見出し画像

弁証法(dialectic)

『オックスフォード哲学辞典』は、弁証法を次のように定義している。「・・・出来事を、それぞれの歴史的時代を特徴づける諸矛盾の漸進的な解消〔=解決〕へと向かわせる、歴史的な力〕(Blackburn 1996:104)。
Blackburn, Simon (1996) Oxford Dictionry of philosophy, Oxford: Oxford University Press.
「ディアレクティック」という用語はギリシア語から派生したもので、「対話」を意味し、哲学的思索をつうじて、二つの対立する議論や立場が第三の議論や立場によって「解消〔=解決〕」されるという、論理的議論へと導く。この第三の議論や立場は、より進んだ論理的議論のための新たな出発点となるので、弁証法はたえず前進しながら継続される。マルクス主義はヘーゲル弁証法(あるいは、人間的主体形成へのヘーゲルの弁証法的洞察)を、唯物史観の洞察と組み合わせる。この方向転換を推し進めるために、社会構造に関するヘーゲルの理論は経済学と結びつけられ、諸社会がいかにして階級闘争をつうじて発展するかが示される。マルクス主義によれば、弁証法の到達点はヘーゲルの絶対精神の概念(あるいは哲学)ではなくて、諸社会が共産主義に到達することである。」(リチャード 2006:23)。
リチャード・J・レイン〔訳:塚原 史〕2006『ジャン・ボードリヤール』青土社
哲学者マルティン・ハイデガー(1889-1976)は弁証法のすばらしさは、それが粉ひき器のようなものではないことだと述べている。つまり、知性に関わる諸問題をそこに入れれば、正・反・合(弁証法の個別的「契機」)の操作によって問題が解決されるというわけではないのだ。むしろ、私たちの知性に関わる諸問題は、弁証法の働きをつうじて、あるいはその働きゆえに明らかにされる(いいかえれば、弁証法によって私たちが最初に思考する立場にあることが明らかになる)(Heidegger 1988:112)。
Heidegger,Martin (1988) Hegel’s Phenomenology of Spirit,trans. Parvis Emad and Keneth Maly, Bloomington & Indianapolis: Indiana University Press.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?