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コッツウォルズ 憧れのイギリスカントリーサイド2

緑、黄色、紫。この色がそれぞれ自然の中に作り出されているとしたら、どういう光景になるか想像できるだろうか。

緑は、木々の葉や芝生、草の色。黄色は一面に広がる菜の花。そして、紫は心地よい香りを運んでくれるラベンダーの花。コッツウォルズでは、これら全てを目にすることができる。前回に続き、イギリスのカントリーサイド、コッツウォルズのお話。今回は自然や庭園の美しさを紹介したい。

春から夏にかけて、コッツウォルズのエリアを車で走っていると、木々の緑が視界に飛び込んでくる。道の両側の大木から緑の葉がぐんぐん伸びて、緑のアーケードのようになっているところもある。

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爽快な緑に癒されていると、今度は明るい色が目に入る。見渡す限り一面黄色い菜の花が広がっている。まるで菜の花の絨毯が敷き詰められているようだ。脇道に車を停めて、黄色い世界を写真に収める。

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車を進めると、今度は緑の中に白いものたちが見えてくる。羊の群れだ。コッツウォルズとは、そもそも「羊の丘」という意味があり、昔から羊毛産業で栄えていたところなのだ。

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そんなありのままの自然の光景が、のんびりとのどかな気持ちにさせてくれる。一方で、綺麗に整えられた緑もある。

イギリス人がガーデニングが好きだということは広く知られていることだろう。イングリッシュガーデンという言葉を耳にしたことがある人も少ないないと思われる。コッツウォルズのようなのどかなカントリーサイドでも、いや、カントリーサイドだからこそ、木々や花々で美しく彩られた庭園が作り出されている。

私は、スノウヒルマナー&ガーデンというところを訪れた。ここは、16世紀に建てられ、第1次世界大戦後、チャールズ・ウェイド氏のお屋敷となった。ウェイド氏は建築家、工芸家として知られており、小物や楽器など様々なものを収集し、このマナーハウスに収めていた。見学者がじっくりと収集物を眺めることができるように、館の中は暗くミステリアスな雰囲気を保っていたらしい。そのため、ウェイド氏自身は、庭にある司祭の家で生活していたと言われており、ちょっと変わり者だったようだ。その彼の収集物の中には、日本の侍の甲冑もある。彼はこのマナーハウスをナショナルトラストに寄贈した。ナショナルトラストは、前回バイブリーのアーリントンローのところでも少し説明したが、美しい田園風景や歴史的価値のある建物を、国民の共通遺産として残そうという目的で作られた民間機関だ。英国には500以上ものナショナルトラストの施設があるという。

スノウヒルマナーの敷地は、想像以上に広かった。お庭にたどり着くまで、小高い緑の丘を歩いていく。目の前には大きなリンゴの木があり、遠くには羊の姿も見える。憧れのカントリーライフ。

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やがて整えられた庭園にたどり着く。庭は、建築家のベイリースコット氏とともに、開放的で見通しの良い空間を目指して作られたそうだ。アリウム、サルビア、ゼラニウムなど色とりどりのお花が咲く心地よい庭園。

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そうかと思えば、なぜか、ドラゴンと戦う戦士が鳴らすベルやたくさんの木彫りの赤い兵隊がついている風車といった、独特の飾りも見られる。ウェイド氏の目には、日本の侍の甲冑は、さぞかし好奇の優れものとして映ったことだろうと思われる。

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このマナーハウスの近くに、スノウヒルラベンダーファームがある。ここが、冒頭に申し上げた紫の世界を体験できるところだ。

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ラベンダーといえば、アロマの香りを楽しめるハーブとして有名だ。その紫の小花が満開となったラベンダーが一面に広がる畑は、とにかく圧巻の景色だ。見渡す限り紫色の幻想的な世界が広がり、風に乗って幸せな香りが運ばれてくる。自宅の庭先でもラベンダーを育てることはできるが、これほどまでにたくさんのラベンダーに囲まれることは、都会の日常生活では難しいだろう。6月半ばから7月頃が見ごろということだ。さらにこのラベンダーファームのショップでは、ラベンダーのアイスクリームも売っている。

カントリーサイドでは、宿泊するところもまた魅力あふれている。都会の洗練されたホテルも良いが、アンティークの家具が設られた田舎のホテルは温かい心地よさがある。私たちは、モートンインマッシュという村のマナーハウスホテルに泊まった。先ほども出てきたこのマナーハウスとは何か。初めて聞いた時は、礼儀作法を身につけるための家かと思ってしまったが、そうではない。中世ヨーロッパでも、領主が私有地を経営し、農民が保有地を耕作するという封建制度が発達していた。その領主の私有地を荘園、英語でマナーと呼んでいるのだ。つまり、荘園の領主の屋敷となっていたのがマナーハウスと呼ばれている。そのような、古い様式が残された家屋をホテルに改装しているマナーハウスホテルは、ホテルの入り口やロビー、部屋などあちらこちらに昔ながらのカントリーサイドの雰囲気が漂っている。

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泊まった部屋では、クマのぬいぐるみが待っていてくれた。なんとも微笑ましい心づいかい。そのクマは、フロントで購入することもできる。

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そしてここのホテルもまた、緑が心地よく整えられたお庭があった。このホテルはウェディングの場所としても人気だということだ。

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色彩豊かな自然が大切に守られ、またそれぞれの家にも可愛い工夫がされているコッツウォルズ。何度でも訪れたくなるイギリスのカントリーサイドだ。

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