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【#79】長野県・軽井沢町長選挙レポート(2023 1.22)

「軽井沢」

 嗚呼、何と美しい響き・・・
 豊かな自然、別荘、避暑地、アウトレットショップ、そして、ジョン・レノンが愛した街・・・

 日本人なら誰でも知っている、永遠の憧れの街、軽井沢。
 だが、当然ながらそんな町も、生活をしている住民がいて、役所が有り、町を率いる町長が存在します。
 そんな、観光地としてばかり注目される軽井沢で、注目の町長選が行われました。 日本有数の観光地でどのような政策が取られ、どのような選挙になったのかを、レポートします。


◆概要

  • 面積:156.03㎢(長野県 第28/77位)

  • 人口:21,510人(長野県 第20位)※2023年1月1日現在

  • 人口密度:137.8人(長野県 第30位)※2023年1月1日現在

  • 平均年齢:48.8歳(長野県 第25位)※2018年9月1日現在(若い順)

  • 衆議院は長野3区に属し、


◆立候補者

土屋 三千夫 (65) 新 会社役員
押金 洋仁  (55) 新 元町議
藤巻 進   (71) 現 4期目を目指す
下田 修平  (45) 新 会社員

※いずれも無所属、政党推薦なし

 4期目を目指す現職に、新人が3人も立候補し4名による選挙戦に。
 現職への批判が強いのでしょうが候補者が乱立すると票が割れて現職有利に働きやすくなりますが、果たして。


◆前回(2019年)の選挙結果

[当]藤巻 亨 (67) 現 4,902票
 -------------------------------------
[落]西 千穂 (45)  新 2,516票 

※投票率:44.61%

 前回は現職が町議を1期途中で辞して出馬した新人に倍近い差をつけて圧勝。 そのあまりに結果が明らかな構図からか、投票率が2011年(2015年は無投票)から19.39ポイントも下回るという、なんとも寂しい選挙でした。
 ただ今回は投票率は前回を上回るのは確実だと見られています。 それは、あまりにも明確な争点が存在しているからです。


◆POINT

・町役場新庁舎建設計画の是非

(軽井沢町役場)

 現在の軽井沢町役場は1968年に建設されたもので、耐震補強工事は対応済みながら配管等の老朽化やスペース拡張やバリアフリーに対応する必要性が有り、建て替えの計画が上がっています。 が、その計画を巡り賛否が分かれ、今回の町長選最大の争点となっています。
 現在の計画は現庁舎と、その北側に建つ中央公民館老人福祉センターをまとめて建て替える計画です。

(中央公民館と老人福祉センター)

 中央公民館と老人福祉センターが有る場所に新庁舎を建て、現庁舎の敷地に中央公民館機能を含む『複合施設』を建設するとのコト。

軽井沢ウェブ様 より引用)

 立地として役場と中央公民館等は数十メートル離れているのですが、新庁舎と複合施設、そして現庁舎東側にある軽井沢病院の間を「まちの縁側」「もりの縁側」で繋ぐという計画なのですが、そのイメージが、、、

日経クロステック様 より引用)

 こーいう、オシャレーなものを作る計画のようです。
 「軽井沢町は今年「G7外相会議」が開かれる国際的に注目される自治体で、それにふさわしいものを建てて然るべき。 災害時の緊急避難場所にもなるので、必要
 というのが計画を推進する現町長の主張で、それについては一理あると思える部分も有りますが、それら諸々の建設費用が約100億円となると話は別。 人口2万程度の自治体の役場の建て替えに、そんな建設費用をかけるのはおかしい! と反対意見も多く出ています。

 ところで、私がこれまで取材する中で「庁舎建て替え」が争点になった選挙は、いくつか有り、

 例えば群馬県の安中市は、軽井沢町同様に老朽化した庁舎の建て替え費用が争点になっていましたが、人口約55,000人の安中市で、その金額は約54億円

 愛知県の、あま市は市町村合併で誕生した新しい自治体で、合併前の各役場を支所として使っていて、その機能を一か所に集めるための新庁舎建設計画が問われていましたが、人口約9万人のあま市で費用は約52億円。 それらと比較すれば軽井沢町の計画が如何に荒々しいものに仕上がっているか御理解できるかと思います。

 また、あま市や安中市と軽井沢町では決定的に違う点が有り、あま市と安中市は “平成の大合併” で誕生(拡大)しており、そういう自治体は庁舎建て替えの際、合併特例債などの優遇措置を利用するコトで自治体負担を軽減できるのに対し、軽井沢町は他自治体と合併を経ていないためそれを使うコトが出来ず、モロに自治体負担となってしまうのです。
 確かに軽井沢町は住民こそ2万人台ですが数多くの別荘地を抱え、住民票は移していないが別荘の固定資産税を町に払っている方が多いコトで他自治体が羨むほど財政は恵まれていて、国からの地方交付税を受けずに町の財政運営が出来る、全国に73自治体しかなく県内では唯一の「不交付団体」のひとつに入っているほどではありますが、サスガに約100億円の建設費用となると、、、

 新庁舎建設推進を主張しているのは現職のみ。 既に外構工事は始まっていますが、それでも反対を訴える新人が3候補も出てきた選挙戦の行方は? それでは各候補を見ていきましょう。


◆藤巻 進(ふじまき すすむ)候補

 藤巻候補は軽井沢町出身。 療養のため東洋大学中退後、塩沢遊園(現・軽井沢タリアセン)に入社。  その後、町議3期、軽井沢観光協会会長を経て2011年の町長選に立候補し初当選。 以降3期務め今回4期目を目指します。

 ・・・いつもなら候補者紹介から有料になるのですが、結論を先に言うと藤巻候補には会えませんでした。 スケジュールが一切発表されないし、そもそもSNSやってないし、他候補の取材を優先してたら選挙事務所に行く頃には陽が暮れてたりでして。
 申し訳なく思っていますが、代わりに選挙事務所の写真を。
 というのも藤巻候補の選挙事務所が、かつて勤務していた「軽井沢タリアセン」の施設全体を使っていたからでして。

 冬季休園中の施設を借りており、駐車場も敷地も広大。 そして何より、美しい!

 選挙事務所の施設内に川が流れ、水鳥が戯れ、夕日が沈んでいくという。 とても「選挙」という “究極の人間模様” とは無縁の光景が広がっていて、それは無料部分で皆様に見ていただこうと思いまして。

藤巻候補に代わって応対いただいたスタッフによる候補の主張は有料部分で。 また、新人3候補の選挙活動は取材出来ていますのでお届けします。 そして、驚きの選挙結果となった要因を分析しています。 是非読んでいただいて、改めて「一票の大切さ」を実感していただきたく!!

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