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大阪ミニシアター巡り🚗第1弾【テアトル梅田】(前編)支配人木幡さんインタビュー🎤

こんにちは!映画チア部大阪支部の(なつめ)です。


私たち映画チア部は、学生の立場から関西のミニシアターを応援しよう!という思いで結成された学生団体です。

関西にたくさんある、チア部の活動とは別に個人的にはいつもとてもお世話になっている、ミニシアターの一つひとつにスポットを当てて魅力を伝えるような新しい企画をしたい!と考えました。

そこで「大阪ミニシアター巡り🚗」と題して、チア部メンバーが大阪にあるミニシアターの一つひとつを実際に巡って、直接お話を聞いたり映画を観たり、私たち自身の思い出を振り返ったりして、皆さんと共有できればと考えています🌟




第1弾は、【テアトル梅田】です📍

大阪の梅田、毎日たくさんの人が行き交う賑やかな街の、ロフトの地下にあります。地下に映画館があるのって結構珍しいのではないでしょうか…?

テアトル梅田の入り口!階段を降りていきます…!


初めて行った時はどこにあるかわからなくて迷ったという思い出を聞いたこともありますが、一度その場所を知ってしまうと、自分(たち)だけが知っているとっておきの秘密基地に潜っていくような不思議な高揚感があって、ワクワク感がより一層増す気がします。

映画館で映画を観ることは、ある種非日常の体験だと思いますが、テアトル梅田の外階段を上り下りすることは、そのまま日常と非日常を行き来することに重なって、テアトル梅田だからこその「特別感」を覚えます。


この企画で1番にテアトル梅田を取り上げたのには理由があります。

それは、公開が始まってから1ヶ月近く経ってもなお盛況なウォン・カーウァイ4K、その公開を指折り数えて待っていた7月中旬のことでした。

Twitterで知った、テアトル梅田閉館のお知らせ。いつもそこにあるのが、いつでも行けるのが当たり前のようだったテアトル梅田が閉館してしまうというニュースの衝撃はとても大きかったです。寂しい。そして感じた、「いつまでも あると思うな 映画館」……。大好きで大切だからこそ、たくさん通ってたくさん思い出や記憶を残さないと、と改めて思いました。

そして発表された「さよなら興行【テアトル梅田を彩った映画たち】」!思い出がよみがえった方も多いのではないでしょうか??

学生はなんと800円で観れるということで、これまでテアトル梅田に来たことのある学生さんはもちろん、梅田のロフトの地下に映画館があったなんて知らなかった学生さんも、是非この機会にテアトル梅田に行きませんか??!

テアトル梅田で2001年に公開され、興行収入ランキング1位の『アメリ』映画館で観たくないですか??ジム・ジャームッシュの名作『ナイト・オン・ザ・プラネット』と『コーヒー&シガレッツ』の2本が観れるなんて!!日本中で大ヒットを記録した『花束みたいな恋をした』はまだ観てないのでこの機会を逃すわけには!!『この世界の片隅に』は『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』と併せて観たい…(まだまだ続く)
あっ、それから、さよなら興行ではなく新作の『よだかの片想い』も絶対に観たいです!もう観ました?!9月22日まではベルモンド傑作選3もやっているし、ロミー・シュナイダー映画祭も続行しています。

そう考えると、まだまだテアトル梅田で映画が観れるし、新しい思い出が作れますね。



(前編)の本記事では、テアトル梅田の支配人の木幡さんにインタビューをさせていただいた内容をお届けします!
大変お忙しい中、私たちの企画を引き受けてくださってありがとうございました😭

テアトル梅田や大阪のお客さん、また映画そのもの、映画に関わる人への愛が伝わってくるとても素敵なお話が聞けました!インタビューの最後には、テアトル梅田に一度でも来たことのある方なら聴いたことのある「あれ」についても教えてくださいました!謎が解けて良かったです!




(聞き手:かんな、なつめ、さや)

チア部:木幡さんの思い出に残る上映回やイベントはありますか?


