「もの」(掌編小説)
青い陶器のふちが欠けた。音もせずに私の手からすべりおち、フローリングに堕ちるまでの時間をいつも長く感じる。一瞬のうちに人は多くの夢を見るし、いくつもの疑問を抱くことができる。どうしてこれほどに物は脆く、私というものも壊れやすくできているのだろう?
たった一度の睡眠がうまくいかないだけで、いろいろなものがかすんで見えるようになる。手が止まって、仕事が進まなくなるとき、テーブルに置いた腕時計の秒針を追いかけている。以前つきあっていた彼氏がくれたその腕時計はピンクゴールドの輝きを