昨日息子が盛大にゲロをはいた。

咳風邪をひいてからというもの、
飯を食ってはせき込んでゲロを吐く彼。

ちょっとなんかもうかわいそうである。

ただでさえ12ｋｇしかないというのに、食べたものを吐いてしまう日が続いたもんならあっという間に9ｋｇとかになってしまうのではないか。

できることなら代わってあげたい。

喉に指突っ込んで吐いている過食嘔吐の母（私）からしたら嘔吐するなどなんてことないのだ。

なにより私は52ｋｇもあるのでゲロ吐いたところで生命維持に何の支障もきたさない。

子どもを産んで、彼の母になれてとても幸せだ。

ただ、幸せを貰ったと同時にとんでもない爆弾も背負ったと思う。

川で行方不明になってしまう子、拉致されてしまう子、いじめを苦に自殺してしまう子、子どもが生きていくにはこの世界は危なすぎる。

万が一、我が子にもう二度と会えないなんてことになってしまったら私は絶対に絶対に正気を保てないと思う。

いつか来るかもしれないその日を思うととても怖い。

親になってみて、今まで自分がいかに薄氷の上をギリギリで生きてきたのかがよくわかった。

死んでもおかしくない瞬間は私にもいくつかあったのだ。

小学生の頃毎年行っていた子供たちだけの山でのサマーキャンプ。
インストラクターが1人つくだけで、食事や風呂などは子供たちだけでやった。


小1、母に「今から十条来て！」と言われ初めて一人で電車に乗り母に忘れ物を届けに行った。
ところが線を間違えて東十条についてしまった。
携帯を持っていなかったので近くにいた女の人に電話をかしてもらい母に電話したのを覚えている。
母は「なんでこんな簡単なこともできないの！」と私を叱った。

小5、母は彼氏の家で半同棲していたので、母が休みの日は私が母の彼氏の家に遊びに行っていた。
そして夜には自分の家に帰されていた。
22時、駅から家までの道を一人で歩いているときに担任とすれ違い、翌日聞き取り調査された。
ただ、そんなのなんの意味もないとわかっていた。学校は母を注意し、母は面倒ごとを運んだ私に注意するだけである。
なので適当に濁した。

中1では1人で中国に行った。
空港から出れず数時間うろうろした。

はたして私の親は正気なのだろうか。
母になって己の母の異常性を真に理解したと思う。

まあこれらのおかげで大抵のことは何とかなるという精神を手に入れた。
ありがとうママ。

幸運にも生きているしね。
幸運にも生きた結果している発言が「尾崎世界観と浮気したい（笑）」なの、なんか本当にすみません。

そういや我が子がゲロを吐いた件だが、
昨晩、食後のことだ。
アンパンマンを見ていた彼のおむつを変えようと近づいたところ、ゼロゼロと不穏な咳を始めた。

食後×咳+ゼロゼロ＝ゲロ

母も2年目になるとこんな計算もお手の物
ゴフッという音を聞いた瞬間おむつを広げて彼の前に差し出した！

ふう…無事にゲロを受け止めることに成功した。

と安堵したのもつかの間
第二弾のゲロが私を襲う。

思わずキャー！！！と叫ぶ。
ソファと机を両手でつかみながらオロロロロとゲロを吐く息子を見ながら
なすすべもなく立ち尽くした。

吐くときのオノマトペとして、オロロロロと使うのは銀魂でしか見たことなかったのだが、本当にオロロロロと言って吐いている人を私はこのとき初めて見たのだった。
オロロロロというのは空知先生が考えたのだろうか…
だとしたらすごい。再現性の高さに感服してしまう。

緊急事態の人間を目の当たりにしているとき人は、どうでもいいことを考えてしまう。
フリーズした思考回路をなんとか日常に戻そうと脳が頑張っているのだろう。

ゲロは第三弾、四弾と続いた。
一回ゲロが出るたびキャー！！と叫ぶ私のとなりで、義母はあらららと言っただけだった。

さすが、子どもを二人育てただけのことある。

歴戦の戦士の前で私は己の非力を思い知らされた。

そして、両手をついてゲロを吐く我が子を見て私は
「…なんか酔っ払いみたい（笑）」と思った。

もちろん馬鹿にしているわけではない。
また、絶対にそんなこと言ってはいけない。
義母の前だ。

言ってはいけない…言ってはいけない…
だめ…だめだよ…

「…なんか酔っ払いみたいですね（笑）」

…言ってしまった。
我慢できなかった。

どうしても小さい酔っ払いに見えてしまったのだ。
この気持ちを共有したかった。

義母にはふつうに無視された。

宙に浮かんだ私のセリフはだれにもキャッチされることなく
ふわふわと消えていったのだった。

ひとしきりゲロを吐き切った息子はけろっとしており、アンパンマンの続きをゲロまみれのまま見ようとしている。
体を綺麗にすべく彼を持ち上げて服を脱がせると「ゲーちた…」と教えてくれた。

知ってるよ。
一部始終見てたんだから…
でも教えてくれてありがとう…

早く元気になっておくれ