木幡さん:僕は元々福島県の出身ですが10代から神奈川で育ちました。社会人になってからは東京で働いていたのですが、2017年の暮れ頃に大阪へ赴任してテアトル梅田の支配人に就任しました。途中1年ほどシネ・リーブル梅田で働いていたこともあるのですが、延べ4年ほどの期間ここで働いていることになります。1990年4月19日の開館から32年が経ったテアトル梅田の歴史の中では長い時間を過ごしたわけではないのですが…。

大阪に引っ越してきたとき、それまでは旅行でちょっと寄るくらいのことはあったにせよ、僕にとってほぼ初めての大阪でした。関西にあるミニシアター、シネ・ヌーヴォさんやナナゲイ(十三・第七藝術劇場)さんなど、関東にいるときから知ってはいたけど行ったことのない劇場へ実際に行き、東京のミニシアターとの違いや大阪の独特なお客さんの感じが最初はすごく面白くてカルチャーショックでした。テアトル梅田のお客さんはとてもフランクにたくさん話しかけてきてくれて、映画を観なくても立ち寄ってちょっとスタッフと話をしてコーヒーだけ飲んで帰ったり、新しい作品のチラシをチェックしたり。

思い出に残っているのは何か特別な上映回とかではなくて、そういう日常の、お客さんとのコミュニケーションに感じ入ることが多かったです。

もちろん、色々上映した中で作品がヒットしたときは嬉しかったですし、普段はどちらかというとご年配のお客さんが多い中で、そうしたお客さんだけでなく若いお客さんや幅広い年齢層のお客さんがたくさん来てくださった作品というのは、ミニシアターの存在意義のようなものを感じて、働いている者として充足感もありましたし、なんだか未来が明るく見えるような感じがして印象に残っています。


チア部:今やっているウォン・カーウァイ特別上映も、若いお客さんが多いなという印象があります。

ウォン・カーウァイ4K 5作品と『欲望の翼』ポスター!テアトル梅田で全制覇しました!(なつめ)


木幡さん:そうですね。

少し前にシャンタル・アケルマンやジャック・リヴェットの特集上映を取り上げたように、ここ2,3年当館では、昔の監督の特集上映を意識的に続けてきました。旧作なので当然ご年配のお客さんが多くなるかなと思っていましたけど、こういった作品はむしろ若い方に観ていただきたいと思っていました。

そこで、若い方にも来ていただけるような宣伝方法を試してみたり配給会社さんと相談しながらキャンペーンをやったりしました。それまではホームページに上映作品の情報をリリースして、新聞などに情報を載せるという感じだったのですが、SNSもやってみようじゃないかと試行錯誤していく中で、ここ最近は若い方が来てくださっているなという実感がありました。

特にシャンタル・アケルマンの特集上映はフェミニズムにも言及できる作品だったりすることもあって若い方に来ていただけたのかなと思っていて、とても手応えを感じましたね。



チア部:上映作品はどのように決められるんですか?


木幡さん:テアトル梅田が属しているテアトルシネマグループは、関西ではシネ・リーブル梅田とシネ・リーブル神戸、業務委託という形でアップリンク京都を運営しています。テアトルシネマグループの本部に編成担当がいて、その者が各配給会社さんと交渉をし、時には各劇場の支配人と相談しながら決めています。


チア部:作品を上映するときに、地域によって上映時期をずらしたりするんですか?関西では大阪が一番早いなという気がするんですが…。


木幡さん:今だとSNSで情報が早く回ってきて、東京や大阪じゃなくても早く観たいのに!と思ったり、自分の地域にはまだ来ないとかそもそも来るかわからないとか思ったりするかと思います。

しかし逆に、そうやって情報が回るのが早いからこそ、東京や大阪で上映が始まって口コミが広がるのも昔に比べて早いですし、情報が広がっていくので、遅れて始まった京都や神戸で初週から動員がぐっと増えるというメリットもあります。これは配給会社さんや劇場の編成担当が戦略的に決めています。

もちろん、物理的にスケジュールが詰まっていて、この期間じゃないとできないということが多々ありますが、作品がどうしたらより多くの人に届くかということを考えて敢えてずらすということもあります。


チア部:さよなら興行のプログラムはどのように決めたのですか?


