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やっぱり浅草キッドは最強だよ!

たけし軍団の三軍メンバーから出発した漫才コンビ・浅草キッドは,誰が何と言おうと,私にとっては最強&最凶なコンビなのだ。6月に55歳となった東京都新宿出身のボケ担当・玉袋筋太郎さん(以下,玉ちゃん)と,間もなく還暦を迎える岡山県倉敷市育ちのツッコミ担当・水道橋博士さん(以下,博士)のコンビだ。今年は二人にとって激動の年となった。それは,初孫が誕生して玉ちゃんがおじいちゃんとなったり,博士があれよあれよという間に参議院議員となってしまったりしたからだ。


私は,日本テレビの「スーパーJOCKEY」も,テレビ朝日「ザ・テレビ演芸」も,ほぼ見ていたから,自然と浅草キッドには親しみを覚えていった。でも,本格的に二人の漫才やトークを意識したのは週刊アサヒ芸能の「アサヒ芸能人」にハガキ投稿を始め,ニッポン放送の「浅草キッドの奇跡を呼ぶラジオ」を欠かさずに聞くようになってからだ。平成5年の春頃のことである。

地方の大学に通っていた私は,折からの漫才ブームの中でも特にツービートの洗礼を痛いほどに受けた。テレビ番組で繰り出される執拗なほどの山形イジメと,我々の建前に対する激しい揺さ振り。それは,とてもとても新鮮で刺激的なことだった。そして,ダディ竹千代の「オールナイトニッポン」を聞こうと,ラジオのスイッチを入れた瞬間に飛び出してきたたけしさんの生き生きしたマシンガンのようなしゃべりに吸い込まれていった。歌に小説にドラマに…と多面的に活動し,多くのレギュラー番組を持って活躍するたけしさんのもとに弟子志願者が集まり,たけし軍団が結成されていったが,正直言うと,たけし軍団はリアクション芸や肉体芸的な性格が強く感じられ,さらにツービートの漫才のように本格的にしゃべれるお笑い芸人がいればなぁと思っていた。そこに登場したのが,浅草キッドだったのである。二人には,浅草フランス座での修業という基礎があったからしゃべくりができたのだと思う。


福島市のお米消費拡大イベントにて(1997年)

ツービートが格闘技や芸能ネタでしゃべったらこうなるだろうというのを体現してくれたのが,浅草キッドそのものだ。世間のひんしゅくや放送コードぎりぎりのところで,絶妙なたとえを交えてネタを展開していくスピード感に惚れた。東京FM「ビートニクラジオ」などの深夜ラジオで二人が繰り出すはちゃめちゃなで,ご機嫌なトークに日々の疲れも忘れるほどだった。二人の漫才は特定のライブや舞台のために向けて書かれ,磨かれていったものが多く,何度も何度も上演されたものが少ない。そう,一回こっきりのネタにあふれている。神戸連続児童殺傷事件や北朝鮮ネタのようなものが多く,生で聞くのが基本である。そのため,YouTube等で発掘できればホントにホントにラッキーである。一時期,博士が自身のウェッブページで漫才台本を公開していたことはあるが,現在,検索してもなかなかキッドの漫才を文字起こししたものには巡り合わない。テレビ東京の「浅草橋ヤング用品店」やTBS「未来ナース」「週刊アサ秘ジャーナル」を始めとする深夜帯の番組,フジテレビ「SRS」などに出演したり,「芸能界地獄の問題集」や「お笑い男の星座」等の著作を行ったりと,浅草キッドというたぐいまれなる個と個の化学変化が世間に認知されていった。「新宿育ちの野生児」な玉ちゃんと,「スーパー児童会長」の博士という一見正反対と思えるキャラクターがコンビになったからこそ我々がスリル感を持って味わえる笑いになっていると確信している。

2018年にたけしさんがオフィス北野を独立したことをきっかけに,玉ちゃんはフリーの道を,博士はオフィス北野が商号変更したTAPに残ることとなった。そのため,今のところ,二人での共演はほぼない。玉ちゃんはBS-TBS「町中華で飲ろうぜ」,TBSラジオ「たまむすび」(金曜レギュラー),CBCラジオ「北野誠のズバリ」(月曜月1レギュラー)などで大活躍である。玉ちゃんの魅力は,「当意即妙」である。その場その場の雰囲気を肌で感じ取り,絶妙なタイミングで玉ちゃん流のたとえを挟み込める点にある。若い頃に培った雑学や経験が沢山の引き出しの中に仕舞われていて,それを惜しげもなく自然に出せることだ。そして,周りを知らず知らずのうちに自分の仲間にしてしまう点だ。一緒にラジオ番組に出演しているTBSの外山恵理アナウンサーが玉ちゃんを「マムちゃん(毒蝮三太夫)の後継者」と称するには理由があるのだ。一方の博士は2021年の地上波レギュラーゼロの状態からライブイベント「アサヤン」(阿佐ヶ谷ヤング用品店)を立ち上げたり,「博士の異常なる対談」を始めとする人気YouTube番組を制作していったりし,この7月にはれいわ新選組の参議院議員となった。博士の強みは「受験生のような下調べ」だ。対談相手等を調べ尽くして,全方位から突きまくることが強みである。



政見放送中の玉ちゃんのつぶやき

選挙期間中,博士がれいわ新選組の政見放送に参加した。その際,玉ちゃんが政見放送中にツイートした言葉を,一部のマスコミが勝手に悪意で解釈して,「二人は決別した」のような記事が書かれたことがあった。玉ちゃんがつぶやいた「さらば相棒」はARBの曲が元になっている。夢破れて東京から故郷へ帰る相棒への応援歌なのである。この曲には「お前と俺に乾杯」という歌詞も登場する。これは,玉ちゃんなりの博士へのエールなのだ。条件さえ揃えば,浅草キッドの素敵過ぎて,過激すぎる漫才がまた見られるはずだ。


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