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23.そして一人旅が始まる ーインド編4~本当の旅の目的に

颯太とゴアで別れて、また一人になった。
今まで、16か国旅して色んな場所を巡ってきて
初めて気に入って、ここに居たいと感じた場所がゴアだった。

世界の色んな場所に行って、世界遺産をみたりダイビングしたり
川下りしたり、さまざまな事をしてきたけど
海しかない、このゴアでは特に観光するところもなく
ただ、毎日の生活の日常を楽しんでいた。

朝、起きて散歩して美味しいイタリアンでブランチを食べ
バイクに乗って潮風を感じながらドライブして海を眺め
友達に家に行って語り
夜は色んな場所で開かれるビーチパーティーに行って踊る。

それだけしかしなかったが、のんびりしてストレスが全く無く
本当に気持ち良い毎日を楽しみながら
1か月くらい沈没して自由きままに生活していた。

世界各地から集まったトラベラーが多く、自由な空気で
もし、楽園が有るのだとしたら、こんな感じなのかな?と思うような
パラダイスだった。

そんな楽しい生活を送っていた1998年の1月2日
ニューイヤーのパーティーの次の日の朝
その時はやってきた。

海の音で目が覚めて、潮の香りと夏の温かく心地よい風を感じていたら
突然、心が満たされてきて、そしてとうとう満たされ過ぎて
喜びが溢れだし、生まれて初めて心が完全に満たされる、
という事を味わった。

感謝が湧いてきて、止まらずに
ただ胸が一杯で、あふれでる涙を堪える事が出来ずに
大泣きしていた。

特に、何か感動する事が起きた訳でもないのだが
ただただ、この美しく完全に調和のとれた素晴らしい時を
味わえてる事に、心からの感謝が止まなかった。

今までは、ずっと心が満たされず、外から満たそうと
穴の開いたコップに外から水を注ぐと
一瞬は一杯になるのだが
すぐに穴から水が漏れて、また外から刺激という水を注ぐ。

決して満たされる事は無く、次から次へと刺激を求めて
「もっと、もっと」とがむしゃらに動き
とうとう世界中を旅してまわる、という所まできてしまっていた。

しかし、外からではなく、自分の内側から水が溢れてきたら
あっさりコップは一杯になって、水はあふれだし
自分一人だけでは、もう抱えきれないから
他の人に分けたい、という気持ちが湧いてきた。
本当に心から満たされていた。

そして、この体験が
有名な世界遺産や絶景をみて感動して湧いたものではなく
些細な日常の何気ない事に対する感謝の気持ちから
湧いて出てきた事に自分でも驚いた。

世界を旅して気が付いた事は
何処に行って何を見ても、自分の中にあるものが出てくるだけで
自分の中に無いものは感じる事が出来ない。
それは自分を映し出す鏡。
答えは自分の中にある。

結局、僕は子供の頃に生まれ育った長野の田舎で感じていた
自然の優しさ、温かさが心地よく
それが自分にとって一番大切な感覚なんだなって
改めて気が付いた。

そんな素朴な自分にまた出会えた事に
心から感謝した。

こんな些細な日常の事が、実は当たり前ではなく
尊く素晴らしい調和のとれた時間の連続で有ることに
気が付けたのも
今まで物が溢れて感謝を忘れ
垢まみれになって曇った心を

言葉の通じない外国で旅をすることによって
当たり前が当たり前ではない事を体験し
最終的には、異国の地で身ぐるみ剝がされて
暗闇の中から裸一貫で一人で旅を始める事によって
本当に些細な事に感謝出来たのだと思う。

自分探しの為に旅に出て
何処で、どうやったら出会えるのか?
全く見当も付かずに日本を飛び出し
世界各地で散々な目にあったりもし
「なんで自分がこんな目に遭うんだろうか?」と
自分の人生を恨んだりもしたが

全てはこの瞬間に出会う為に
色々な事が偶然ではなく
必然で起こっていて
人生はやはり「人間万事塞翁が馬」。

本当に上手く出来ているな、と
心から実感し、神の采配に感謝した。

今まで出会った全ての人達や
自分に起こったすべての出来事に
深くお礼をする事が出来た。

自分でハッキリと
この体験が自分探しの旅の目的なんだな、と分かった。

こうして
僕は幸運にも自分が求めていた自分探しの旅を
無事やり遂げる事が出来たし、

自分が欲しいものは
答えが分からなくても
諦めずに前に進んでいれば
必ず手に入れる事が出来る、という
自信を得たのだった。












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