木幡さん:編成担当とも相談したのですが、まずはテアトル梅田で過去の上映した作品をやりたいという思いがあったので、過去のデータを集めて、その中で当館の社員と意見を出し合いました。また、スタッフは何が観たいかという意見も吸い上げました。

そうやって挙げた中でも、実際にやれるものとやれないものがあります。例えば当館では35㎜フィルム映写機がすでに撤去されているため、上映素材として35㎜フィルムしかないものはできないという問題があったり、デジタル素材があるものでも現在日本で権利を持っている配給会社がない作品は基本的には上映できないという権利関係の問題があったりするんですよね。

そういう問題をクリアした作品の中で、テアトル梅田としてかつてたくさんのお客さんに来てもらった作品や、スタッフの思い出に残っている作品、またヒット云々にも関わりますがエポックメイキングな作品、つまり画期的で社会的な影響があったような作品ですね。

あとはテアトル新宿の流れで、当館ではインディペンデントな邦画を上映してきたので、そういった作品の中でも良作、上映する意義があると思える作品も選びました。

ただ、これまで上映してきた中でも弊社・東京テアトルの配給作品には思い入れがあるので、作品数がどうしても多くはなりました。

『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』監督のサイン入りポスターが貼ってありました。


チア部:映画やミニシアターに関わる仕事の大変さと楽しさを教えてください。


木幡さん:やっぱりメジャー作品に比べると、宣伝にかけられる費用が少なく、本来届けたいお客様にその作品の存在や観たいと思わせるような魅力を届けるのがなかなか思ったようにいかないということですかね。

あとは、どれだけ若い方にも来てもらえるかについては劇場としてかなり苦労してきました。

それは作品だけじゃなくて、テアトル梅田という劇場そのものについても言えることで。閉館を発表してから多くの方から惜しいという声をお寄せいただきましたが、ここに映画館があるということ自体を知らない方も沢山いらっしゃる。僕がテアトル梅田に赴任してきた5年前から劇場として色々やってきたつもりですけど…。

例えば今泉監督の『愛がなんだ』を上映した際、初めてテアトル梅田に来たという方が非常に多かったのですが、それを見て、僕は今まで何をしてきたんだろう?って思ったんですよね。「この5年間にもっと知ってもらえる機会があったんじゃないか」とか「あの作品を上映したときにこんな宣伝をしていれば、きっと観に来てくれていて、その時にまた別の作品の情報に触れてまた観に来てくれていたんじゃないか」とか、そういうことを考えてしまいましたね。だからミニシアターはもっと若い方に来てもらえるような存在でありたいと尽力してきました。

それとミニシアターで働く若いスタッフにも自分たちの感覚やアイデアをどんどん反映してもらって、ミニシアターを発展させてほしいなと思いますね……これって何の話でしたっけ?


チア部:映画やミニシアターに関わる仕事の大変さや楽しさについてお願いします!


木幡さん:そうですね、そういうことを考えるのはもちろん大変ですが、楽しいことでもあります。渋い作品だけど宣伝を頑張って、本来だったら目にも掛けてくれなかったであろうお客さんが来てくれると「してやったり」と嬉しくなります。

あと、働いているスタッフはみな当然映画が好きでこの仕事をしているのですが、面接に来た時に「高校生の時にあの映画をここで観ました」とか「それが初めてのミニシアターで、ここで働きたいと思って応募しました」というのを聞いたときにはすごく嬉しかったですね。

僕は小さい頃から映画館に行っていましたが、自分で観たいと思ってひとりで映画館に行き始めたのは90年代、高校生の頃でした。街自体に行くだけで少しドキドキしていた渋谷の、ユーロスペースさんや当時あったシネマライズというミニシアターで、背伸びをして難しそうな映画とかおしゃれな映画とかを観て、必ずしも理解はできなかったですが何かしらを感じたりして。

そこから音楽だったりファッションだったり文化的なものに興味を持って、自分のアイデンティティが形成されるのを実感してきました。僕にとって、成長していく中で「映画」というものの存在がすごく大きかったんです。

そうした体験があった上で、この世界で働きたいなと思いアルバイトから始めて今も映画館で働いているのですが、たとえそうじゃないとしても、趣味だったり生き方だったり、そういうものにすごく影響を与え得る仕事だと思うし、そういう存在でありたいと思っています。それが一番の喜びかなあと思います。



チア部:これまでたくさんの監督さんや俳優さんなど映画に関係する方に会ってこられたと思うのですが、会えて一番嬉しかった方はどなたでしたか?


