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【中世欧州料理試作】(8)牛肉のシチュー

このコラムでは、過去試作してご紹介した中世ヨーロッパのアレンジ料理についてちまちまご紹介します。
全部実試作つき&単純に自分の感想や所感なども書きなぐってます。基本的に全部美味しいんですけど、一部「?!!?(なんともいえない味)」ってものもありますので、そのあたりも正直に書いときます。



希少?な牛肉を使った料理

現在では牛肉を使ったビーフシチューは西洋料理のド定番ともいえる存在でして、ちょっとオサレな洋食屋さんにいけばだいたい置いていることが多いです。普段家で作ることができない、ちょっと生クリームを添えた高級感ある味がまたたまらなくいいっすよね…(涎)。
今では牛肉を使った料理はごまんとありますが、中世ヨーロッパの料理指南書で記録されている「牛」を使った料理はそこまで多くありませんでした。プラスして地域によってあるないという差もあるので、けっこう当時の肉料理は奥が深いのよネー、と個人的には思っています。

牛肉料理は主にイングランドでは記録が残っており、南欧方面ではほとんど見られません。一方、間にあるフランスもないことはないのですが、どちらかというと鳥料理が多めなのかなー?と思います。試作やってきた感覚なので、実際のところはもう少し諸々確認する必要はありますが。

味は大変どシンプルです

それでは、材料をざっくり出してみます。分量は今回カットします。

<材料>
牛リブ肉
ドライメイス/クローブ/シナモン/ペッパー
グレイン・オブ・パラダイス
パセリ
パン粉(パン屑)

玉ネギ
赤ワインビネガー

「深き西洋中世のレシピ総集編(2023/コストマリー事務局)」より抜粋

端的にまとめると「お肉+スパイス+玉ねぎ+赤ワインビネガー+その他」を使って、じっくりコトコト煮込む、というものです。一応簡単な工程ではあるんですが、「肉はよぉーく煮込む」のが大きなポイントとなっています。
作り方では、まず肉単品だけを事前に下茹でし、しっかりと火を通してから他の材料と加えてさらに煮込んでいます。現代のビーフシチューの一般的なレシピを見ても、まず最初に肉を焼いて火を通してから煮込んでいる工程がおおいですが、だいたい原理は同じです。

牛肉に限らず、他の肉に関しても相当煮込んだり焼いたりしてしっかりと火を通していたのはどこの地域でも大方同じだったので、生肉で食べていたということは昔もなかったのかなと思います。おなか痛くなりますしネ。

「天国」の名を冠する高貴なスパイス

材料一覧の中に見慣れない言葉があるんですが、ご存じの方はスパイス大好きっ子っすね(確信)。
「グレイン・オブ・パラダイス(GRAINS OF PARADISE)」。和名「ギニアショウガ」ですが、味はまるでコショウです。ギニア原産で、その不思議な味から輸入元を特定させないぐらい貴重とされていました。13世紀頃~ヨーロッパやアラビア方面で使われ始めたとされ、かのエリザベス1世は相当気に入っていたようです。一国の女王が好んでいたんですから、相当価値的にもお高かったんじゃないかと思います。今でもそうですが(白目)。

グレイン・オブ・パラダイス(自宅保管分)。とっても小さな実なんですが味はそこそこスパイシー。割ると白い粒が現れます。

このグレイン・オブ・パラダイスですが、実に不思議な食感で味はコショウっぽいんだけど中身をカリっと噛んだら少しフルーティーな味がするんですよね。今でも大変貴重なものなので、試作検証の時でもよっぽどのことがない限り使うことはないです(もったいないもん)。

中世ヨーロッパではスパイスを多用していた、というのはよく言われることなんですが、意外と吟味した上で慎重に使っていたことも、当時の料理指南集を見た感じでは読み取れるなー、というのが素直な感想です。なんでもかんでもバシバシ使っていれば、そりゃ家計がまっかっかになりますよねん。輸入モノってお高いですし。

牛肉のシチュー(15C イングランド伝)。見た目があまりにも素朴すぎたので上からあまったハーブ(ディルかな?)を添えてます。味はシンプルですがそこそこ良いです。

肝心の牛肉のシチューのお味ですが、かなりどシンプルな塩味です。ビネガー(酢)を使っているので酸味もあるんですが、現在のようなこってりとした濃厚な味とはそこそこかけ離れているというのは申し上げておきます。デミグラスソースとかもっとずぅーっと後の時代のものですしネ。

最後までご一読頂き、有難うございました(^-^)。


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