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思い出のFC版ドラゴンクエストⅡ 第2回 果てしなき旅路

 前回に続き、ファミリーコンピュータ版『ドラゴンクエストⅡ 悪霊の神々』の思い出を語っていきたいと思う。
 前回は、ローレシアの王子(ローレ)・サマルトリアの王子(サマル)・ムーンブルクの王女(ムーン)の3人がそろったところまでお話しした。
 それでは、その後の3人の眼前に立ちふさがる試練の数々を、ご紹介していこう。ネタバレ全開なのはご了承くださいませ。

「ゲームは1日1時間」の時代なのに、安易な中断は許しません

 晴れて3人パーティーとなった彼らは、次の目的地へと進む。やはり死にやすいサマルと、まだレベルが低いムーン。ローレにとっては、守るべきものが増えてしまった。でも、それが彼の使命感をさらに高めたことだろう。さらに、日に日に強くなっていくサマルとムーンを見て、だんだん頼もしさを感じていったに違いない。負うものは世界級に重く、困難も数々あれど、喜びや楽しさもたくさんある旅だったのではないかと、勝手に想像しているところだ。
 そんな彼らは、ムーンブルク西のほこらから砂漠地帯へ。砂漠が広いんだ。画面が黄土色になる。新たな強敵が出てくるのをやっつけつつ、砂の大地を進む。西へ移動するんだ。ゴーゴーウェスト、ニンニキニキニキニンニンニン……すまん、ネタが古い。わが幼少期のドリフの歌だぞ。
 広い砂漠を抜けると、次の進路は北へ。らららホップそしてステップ北へジャンプ……という具合で(どんな具合だよ)、しばらく北へ進んだ後、ドラゴンの角という塔でジャンプしなければならない。
 北へもけっこう歩くんだよ。ずいぶん歩いて、やっとドラゴンの角にたどり着く。この先は海で陸地が途切れてしまっている。この塔の最上階から「風のマント」を装備した状態でジャンプする(飛び降りる)と、海の向こう側の陸地にたどり着くのだ。風のマントを持っていない場合は、当然ながら先へは進めない。このマントを取り忘れていたら切腹ものの失態である。
 さてさて、砂漠を抜け、北へ進み、さらには塔を一つ攻略して、やっとルプガナの町にたどり着いた。長い旅だった。やっと、武器や道具も買えるし、宿屋にも泊まれる。復活の呪文も……。
 いやいや、何を平和ボケしたようなことを言っておるのか。ファミコン版のドラクエⅡがそう甘いはずもなかろう。こんなところで復活の呪文なんか聞けないよ。おとといきやがれ。
 ……実は、わたしも今回、調べてみて驚いたのだ。たしかリメイク版ではルプガナで冒険の書に記録できた。しかしオリジナル版では、ここまで長きに渡る苦難の道を超えても、まだゲームを中断できなかったのだ。
 この町で船に乗れるようになるのだが、海を渡ってラダトームの城に行くまで、復活の呪文はお預けなのである。そりゃねえぜ。どれだけの時間がかかるというのか。しかも、当時は「ゲームは1日1時間」と言われていた時代である(なに、香川県だと? 違う。いわゆるゲーム条例ではない。高橋名人のお言葉だ)。これを守っていたら、われわれは一生ムーンペタから先へ進めないところであった。
 この過酷さ。まるで子どもたちのドラクエに対する熱意を試すがごとくである。この試練を乗り越えた者だけが先へ進むことができるのだ。このストイックさ。令和少年たちには厳しすぎるだろう。いや、われら昭和少年たちにも厳しかったけどさ。
 ところで、ちらっと名前が出てきたが、ラダトームである。これは前作『ドラゴンクエスト』に登場する地名だ。ここから前作の舞台であるアレフガルドへ行くことになるのである。前作をプレイした人にとっては、心が熱くなる瞬間であった。こういうことがあるから、やはりシリーズものはいい。

