トンネル(詩)

 目に見えない力があることをおまえは知らない
 いつまでも トンネル状の遊具から出ようとせず
 肩口に振り向いて爆笑したおまえも
 トイザらスで買った ゴムボールが
 思わぬ軌道を描いて 芝の上を跳ねまわったことも

 私と私の妻とおまえの祖父母と
 おまえに重なり合う者どもは
 老いはじめている
 すぐにでも大声をあげて
 私たちは
 生きることから脱出したいきちがいのなかで
 それができず
 毎日家の外で
 苦しい仕事を続けている

 目に見えない力があることをおまえは知らない
 木組みのトンネルのなかにはおまえの笑い声が
 いつまでも続くように聴こえた
 ゴムボールがおまえを楽しませたその日
 私はひとつ歳をとり
 少しだけ皮膚が悪くなった

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