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*werǵ- [Ergal/work]

商標の普通名称化は世の中にたくさんある。ちょっとした化学分野に関係した仕事をしている人なら、技術者ではなくて事務仕事をしていてもテフロンやバイトンといった言葉を聞いたことがあるかもしれない。これらは実は一般名詞ではなく商品名・ブランド名だ。

アルミニウム合金のタイプでErgalというものがある。超々ジュラルミンとも呼ばれたり、JIS規格でA7075と指定されているものだ。海外業者ではErgalと言うことが多い。他にも Zicral や Fortal Constructal というブランド名があるようだが、辞書を引いてもでてこない。Ergalとは何ぞやと気になったので語源を辿ってみた。

Ergal
←古代ギリシャ語 ἔργον
←印欧祖語  *wérǵom
←印欧語根 *werǵ- ("to make")

*werǵ-から派生した語は他に
 allergy
 energy
 organ
 surgeon
 work

語根や意味からworkと同語源なのはよくわかる。全く知識がないので詳細は取り上げないが、エルゴンは "作用" という意味で、物理学や熱力学の用語によく出てくるようだ。

allergy は ἄλλος ("other") + ἔργον ("work, activity") と造語しされた用語だった。"異作用"というニュアンスだろうか。

energy も ἐν ("in") + ἔργον ("work") からの造語だ。

organ は ὄργανον からのようだが、全体からみて特定の仕事をする部分・器官というニュアンスなのだろうか。

surgery は
←中英語 surgerie
←古フランス語 surgerie
←ラテン語 chirurgia
←χειρουργία
←χείρ ("hand") + ἔργον ("work")
"working by hand" の意で、近代の造語ではなく、ラテン語を経由した歴史ある用語だった。

学術用語の -ergy や -urgy は ἔργον ("work") から来ているようだ。商標の普通名称化を見ることで、新しい語彙が生み出される現場を見ることができるのだと思った。

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