木幡さん:本当にどなたも会えて嬉しい方ばかりでしたけど、敢えて挙げるとすれば…会った時本当に心臓が飛び出すかと思った人は、イエジー・スコリモフスキさんです。って、ご存知ですか?ポーランド出身の映画監督です。

京都でポーランド映画祭が行われたときに来日されていて、テアトル梅田でも関連企画としてポーランド映画(『灰とダイヤモンド』1958年/アンジェイ・ワイダ監督)を上映しました。その際に当館にも来てご登壇いただいたんですね。そのときは、もう本当に震えるくらい緊張しました。海外の、しかも大好きな監督にまさか会えるとは思ってなかったんです。それはすごく印象に残っています。

それから、つい先日来てくださった井浦新さん。ご存知かもしれないですが、新さんは積極的に劇場側とコンタクトを取ってくださる方で、またファンサービスもすごい。

新さんは若松孝二監督のいわゆる若松組の俳優さんだと思うのですが、若松監督と縁深いテアトル新宿からの流れでテアトル梅田にも来てくださったんです。スタッフともお客さんともフランクにお話しされますし、写真撮影もサインもどんどんしてくれて、時には売店に入って自ら物販をされることもあるそうです。

それは若松監督が「全部自分でやれ」、「事務所とか配給とかじゃなくて、俳優部も自分たちが作った映画を届けるために一人ひとりが尽力しなければいけない」ということをよく仰っていたみたいで、それを未だに実践している方なんです。

先日来てくださった際は前日撮影で京都にいて、「明日撮休になったから行けないか」と配給会社の方づてに連絡をくださり、こちらも是非!ということで。その日は新さんが出演している『こちらあみ子』の楽日だったということもあって、急遽ご登壇いただきました。ご登壇後もサイン会で長い間ずっとお客さんとコミュニケーションを取っておられました。

これまで舞台挨拶等でお迎えした俳優の方々も本当に情熱を持って色々尽力してくださいましたが、新さんは飛びぬけています。以前からそのような方だと知ってはいましたが、映画や劇場、観客に対して愛を持って接している様子を目の当たりにして、改めて感じ入りました。


チア部:私もそれを前日に知って、めちゃくちゃ行きたかったんですけど席が取れなかったです(泣)。


木幡さん:そういう方もたくさんいらっしゃったと思います。本当にロビーが人であふれて、影響力の大きさと人気の高さも感じました。そうやってロビーが混雑した感じになることは年間でそうあることじゃないし、ここ数年はコロナ禍ということもあってそういった感じが久しぶりで嬉しかったですね。うちの場合ロビーがあまり広くないので、人がいっぱいになるとトイレに行くのも大変になるのですが(笑)。

井浦新さんのサイン入り丸机!置いてあるのでどなたでも見れます!貴重!


チア部:最後の質問は、私たちがずっと疑問に思っていたことです!

テアトル梅田に来ると外の入り口のところで音楽が流れていて、あの音楽を聴くと私たちは「テアトル梅田に来たな」という感じがするんですが、あれは劇場から流れているんですか?



木幡さん:それについて結構皆さん言ってくださるのですが、実はあれ、当館は全然関係ないんですよ。ロフトさんのほうでかけている音楽で、むしろ私たちもこれ何なんですか?と訊きたい(笑)。ロフトさんの営業時間中、当館のスタッフはあれをずっと聴くんですね。入社して当初は「ああ、テアトル梅田だ」という感じがするんですけど、しばらくすると、ちょっと…大げさですけどあの独特のリズムに、みな気が狂いそうになる(笑)。とにかくうちは関係がなくて。ロフトさんに聞けばわかると思うんですけど、敢えて聞いたことはないです。

テアトル梅田で上映された数々の映画のポスターと、支配人の木幡さん。



インタビューは以上になります!

こちらは(前編)で、(後編)は私たちチア部メンバーの思い出や鑑賞記録などを載せたいと思っています📝近日公開予定です!!


テアトル梅田のホームページ、「さよなら興行【テアトル梅田を彩った映画たち】」のページ、Twitterなどをチェックして、テアトル梅田に行きましょう〜〜🚗🚗🚗

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