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料理は誰が為にある。映画「ザ・メニュー」

公  開:2022年
監  督: マーク・マイロッド
時  間:107分
ジャンル:サスペンス/コメディ
見どころ:スモア

がつんと、食べたいですメ~

料理というのは、高ければいいというものではありません。

安いものは安いなりの努力があったりしますし、学生さんにお腹いっぱい食べてもらいたい、なんていう想いがのっかっていてその価格になっているなんていう食堂もあります。

一方、何度となく訪れるグルメブームで作品といえば、「美味しんぼ」であったり「クッキングパパ」あたりは、不動の名作といえるでしょう。

食べものに関係する作品は数多くありまして、食とはいったい何なのか、という命題の中で、切磋琢磨されてきたジャンルでもあります。

現実世界でいいますと、やはり、お金があると美食に走るというのが、お金持ちの考え方であり、億万長者がカップラーメンで済ませるっていう話は、あまりききません。
(ウォーレン・バフェットのような特殊な方はいますが、そういうのはおいておきましょう)

さて、前置きが長くなりましたが、料理は残さず食べることであったり、味わって食べるっていうのは、ある種のマナーです。

そこには、高いお金を払っているとか、払っていないとかは関係ないはずですが、グルメブームが起こる中で、高くて有名なものを食べることそのものがステータスになってくると、本来の意図するところからは、離れていってしまうのもまた、世の常といえるでしょう。

「ザ・メニュー」は、そんなグルメブーム真っただ中にあって、自称美食家であったり、自称評論家が陥りそうな地雷を踏みながら、最高の料理人による、怒りの鉄槌が下される物語となっています。

前半は軽く紹介しつつ、最後に、軽いネタバレを挟みながら書いていきたいと思います。

料理は蘊蓄を食べるもの?

選ばれたものしか食べることができないレストランに招待されたアニャ・テイラー=ジョイ演じる主人公のマーゴは、一緒に来ている男性にべったりです。

特に食べ物に興味はなさそうですが、男の方は、料理が出されるたびに彼女に解説をはじめ、いかにその料理が貴重なものかを語るのです。

口に入ってしまえば同じだ、という考えで食事をする人も多いかと思いますが、グルメな人間からすると、周辺情報も含めて食べるというのはある意味仕方のないことです。

「ザ・メニュー」に登場するレストランは、そのコンセプトが行き過ぎてしまっており、一人の絶対的なシェフの元、彼に心酔しきった人たちによる、軍隊のようなレストランとなっています。

現実世界においても、洒落たレストランのコース料理なんか頼みますと、一口か、二口で終わってしまいそうな料理が何品か並んでいたりして、食べた気が全然しないな、と思ったりしませんでしょうか。

皿とも思えないような石の上に少しだけ乗せられた魚や貝を食べて、「海をいただいているのね」というお客。

裸の王様を思い出すような、言ったもん勝ちな世界を感じますが、そんなグルメな人たちに対する、極大の皮肉が本作品には込められています。

グルメ・ホラー

ひたすら、コンセプトに特化した料理を食べてありがたがる人たちを揶揄するだけの話かと思っていると、アニャ・テイラー=ジョイ演じるマーゴは、観客と同じように、そんな様子をバカにしています。

想像の産物かもしれませんが、自分の店の料理の食べ方に極端にケチをつけてくるようなお店というのもよく聞く話でして、ラーメンの食べ方ひとつとっても、こだわりを押し付けてくる店というのも聞きます。

そんな感じで、「ザ・メニュー」のシェフもまた、自分の料理に対する想いや、コンセプトを語り、そして、それを聞いていないお客さんを注意したりします。

作品をみていくうちに、シェフがイライラしているのがわかってきます。

庶民的なものいいをするのであれば、せっかくお母さんがつくってくれたご飯に対して、味が薄いだの濃いだのケチをつけて怒られるように、また、せっかく、よいものを買ってきているのに、ありがたがらないと不機嫌になられたりすることもあったりするのと、じようにシェフの態度がどんどん怪しくなっていくのです。

なんとなく気まずい中、ジャンルがグルメものから、ホラーもの、そして、サスペンスものへと変化していきます。

突然のマンハント

ここからは、ネタバレを含みますのでご注意願います。

シェフが本性をあらわしてからは、いきなり、物語はマンハントものへと変わります。

突然、男性が強い社会でもある料理界隈の女性への非難としてか、男性に対して、いわゆる人間狩りが始まったりします。

こうなってくると、もう食べ物へのリスペクトは一切感じられなくなりますが、そんなことはどうでもいいことです。

アニャ・テイラー=ジョイ演じるマーゴのアクションシーンもみることができますので、アニャファンは是非みていただきたいと思います。

絶海の孤島で逃げることのできない状態で、主人公であるマーゴはどうやって脱出するのか、というのが、後半のポイントとなってきます。

色々なところで言及されているところですが、本作品をみると、どうしても食べたくなるものがあります。

高級なレストランでだされるコンセプトや、蘊蓄にまみれた料理ではなく、もっと庶民的で、わかりやすくお腹をいっぱいにしてくれるアメリカのソウフフードの一つ。

「ザ・メニュー」を見たあとは、是が非でも食べたくなるでしょう。

そして、それは、同時に主人公が助かる道でもある、というところが皮肉が聞いていてよいところです。

話は全然違いますが、その脱出の仕方・考え方は、「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」において、墜落するのが確定している飛行機でどのように助かるのか、という究極の選択をせまられる主人公の抜け道のような脱出に似た感覚だった、というところが、個人的には面白かったところです。

「ザ・メニュー」にでてくる人たちは、性格的にはかなり悪い人たちが多いと思いますが、殺されるほど悪い人たちには思えなかったりします。

そして、「ミッド・サマー」のような、殺し方も含めてなんだか、現実離れした方法だったり、思想だったりしますが、出された料理はちゃんと喰え、といういたって当たり前のマナーと、命の使いどころの大切さがわかる作品となっています。

あと、お腹いっぱい食べたくなる作品ですので、お腹がすいているときには、気を付けてください。


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