紋章を探す苦難の旅

 このゲームの後半は、紋章を探す旅となる。太陽・月・星・水・命の5つの紋章である。このうち、月と水の紋章の入手は、さほど困難ではない。
 太陽の紋章については、「炎のほこらにある」という情報は得られるのだが、その炎のほこらがどこにあるのか誰も教えてくれないし、やっとそのほこらにたどり着いても、「ここが炎のほこらです」という表示もない。ただ、火が灯っているので、「もしかして、ここが?」と、なんとなく想像がつくけど(「山彦の笛」という道具で、その場所に紋章があるかどうかも調べることができる)。
 問題は、太陽の紋章は、このほこらの中にないということだ。ほこらの外にある。ほこらのすぐ外に落ちているのだ。いや、ほこらのマップから外に出るわけじゃなく、ほこらのマップ内なんだけど、マップに表示されている外壁らしいものの外側を調べないといけないのだ。「太陽の紋章は炎のほこらにある」と言われたら、ほこらの外側にあるとは思わないだろう。それにしても、誰が落としたのかこんなところに落ちている紋章が、ほかの誰にも拾われなかったことに、ローレたちは感謝したことだろう(そもそも、紋章というものは落ちたり拾ったりするものなんだろうか?)。
 では次に星の紋章について。これは大灯台という塔にある。この塔の情報を教えてくれるのが、竜王のひ孫というキャラクターである。竜王というのは前作のラスボスだ。その関係者がヒントを教えてくれるというのは、少年誌連載漫画のようなエモい展開である。……エモいとか言っちゃったよ。おじさんが無理して若者の言葉を使うもんじゃないな。せっかく覚えた若者言葉がすでに死語になっていた、なんてことは日常茶飯事だからな。今でも思うよ、「マジ卍って何?」って。
 話を戻すが、大灯台はドラクエⅡの中でもかなりの難易度のダンジョンだ。広く、構造がわかりにくい。そして強敵の出現だ。よく話題に上がるのがドラゴンフライ。このトンボ連中が卑怯にも最大5匹で徒党を組んで登場、炎を吐きまくってローレたち3人を亡き者にしようとしてきやがるのだ。これでサマルがやられてリレミトが使えなくなるという事態が、全国のファミコンを所有する家庭で繰り返されたのだ。たかがトンボのくせに強い。仮面ライダーV3以来のトンボ強者である。いや、仮面ライダーV3・風見志郎を演じた宮内洋氏によれば、V3はバッタらしいが(ドラクエとは何の関係もない)。
 大灯台の中では、不思議な老人に出会う→老人の後についていく→しかしそれは罠で、グレムリン4匹に囲まれる→それに勝って紋章入手……という、このころのゲームとしては珍しい、ストーリー仕立てのイベントがある。
 そして命の紋章だが、これは後述するロンダルキアへの洞窟で発見できる。5つの紋章を集めることによって、ゲームクリアに必須な「ルビスのまもり」を入手できる。これを得るために、ローレたちはロンダルキアへの洞窟から一度戻って、ルビスのまもりを得てからまた地獄への入り口に挑まなければならない。なんと過酷な旅か。あのころのエニックスはスポ根漫画の師匠キャラみたいに、われわれファミコン少年たちを千尋の谷に突き落としたかったのだろうか。
 でもなあ、だからこそ、このゲームが少年たちの心に残るんだよなあ。何だろう、この「あの人は冷たいの。でも、その冷たさが好きなの」という恋する乙女みたいな気持ちは。人間の心はかくも複雑なものなのか。

