(仮)猫である僕を日本全国の旅に連れていってくれてありがとう第7話「旅路の末に」

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ぼくらの旅は続く……旅ってとても素晴らしいと思う。その素晴らしさの1つにして大きな割合を占めるのが、ジュンとヨメと一緒に同じ時、同じ風景、同じ空間を共感しあえることだと、ぼくは学んだんだ。

 山梨を出て、次に岐阜県に来た。ここは、下呂温泉と呼ばれる有名な場所らしいけど、なんだか街が寂れてしまっている感じで、どこか寂しく感じる街だった。

 その後、ぼくらは富山県へ来たのだけど、ジュンがお金を稼ぐ為に良い場所だと言って3日間滞在したんだ。

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ぼくらが住んでいる街と比較すると、とても豊かな土地だった。山々に囲まれた富山には、その広大な土地と自然の多さから畑が多くあり、農業が盛んな町で、自然が好きなぼくには居心地の良い場所だった。

 「よし、リゼロで荒稼ぎしたから次へ向かうか」

 リゼロ? その意味は分からないけども、ジュンがお金稼ぎに成功したことは理解出来た。

 ぼくらが、次に向かった場所……それは、この旅の中で1番素敵な場所だったと思うんだ。

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石川県金沢市にある湯涌という小さな温泉街、そこは山々に囲まれた秘境みたいな場所だったんだ。

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ジュンはここが気にいったのか、いつもはぼくと一緒に同じ車の中で眠るのに、今回はゲストハウスという場所でお泊りしていたんだよね。それも、3日間も泊まっていたからビックリしちゃったよ。

 そんな湯涌温泉街、ぼくとしてはね、ここに来れて良かったと思ってるんだ。

 朝、ジュンと歩く自然に囲まれた温泉街、そこは夏なのに涼しさもあって過ごしやすい上に、穏やかに吹く気持ちのいい風と、新緑の香りがする空気が素晴らしかったんだ。

 更に、この温泉街にいると時間がゆっくり流れていく……そんな不思議な感覚をぼくは覚えたんだ。

 その日の夜、ぼくは誰もいない静かな車内で考えていたんだ。

 ジュン達と旅をしていることで、ぼくはぼくの中でジュン達と同じ人間だという感覚に陥る時がたまにあるんだけど、そんな時は悲しくなるんだ。

 だって、ぼくは猫だからさ、この先、ジュン達とずっとは一緒にいられないことを本能で理解出来てしまうから……特に今夜は余計に……ね。

 そう思うと、ぼくの瞼から数滴の涙が零れ落ちた。

 いつかはジュン達との旅も、ジュン達といる時間さえも終わりを告げる時があることに対して悲しみが溢れてくるんだ。

 ずっと永遠には一緒にいられなくなる、いつかは別れる日が訪れる恐怖心から、ぼくは今すぐジュン達が泊っている宿に向かおうとしたけど、ぼくの力では車から出ることは出来なかった。

 そんな時、窓ガラスから微かに光が照らされていることに気が付く。その光……それは、ぼくらが住んでいる場所とは比較にならない程に綺麗な満天の星空の光だった。

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それはとても美しく輝き続けていて、ぼくの悲しみを全て包み込んで、あの遠く離れた空へと吹き飛ばしてくれた気がしたんだ。

 悲しみが消えた瞬間、ぼくは生ある限りはジュン達の為……ううん、ぼく自身の為にジュン達と楽しい時間を1秒でも多く作ろうと誓い、ぼくは眠りについた。

 翌日、ぼくは圧倒されていた……というか、なんだこの大きな動物は?

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「フア、これが恐竜や! 大昔には、こんな大きな恐竜達が実際にいたんだぞ」

 ジュンの話を聞いて驚いたよね。ぼくが生まれる遥か昔に、実際にこんなにも巨大な生き物が存在していたなんてさ。

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作り物の恐竜を見て子供のように楽しんでいるジュンを見て、ぼくも同調するように楽しんだんだ。

 その後は、滋賀県、三重県、そして奈良県へと向かった。

奈良県では奈良公園という場所に行ったけど、なんか見たこともない動物達がそこら中にいるじゃないか!

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なんでも、鹿と呼ばれる動物らしい。ぼくよりも大きいから警戒したけど、彼らは大人しい性格で無害だと知り一安心。

 その後、ぼくは一度車内に戻ってジュン達が戻るまでゆっくり寝転んでいたら、ジュン達が残念そうな顔をして戻ってきたんだよね。

 なんだろ? 何かあったのかなぁ~と、思ってジュンとヨメの会話に聞き入ってみると、どうやらジュンのやりたい事が叶わなかったようなんだ。

 それはね、若草山という場所は天気が良い日にはピクニックができて、芝生に寝転んだら何もかも忘れられる最高の癒しスポットらしくて寝転びたかったんだって。でもね、実際は鹿の糞が沢山あって寝転ぶことが出来なかったみたい。

 で、更に山の頂を目指せば芝生に寝転べるんじゃないかと登山開始して、二人で死にそうになりながら頂上へ到着したらしいよ。

 芝生で寝転んで絶頂の昼寝を味わうぞー!と思ったみたいだけど、どこもかしこも鹿の糞だらけで、そこでも寝転べなかったみたい。だから、2人は凄く残念そうにしてるんだ。

 うん、それは残念だよね。分かる、分かるよ! でも、いつかまた来た時には、糞をなんとかしてから、ぼくとジュン達で一緒にピクニックしてから寝転ぼうよ!

最後に和歌山県へと行き、帰り道に静岡県へと立ち寄り太平洋と呼ばれる海を見て海風をその身に感じてから、家へと帰宅して今回の旅を終えたんだ。

  山梨、長野、岐阜、富山、石川、福井、滋賀、三重、奈良、和歌山、静岡という長い長い旅路だったけども、終わってみればあっという間の旅だったよね。

 帰宅後、色々な思い出が蘇ってくる中で、ぼくは思ったんだ。何不自由のない贅沢な生活をしている猫達よりも、こうして大好きなジュン達と一緒に色々な世界を感じられる、共に楽しさを共感出来ることが出来るぼくは最高に幸せな猫なんだろうな~ってね。

「ジュン……ありがとうね。君と出会えてぼくは最高に幸せな生活を手にしているんだよ? ぼくは猫だからその言葉を伝えることは出来ないけども、それでも、きっと君は言葉にしなくても理解してくれていると信じてるよ」 

 


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