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*kh₂em- [camera/campus]

英語語源辞典ではcameraに繋がる*kamer-とcampusに繋がる*kamp-は別項目になっていて、同じようにto bendの意味だが同語源とはみなされていないかもしれない。*kamer-と*kamp-を繋げる見方もあるようだ。

camera
←L camera
←AG καμάρα
←Proto-Iranian *kamarā- (“something curved”)
←*kamárati ←PII *kmárati
←IE *kh₂em- (“to bend, curve”)

camp
←L campus
←Proto-Italic *kampos
←IE *kh₂em- (“to bend, curve”)

印欧祖語の*kh₂em-は"to curve, to smooth"という意味があったようだ。

*kh₂em-は曲がった・アーチ状になった、という意味の古代ペルシャ語の*kamarā-からギリシャ語のκαμάρα(アーチ状のカバーをしたもの)になり、ラテン語の camera 部屋という意味になり、今はカメラを指す。スマホ・デジタル時代の写真機能にはもう「部屋」要素はなくなってしまったが...。

*kh₂em-は、一方で、曲げる・角を削る、滑らかにするというところからか、ラテン語では「広場」のようなオープンスペースを指すcampusになり、その後野外・野営・軍営を指すcampという語になっていく。

Kamra=部屋といえば、ポルトガル語から来ているヒンディー語の語彙、さらに遡ると元はラテン語。他にも、

H Po L E
अलमारी armário armārium Cupboard
कमरा câmara camera room
गिरजा igreja ecclēsia church
चाबी chave     clāvis Keys
बाल्टी Balde baiula? Bucket

インド原産のオレンジが中東・地中海経由でヨーロッパに行き、異分析される。
naranga→naranja→a naranja→an aranja→an orange→orange

その逆みたいなことが起きているのが面白い。
ecclesia→igreja→girja

ヒンディー語に入っているポルトガル語。日常的に使う語彙だが、なぜかボンベイあたりの
洋風な石造りのお屋敷を連想させる。

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