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45 他人に簡単に「操られる」方法

 前回は、私たちは自分自身で情報を得る事ができてそこから何らかの判断ができるはずなのにそれを簡単に放棄してしまうという話をしました。しかも、時にそれを命懸けでしてしまうのです。全くもって驚きです。

 今回は、命懸けにはならないまでも、なぜか他人の言葉や言動、そして周辺環境に私たちのがいつも揺さぶられているというお話です。ですが、それはこれまでの記事でも実は同じ事を何度も書いてきた事で、それを今回は少し別の視点から書いてみようと考えています。

 その前に、最近ちょっと気になっている話題について取り上げましょう。政府は国民に対してマイナンバーカードを取得させる事を推進しています。保険証をマイナンバーカードに統合する事が言われていますし、運転免許証との関連付け、そして銀行口座との関連付けも進めようとしています。マイナンバーカードができた当初の説明にはそうしたプランは示されておらず、単に役所での事務手続きが簡単になったりコンビニで住民票が印刷できる程度の説明でした。それが一旦普及し始めると次から次へと私たち個人の情報との関連付けが増やされています。こうしたやり方についてあなたはどう思いますか?

 (この先を読む前にちょっと休憩)

 では、先に進みます。こうした話題はSNS上にいくらでも流れてきます。そして私たちはそれを読みます。読むのは簡単です。だいたいが140文字以内と短いです。読んだ瞬間、私たちは頭の引き出しからそれに関しての知識や以前に感じた思いを引っ張り出してきます。そしてだいたいの場合、頭の中を「上書き」します。上書きするには2通りあって、もし書かれている事が自分の考えと同じか似ているのであれば通常上書きで、自分の考えと反対であればそれを否定しながら自分の中にある既存の考えを強化する方向に上書きします。結果は同じです。

 この時に私たちに起きていた事はこうです。流れてきた文を読む→心が反応する→過去の経験を呼び起こす→同時に過去に持った自分の意見を思い出す→流れてきた文に対応した行動をとる→自分の意見を上書きする→満足する。これは前にもどこかで書きましたが私たちが子供の頃から訓練されてきた方法なので仕方ありません。教室で黒板に向かって座ると先生が印刷された紙を机に置きます。私たちは反射的に正解をその回答欄に書こうとします。その事が私たちのその後の学校生活や進学などを決める大きな要因になってしまうのですから当然です。子供でもそれはわかります。もっともSNSには先生はいなくなっているのですが、私たちの行動パターンは子供の時のままです。「先生、ひろし君ね、ひろこちゃんの消ゴムをわざと隠しちゃったんだよ。わたし、ひろし君はいけないと思います」という感じです。そこにはある正義感が存在していて絶対なわけです。

 仕方ないといいつつ長々と書いてしまいましたが、今回の重要なポイントは私たちが(以前に書いたように) 犬のように脊髄反射的に吠えまくってしまう事ではありません。それよりも、私たちが「どこを支点にして」反応したり考えたりしているかというところです。

 まず、SNSである記事が流れて来るところから始まります。これがもし流れて来なければ私たちはそれに反応することとはないはずです。ああ、今日、あの人は海へ行ってきれいな夕日を眺めてきたのだなあとコーヒーを飲みながら知り、そして今度自分でもそこへ行ってみようか?で済んだはずです。学校で先生が教室に来なければ、先生が問題用紙を配らなければその時間は平和に本を読んだり友達と話したりして済んだのと同じです。そして一旦問題が配られるとそこには「正解」というものが自然に発生してしまうのですから、私たちの脳は一気にパニックに陥ってしまうのです。

 つまり、発生した問題も正解もどちらも自分自身の中にあるものではないのですが、悲しいかな私たちはそれを自然な事として受け入れてしまっているのです。そして私たちの脳の働きの「支点」自分自身の中から容易にその外部へ引っ張り出されてしまうというわけです。

 あなたの大事な人があなたの前を去りました。家族の誰かに不意に不幸が訪れました。道を歩いていて事故に巻き込まれて怪我しました。各々は別々の事であって特に関連はありません。けれどもあなたは「最近身の回りに良くないことが怒るな」と不思議に感じました。そこへ友人の紹介である人が現れます。その人はいつもニコニコしていて幸せそうです。その人はあなたに言います。「あなた、悲しそうな顔をしていますね。何か悩みがあるのではないですか?」あなたは訪ねます。「どうしてわかるのですか」「ええ、実は私、子供の頃から霊感が強くて、あなたを見た時にあなたの後ろに良くない色の影が見えたのです」あなたの友人が隣で聞いていて言います。「えっ、びっくり。この人とあなたを引き合わせたのはもしかしたらただの偶然じゃないのかも」

 ここでこのお話は止めておきましょう。ですが、わかりましたか? あなたの机の上に回答用紙が配られた瞬間をです。

 街を歩いていると広告があふれています。「あなたはまだ本当の○○を知らない」「あなたはまだ○○をし続けるのですか?」「○○の全真相はこうだ」「あなたは○○が本当は╳╳であることをご存知ですか?」どれもこれもあなたを教室の机に座らせてそこに回答用紙を配っているのです。あなたが犬のようにワンワンと吠えるのを知っているからに違いありません。

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