ラゴス? 知らんな、そんな男は

 詰まりポイントとして知られるのが、ラゴス捜索である。
 テパの村から「水門の鍵(すいもんのカギ)」を盗んだラゴスは、ペルポイの町で牢屋に入れられた。しかし、いつの間にか牢屋から姿を消してしまったのだ。ローレたちは、何としてもラゴスを見つけ出し、水門の鍵を取り返さなければならない。そうしないとゲームが進まないからね。
 ところが、このラゴスが見つからないんだ。ゲーム内ではあまり情報も得られない。当時から詰まりポイントとして知られ、子どもたちを悩ませ、さらには憶測やウソ情報も飛び交ったものである。
 また、ベラヌールの町では「ラゴス? 知らんな、そんな男は」というセリフを言う兵士がいる。この人、こっちがラゴスの騒動を全く知らない状態(つまり、テパやペルポイよりも先にベラヌールを訪れた状態)でもこのセリフである。こっちが面食らってしまうわい。
 結果を言うとラゴスは、ペルポイの牢の奥にいる。逃げたのではなく、隠れていたのだ。画面を見ていてもわからない、「そんなところ、先に進めるの?」という場所に入ると、そこにラゴスがいるんだ。そしてこいつ、「みつかっちゃった」「すいもんのカギをかえすからゆるしてね」「ごめんね」などと、子どもじみた言葉を言ってくれちゃう。おまえのせいで、こっちは世界のあちこちを回って、「ゲームは1日1時間」の約束を守れなかったんだぞ! いやいや、おまえがカギを盗んだせいでゲームが先に進まないってことは、それはつまり、おまえのせいでハーゴンを倒せないっていうことだ。おまえのせいで世界は魔物たちに支配されるんだぞ。それを「ごめんね」で済ませるつもりかこいつは!
 だいたい、こいつはすいもんのカギなんか盗んでどうするつもりだったのか? 金に換える? ゲーム内ではシステム上、売れないんだよこのアイテム。こいつ、ハーゴンの手先なんじゃねえのか? 成敗したほうがいいですぜ、ローレ殿下。いや、まさかドラクエの主人公が人間を殺害するわけにもいかないか。

プレイヤーを徹底的にいじめ抜く! 海底の洞窟、その鬼畜の所業!

 水門の鍵を得ることで、満月の塔に突入。そこで「月のかけら」をゲット。そして月のかけらを使うことで、海底の洞窟に入ることができる。ここでは、ルビスのまもりと並ぶ超重要アイテム「邪神の像」を手に入れることができるのだ。
 本作屈指とも言われる鬼畜ダンジョンが、この海底の洞窟だ。邪神の像がここにあるかぎり、避けて通れない。何が鬼畜かというと。
 まず、この洞窟は構造が複雑だ。どうしても右往左往することになる。そして、ダメージを受ける溶岩と呼ばれる地形が多数存在する。これはトラマナの呪文でも無効化できない。仕方がないからダメージを受けながら進み、こまめに回復するしかない。それでいて右往左往するんだから、消耗が激しい。
 しかも、トラップの仕掛けられた宝箱もある。これを開けてしまうと、ローレのHPが半分くらい(すまん、正確にはわからないけど)に減らされてしまうのだ。どうも、彼らのHPを奪いたくて仕方がないダンジョンらしい。
 いや、奪いたいのはHPだけではない。MPもだ。もちろん、回復のためにホイミやベホイミを頻発しなければならないのだが、ここに登場するパペットマンやウドラー、悪魔の目玉は秘技「不思議な踊り」を使う。「パぺパぺパぺパぺパペットマン。3回続けて言ってごらん。舌を噛むよ」(知ってる人いるかな? 当時発売されたゲームブックのネタだよ)などというおかしな踊りなのだろう。でもどうして踊りなんかでMPが減るんだろう。それも、踊っている本人ではなく対戦相手のMPが。まあいいや。とにかくこうしてサマルやムーンのMPが削減される。削減量がまた、後のシリーズやリメイク版とはわけが違う。調べたところ、最大MPの約4分の1を減らすらしい。無茶だぜ。
 ローレたちご一行のHPもMPも、あますところなく搾取する。なんて恐ろしい洞窟だろう。まるで国民からいろいろな名目で税金を絞りとろうとする下手な政治家のようである。
 はぐれメタルも出てくるんだな、この洞窟。しかし本作のはぐれメタルは強力かつ凶悪で、HPも高いしベギラマなんか連発してくる。多大な経験値をもたらしてくれる鴨葱キャラではない(得られる経験値も低い)。こっちのほうが逃げ出すなんてことも起こりえる。ただし、ローレの打撃は強力なあまり、レベルが高ければ、はぐれメタルをあっさり倒してしまえる。どういう力関係なんですかね。
 最奥部には、地獄の使いが2匹待ち受けている。こいつらを倒して、邪神の像をやっと手に入れられる。よかった……。しかし、これで終わりではございませぬぞ。はて、リレミトを唱えられるMPが、サマルやムーンに残っていますかな? この消耗著しき鬼畜ダンジョンで。

 さて、今回はここまで。
 次回、旅のクライマックス。いよいよロンダルキアへ向かう。
 大冒険は続く。

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