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*ǵews- [gusto/दोस्त]

ドーストはガストでグスターレするって、な~んだ?

英語史コンテンツ50+「パンはパンでも一緒に食べるパンはな~んだ?」より
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companion や company や mate が「共に食べる」の意味が含まれている言葉であることを紹介した記事。食事と人の絆を結びつけた表現が様々な国に見られることが面白かった。ではインド語派ではどうだろう。mate や meat につながる 印欧語根 *meh₂d- ("wet") はサンスクリットにくだると मत्त [matta] や मस्त [masta] ("intoxicated, delighted, mad") につながるようで、飲んでご機嫌な場面が連想される。

mate や meat の音の響きから मित्र [mitra] ("friend") に何か関連があるかと思ったが、 मित्र [mitra] は 印欧語根 *mey- ("to bind") から来ているようだ。ミトラと言えばローマの兵士の間で人気のあったミトラ教だが、サンスクリットのमित्र [mitra] は契約の神で太陽や光の神と関連があったようで、ペルシャを経由してオリエント世界に広まり、"bind"つまり忠誠、服従、信頼、敵への勝利を強調したものであったことから、兵士たちを中心に庶民の間で信仰されたようだ。司教や主教が被る司教冠ミトラはターバンという意味のギリシャ語だが、"bind"という意味のペルシャ語から来た可能性がある。つまり同語源。

現代ヒンディー語では、サンスクリットのमित्र [mitra]も勿論使うが、"盟友"みたいに少し固いイメージがあり、より日常的には दोस्त [dost] と言う。dostはペルシャ語دوست(dust)の借用語だが、このdustを辿ると何と印欧語根の *ǵews- ("to taste")  につながる。 *ǵews- はサンスクリット जुष्ट [júṣṭa]、ヒンディー語 जूठा [jūṭhā] (食べ差し、食べ残し)につながってあまりプラスの意味はない。しかし、*ǵews-がヨーロッパに行くと、ラテン語 gustare つまり、あのファミレスの名前にもなっている、英語では「ガスト」と発音される gusto とつながる。

しかし驚いたのは*ǵews-がchooseにつながること。でも味を見ることが選ぶことと関係するのは「吟味」という言葉もそうだ。

दोस्त [dost] は ガスト [gusto] に行ってgustare [楽しむ] する仲ということでしょうか。食事と人の絆を結びつけた表現が *ǵews- の周辺にもあった。

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