ハズビンホテル感想-贖罪堪んねぇ-


はじめに


ハズビンホテルを観た。
結論から言うと癖にぶっささった。
ハム太郎「癖っ!」

基本ネタバレ前提なので読む人がいたら注意

汚いディズニーとか下品カートゥーンみたいな話を聞いて、気になってはいたけど置いていた。まぁええやろと。別に面白いだろうけどサ…そんなキャラがいいとかディズニーパロだとかそれだけではまぁ刺さらんだろうと…。

やられたわ。
これ綺麗に入ったわ。癖のストライクゾーンに。
地獄のホテルで繰り広げられる物語、ディズニー。
てっきり「スイート・ライフ」みたいなホテルコメディかと…
それか「パンティ&ストッキングwithガーターベルト」みたいなお下劣アクションコメディかと…

違った。
全然違った。コンプラぎりぎりを攻めるテクニカルな作品だったし、めっちゃ今っぽい。ディズニーができないことを見事にやってる。
ディズニーがディズニー故に出来ないことをやってる。
パルワールドがポケモンに出来ないことを提供してるのと同じ。
いい作品だったわ…。

いやでもね。こんなのは別にもうどうでもいい。
この物語はね。赦しの物語なワケ…そこがね。癖にストライク。
ハム太郎「癖ッ!」

※基本的に細かい説明はないし、基本的に脚そ考。

ーハズビンホテルは赦しの物語であるー

赦しについて

ハズビンホテルはね。僕にとっては赦しの物語です。
赦しっていうのはすでに起こってしまった過ちや罪を認め、それを許容し、罪をそれ以上追求しないようにする行為なわけですが、これってすごく難しいことだと思っています。
なにか人から害をなされたとき、謝られたとしても、赦さなくてもいいわけです。ただ距離を取って、心の平穏を保てばいいわけです。そっちの方がずっといい場合だってあります。赦しっていうのは、それだけで凄いんです。
心の底から赦すとなると、もっとすごい。これは尊いことなんです。

そしてね。赦しっていうのは最低2人必要なの。
罪、過ちを犯し、謝罪を行った人と、赦す人。この共同作業なの。
罪科によってはそんな簡単な話じゃあない。けど、罪と赦しの関係ってとんでもなく密で誰にも介入できないものなんですよ…。
それだけに僕は贖罪、赦しというものに再生や誕生のようなものが持つものに似ているけど、どこかほの暗いパワーや、鈍い輝きを感じています。
今風に言うとエモさを感じます。

あらすじとポイント

さて、本題です。まずは何となくのあらすじ。
ハズビンホテルっていう物語は、地獄のハズビンホテルというホテルを舞台に繰り広げられる物語なんですが、この地獄には1年に1回地獄住人大杉ぃ!!という感じで天国から天使の軍が来て住人を虐殺していきます。
そんな惨状に対し、地獄のプリンセスであるチャーリーは心を痛め、地獄に更生施設であるホテルを作りどうにか地獄の住人を更生させ、天国との調和を図ろうとするというものです。
このチャーリーちゃんの周りには悪の強い住人たちがおり、チャーリー自身の性質も合わさってそううまくいかない。けど物語の中、少しずつ彼女を中心に住人に変化が起こっていくわけです。
そしてそれに合わせて、天国との関係、戦いもまた…

みたいな。そういう感じで進みます。

ここで大事なのが、チャーリーは地獄の罪人の更生を進めようとしているということです。ここがね、めっちゃ大事なポイント。
チャーリーちゃんは別に無条件に天国側に虐殺すんなとか、平等みたいなのを求めてないのよ。いい人間にするから、なれるから歩み寄ろうよ!っていってるわけですよ。つまり無条件の赦しは求めていない。
赦しがそんな軽いものだと思ってるわけではないわけですよ。
ここがチャーリーというキャラクターのいいところです。
お気楽なお姫様じゃあねーわけ。頭お花畑だけど、舐めてはいないワケ。
ここはずっと一貫して進むので、否応なくこのアニメには贖罪、更生、赦しというものが付いてくるわけです。ぁぁぁぁぁぁぁぁたまらん。

