいやらしいものが多いです。いくらチートコードの救済措置があるとは言っても、それほど2Dプラットフォーマーに思い入れがない自分としては、面倒さを常に感じました。トゲや飛んでくる魔法などに当たって溶岩に落ちてやり直し!は本当にイライラします(笑)。まあ本作よりえげつないジャンプアクションをやらされるゲームは星の数ほどあるので、こちらは可愛いものと言えばそれはそうなのですが・・・。

(4)レトロゲームリスペクトならではの演出がテンポを阻害

 昼夜の切り替え、装備や魔法の入手時、セーブ時のお祈りの演出などは一切スキップできません。また、本作はオートセーブ仕様ではないので、ダンジョンなどでアイテムを入手した後に死亡すると完全にそれらはロストします。自分は入手した魔法がロストしたことに気づかず、ダンジョンをクリアしてしまいましたので、ダンジョンに再度潜らなければならないのは面倒に感じました。

(5)アクションゲームとしてのバランス調整は大味

 本作はキャラのアップグレードさえしっかりすれば難易度が抑えられる話は先に書きましたが、ボス戦がかなり簡単になってしまう側面があり、高難易度が大好きなガチガチなアクションゲーマーには物足りない難易度であることは間違いありません。一方、最善ルートのラストダンジョンは本当にヤケクソ気味に難易度が盛ってあり、チートコードなしのクラシックモードの場合、普通のプレイヤーには間違いなくクリアは無理です(そもそもカジュアルモードですら難しいですし、これをできる人は間違いなく一握りの超人)。この時点でまともにアクションゲームをプレイしようとする人のほとんどを確実にはじき出しますので、アクションゲームとしては真面目に調整してはいません。チートコードが公式ということからもわかる通り、大味なゲームを雑に遊んで楽しむバカゲーと認識する方が正しく、その辺りはアクションゲーム好きの間では賛否が分かれると思います。

 あと、お金と経験値をまともにプレイして貯めようとすると大変過ぎるというのもどうかと思った部分でした。

(6)引き継ぎプレイができない

 本作はクリアデータの引継ぎプレイは不可となっており、全てのエンディングを見るためには新しいデータを作成しての周回プレイが必須になっています。お金や経験値などはチートコードの入力で何とかなりますが、とにかく移動がだるいゲームなので、ワープくらいは引継ぎさせてくれてもよかったのではないでしょうか。

 ちなみに、悪事を一切働かない場合、序盤でいきなりボスと戦う羽目になります。チートコードの入力はこいつを撃破した後のセーブポイントで初めて入力可能になるため、ここは完全に自力で戦わなければならないのは厳しかったです(ボス自体はそこまで強くないですが、とにかく主人公が弱い上に、クラシックモードの場合、死ぬとニューゲーム開始時点まで戻されるのが怠い)。

(7)意外とバグが多い

 クエスト中のフリーズ、何故かイベントが進行しなくなるなどのバグがいくつか存在し、意外にバグが多いです。私の場合、カツキで男と女を生贄にするクエスト進行時、男を選択した時にフリーズしました(一応、ゲームの再起動で進行しました)。さらに、二週目のプレイでダルソフ初到達時、ガリレア公に話しかけずに町に入ったらイベントが進行しなくなりました(こちらはもうデータを削除して最初からやり直すしかなかったです)。これからプレイされる方はこまめなセーブは忘れないようにしてください。まあゲーム進行不可になった後にセーブしたら詰みなんですけどね・・・。

★まとめ

 序盤で心を折られかけましたが、主人公が成長さえすれば簡単になり、遊びやすくなるゲーム。序盤を乗り越えられる精神力とレトロゲームに対する愛さえあれば非常に楽しめる作品だと思います。一方、いくら救済措置があるとはいえ、ストーリー自体は特別面白くはないですし(そもそもストーリー性自体が薄い)、ゲーム進行不可になるバグあり、最善ルートのラストダンジョンの冗長で怠い構造など、アクションゲームとしての調整はかなり大味です。

 本作とは目指している方向は違うので、単純に比較するのもどうかと思いますが、例えば『ENDER LILIES』みたいにメトロヴァニア愛好家以外の他ジャンルファンに、強烈に訴求できるほどのインパクトは感じなかったのも正直な感想としては抱いています。基本的にはレトロゲームやバカゲーファン向けですね。それでも作り手のユーモアと遊び心溢れる良作であることは間違いないです。

 ちなみにいくつかの実績は厄介というか、プレイヤーに独特なムーブをさせるものがいくつかありますので、実績コンプを目指す場合は事前に下調べをすることをおすすめします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?