けどね、別に暗いわけじゃあないの。地獄の生活や地獄の罪人なんてみんな狂ってるのよ。そこらで人が刺されてるし、隣の家を覗く機械が売り出されたらみんな買うし、薬が横行してるしゲロやクソは当たり前。
みんな口も素行も悪い。終わってる。それが基本ポップ。暗くない。
だけどね、それだけに悪が当たり前の世界で行われる良くなろうという行為はあまりにも尊い。

ごめんなさいから

一度はホテルにやってきて暴れた結果、ホテルの壁を壊したりなんやらし、その後スパイとしてホテルにやってきたペンシャス。
そんな彼を迎え入れるチャーリー。
しかし一度襲われているので住人は良くは思いません。
そんな住人にまずは謝ってみようとチャリ―は言います。

「謝罪の仕方。いい人になる最初の一歩は間違いを認めること」

チャーリーのいい人像もなかなか偏ってはいますが、いい人にしようとする姿勢が発揮されます。また、同話でスパイがばれた後、険悪な状態でチャーリーは改めて言います。ここはミュージカルなので正しくは歌います。

「ごめんなさい。そこから始めよう。」

しかしペンシャスはクズの自分は赦されないと言います。
彼にさらにチャーリーは謝罪の大切さを説きます。

「償うために険しい道でも、ここから始めよう。ごめんなさい。」

ペンシャスは赦されないかもという思いを超えて謝罪をします。
赦しのため、彼は作品で最初の一歩を踏み出しているのです。
ペンシャスあんた最高に輝いてるよ…。
そんな彼は確かにその後赦されていき、明確な形にそれが表れます。
最高…さいこうだよ…

ごめんなさいがサ…大事なんだよ。だってさ、赦してやるには謝罪がいるし、謝罪があるから許せることもあるの…
あくまでもさ、可能性なの。赦してもらえる可能性が0ではないワケ…
赦されないかもしれない。ペンシャスはそう思ってるわけ。わかるよペンシャス。怖いよなぁ。謝るって勇気がいるよなぁ。けどさ…それが大事なんだよ。大事なんだよ…。
それにさ、忘れないでくれよ…これはさ、地獄で行われてんだぜ。
謝るってさ、難しいじゃん。現世でも難しいのにさ。
地獄であやまれるって多分相当凄いことなのよ。

LOSER BABY

最低のサイコパス野郎に契約で縛られ、ポルノスターとしてこき使われるエンジェル。彼のフルネームのエンジェル・ダストは死因となったクスリの名前という最高の設定を持つ彼ですが、彼がどん底であがいてるんですがとんでもなくこじれている。僕の推しは彼です。

彼がメインに据えられる4話「仮面」は人気な話数らしいですが、この話めっちゃよかったです。歌と映像が最高っていうのとか、ハスク(ホテルのバーーテンで落ちぶれた上級悪魔)とどん底でもいいじゃないかと歌うLOSER BABYはもう最高の一言に尽きます。
でもね。そのあたりは探せば感想出てくると思いますし、観れば聴けば最高なのはわからされるはずなのでいいんですよ。
この話の真骨頂はラストシーン。エンジェルが吹っ切れてホテルに戻って来た時のシーンですよ。
エンジェルはですね。DV雇用主がいるポルノビデオ撮影現場(エンジェルの仕事場)に、チャリ突(チャーリーが来る)されるという惨事に見舞われるのですが、さらに悪いのはチャーリーが地獄のプリンセスという権力を持つボンボンだということ、また大失敗して撮影所を滅茶苦茶にしてしまったことなどでDV雇用主の機嫌を損ねてしまいます。
もちろんその怒りはエンジェルに向き、エンジェルはとんでもなきこき使われてしまいます。そしてもちろんチャーリーにも苛立ちを覚えてしまいます。まぁこれは順当です。チャーリーね…善意なんだけどね…。

その後自暴自棄になってたところを、ハスクに助けられ、一緒に歌い語り、ぶっぱなして吹っ切れた彼がホテルに戻った彼。そう問題のシーンです。
今回の赦しはこのエンジェルがあたえるんですねぇ。

「ああもうごめんなさいエンジェル二度とあんなことしない絶対絶対」
「チャーリー。いいよ。分かってる。ありがとう。気にかけてくれて」
「エンジェル言ってくれた…。私を赦してくれるって。こんな素敵なことある?」

分かりますか…エンジェルに対して謝るチャーリーは切実に謝っています。
大泣きしながらですよ。必死に謝ってるんです。そして安心の号泣。
エンジェルも適当にいなすとかではなく。「いいよ」とした上で、気にかけてくれたことを感謝しています。尊い。僕の推しが偉い…尊い。
みてくれ皆。あれが俺の推しのエンジェルだ。あいつは人を赦せるんだ…。
どん底にあっても人を赦せるし、人の思いを感じ取れるんです…。ぅぅ…。

そしてチャーリー「エンジェル言ってくれた…。私を許してくれるって。こんな素敵なことある?」というこのセリフ。わかりますか…!これ激エモ。
チャーリーはね、人を赦すこと、人に赦されることの難しさを知ってるんですよ。だから怖い。赦されないのが当たり前にあり得るから…。
そうじゃないとこんな反応は出ない。情緒がやばいだけかもしれませんが、赦されなければもう関係性は続けられないと分かっているんです。表面上の関係になってしまう。しかし謝罪と赦しを口にした関係は特別です。一つの関係性が強く生まれるのです。ああああああああああああああぁぁ!!。
このシーン良かった………まじで。ここで限界化しました。神回です。

そしてこの後エンジェルはどん底の中でもドラッグを避け、ちいさなメイド(激やば)が危ない時にはDVサイコ雇用主クソ野郎に反抗するという変化を遂げているのですよ…エンジェルお前立派だよ…。

この姿を見てるのは天国で会議中のチャーリーとヴァギー(チャーリーの恋人)、そして天国の代表側。ここで明かされる衝撃が、天国側の誰も「天国に来る条件」を正確に把握していないこと、ヴァギーがもと天使で虐殺に参加していたということ(これは視聴者には明かされている)。

つまりね。更生に対しての赦しが明確に設定されてないのよこの世界は…
これは激おこですよまじで。構造がとんでもなく不条理で不誠実。ここで明らかになる構造上の面白さは別で書くけど、ここはヴァギーについて。
これが次の赦しについてなのよ…。

言葉ってものは…安っぽい。

ヴァギーの秘密を知ったチャーリーはオコです。
イライラチャーリーかわいい。
チャーリーは来る天国からの虐殺に備え戦力を整えにヴァギーは天国からの軍勢を殺すすべを得に行きます。
ヴァギーは大きな秘密を隠していたことに罪悪感を抱きます。
色々あってホテルを最初に狙うと言われてるので、ホテルの仲間たちには、残らなくてもいいと言い放って出かけていきます。
最早ホテルにいるのは更生どころか危険になったので、自由意志にゆだねるわけですね…ぁぁいいですねぇ。
ヴァギーはね、ずっとチャーリーのために何でもやる覚悟で尽くしてるのよ…いい子なの。でもね。チャーリーは隠し事されてたことに戸惑いは隠せない。うまく事が運ばず、なんか色っぽい人を食べる上級悪魔のマダムに話を聞いてもらいます。

「あのおかしなホテルを建てたのは贖罪のためなんでしょ?」
チ「そうよ」
「多分その子も、償いたかったのよ。きっと」
チ「私がセカンドチャンス信じてるの知っててなんで隠すの?」
「誇れないことをしたって認めるのは難しいの特にそれが、好きな相手を傷つけていたら。そう彼女は…ダメよね?まちがった。でもそれはここにいるみんなそうよ。私は学んだのよ。言葉ってものは…安っぽい。でも行動は…真実を語る。それじゃあ、彼女の行動はどう?」
チ「私やみんなでやってることを信じてくれた。今も私たちの努力を守る方法を学んでくれてる。なのに私はホテルの良さをつたえられない」
「いつもはホテルをどう説明しているの?」
チ「歌うのよ」

あああああああああああああああああああああああぁぁぁぁっぁぁぁぁああああああああああああああぁぁぁぁああぁぁぁぁあああああぁぁぁっぁぁぁぁっぁぁぁぁっぁぁああぁぁぁあああああぁぁぁぁぁっぁぁぁぁっぁぁ……

そう彼女は…ダメよね?まちがった。でもそれはここにいるみんなそうよ。私は学んだのよ。言葉ってものは…安っぽい。でも行動は…真実を語る。

やめてくぇぇぇぇぇっぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ…
灰になっちまう…俺が消えちまう…言葉が安っぽいなんて知ってるんだ…
けどさ…けど難しいじゃん…真実を行動で出すなんてさ…
ハズビンホテル…恐ろしい作品だぜ…

そんでさ、ヴァギーを信じたチャーリーは軍勢を手に入れて、並行でヴァギーは敵の殺し方を見つける。
二人はさ、門の前でまた会ってさ、恋人に戻るわけさ…
これだけでもう情緒がやばいのよ。もう消えちゃいそうなの。
けどさ、ホテルに残るかゆだねられた住人が迎えてくれるのよ。ホテルを要塞化しながらさ…

推し「ほら。誰がいるか見てみな?俺たち自分で戦うって決めたよ?」

あぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!!!!
自由意志と赦しが一気に襲ってくるるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!
過剰供給過ぎるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!

死んじまうよ…このアニメ堪んねぇよ。
もう許してくれよ…

細かいいろいろはもっとあるけどさ…このアニメはさ、赦しだよ。
書かなかったほかにもめっちゃあるよ。
何まだ読んでんだよ。もう一回観て来いよ。


ーまとめというか書き散らしー

赦しってさ、一人では得られないの。この作品のあれって共同作業なのよね。ごめんなさいから始めて、あいての受容で終わる。
そこまでが贖罪なのよね。チャーリーはそれをよくわかってる。
この作品はそれを貫徹してるいい作品よ…

更生すればいいやっていうのじゃあ終わらないのよ。
贖罪には、それを受け入れられたっていう終着が必要。
赦されないことはある。だけどもし赦されるのであれば、それは何かの形をとっていて欲しいよねっていう話。
地獄の罪人が贖罪を果たして、更生したとすればそれに見合った赦しがあるべき。バカみたいに都合のいい話だけども、この話はそういう明るさで贖罪を描いている。いい話だよ。お下劣だけど馬鹿にできないよ本当に。
どん底は人を堕落させるけど、最低だよなって言いながら肩組んで誰かと地獄生きてれば、そこは地獄じゃないし、その生活から生まれる言動は赦しに値するよなっていう希望がある。
az ben hel になってたもんな…最後。

ディズニーではなし得ない赦しの物語。
けどこの作品って別にディズニーなしでも語れる物語よ。
なんていうか、テーマを扱ううえで子供でも分かるシンプルさや可愛さで描いてあるからすんなり入ってくるし、単純だけど扱ってる問題はかなり大事だし。ぎりぎりを分かって踏み込んでるいいラインのひき方をしている見事さ。
パルワールドと同じ感じ。パルワールドはもうちょいアウト寄りだけど。
パクリかもしれないけどそれ以上に新しいものを生み出してる。
色々意見は確かに出るかもなんだけど、コンテンツの限界値を底上げしてる感じがするよね。

書いてみて分かったけどまだこのアニメかじれるわ。
まだ味がする。けど今回は赦しが刺さった。次は別角度で見てみたい。

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