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12SRとnismo Sの比較レビュー的な

 以前何度かnoteのネタにしてきたわが愛車,12SRですが実は昨年諸事情により手放し,新たにマーチ nismo Sを迎えました。”あまり使い勝手を変えたくない”&”懐事情”により,シンプルに新型を乗り継ぐような感じになりました。
 ということで今月はnismo Sの概要と,12SRとの比較を軸にした感想を書いていきたいと思います。

 12SRについてはこちら。(じつは一番読まれている記事。)

マーチ nismo Sって?

 マーチ nismo Sは12SRと同様に,AUTECHがK13型マーチをベースにチューニングしたものです。12SRで施されたボディへのメンバー追加,専用足回りの設定,エアロパーツの追加,といった定番メニューで武装しています。この辺は12SRとメニューとしては変わらないのですが,最も大きな違いはエンジンです。12SRがベースの1.2Lエンジンにハイカム,ハイコンプ化によるメカチューンでパワーアップしていたのに対し,nismo Sはベースの1.2Lエンジンから1.5Lにスワップしています。結果,スペックは12SRの110ps/6900rpm, 13.7kgm/3600rpmに対し,nismo Sは116ps/6000rpm, 15.9kgm/3600rpmと低回転のトルク型になっています。

素の仕様に対してさらに大型化されたリアスポイラー。

 ちなみに私が今回入手した個体は,さらにnismoのエアロパーツとミラー,さらに車高調まで入っているフルコンプ仕様でした。お得。

12SRとnismo Sを比べると

 で,そんなマーチnismo Sをしばらく乗っての感想を,12SRとの比較を交えながら書いていいきたいと思います。要点を得なくなりそうなので,最初にnismo S視点で比較した長所・短所をまとめます。

長所

  1.  1.5L+1トン少々のボディは枕詞なしに速い

  2.  プラットフォームが新しくボディの剛性感は別物

  3.  レスポンスは電スロの進歩か上々

  4.  広くなったリアシートのスペース

  5.  東名120km/hではびくともしない安定性

短所

  1. 内外装のデザイン・質感は退化(ダッシュボードが顕著)

  2. チケットホルダーさえないサンバイザーに代表される使い勝手の退化

  3. エンジンは吹けあがりの軽さに対して落ちが遅い

  4. あいまいなクラッチと,あまりにもなまくらなシフト

  5. ギア比が変わっていないためか,燃費は微悪化

レスポンス!コーナリングスピード!

 まずはnismo Sのハイライトである走り周りから。端的に言えば,「マーチとしては」・「コンパクトカーとしては」なんて枕詞なしに速いです。

これ以上はいらない

 スーパートール系の軽自動車とほぼ同じ重量に(ともすれば一部それより軽い),その倍のパワーのエンジンを積んでいるのでその走りは軽快そのもの。むしろ過剰とまで言えるほどで,古いスタッドレスをはいてるとはいえ,合流車線で「えーい」とアクセルと踏むと,2速に入っていてもお構いなしに前輪をかきむしります。
 そのトルクを良好なレスポンスで引き出せるのだから,ワインディングでは楽しいことこの上ないです。12SRは電制スロットルが世に出たばかりのころで,まだ若干のラグを感じていたのですが,nismo Sでは見事にそれが解消されています。

 12SRから比べるとトルク型のエンジンになっているので,街乗りでも各ギアのカバー範囲が広く,乗りやすくもなっています。一方でマフラーからのボリュームも抑えられていることもあり,盛り上がり感が減って実用エンジン感が強まっていますがそこは一長一短。

 また,吹け上がり方向のレスポンスがよくなっている一方で,回転落ちは12SRの方が良好。これは12SRに採用されていた軽量フライホイールの差が出ているようです。エンブレの強さも変わってくるので,最初はてこずりました。この辺はメカチューンと排気量アップのアプローチの差でしょうか。

 総じて重量に対してのパワー感は,必要十分を半歩はみ出している感じ。ボディも強化されているので,明確にエンジンファーストではないんですが,いまにもボディを超えてしまいそうな絶妙なバランスを感じます。

ボディもそれに負けていないわけで,

 エンジンを支えるボディも進化はしています。プラットフォームは12SRから新興国向けのものにグレードダウンこそされてますが,それでも世代は新しくなっているので,しっかり感は別物。12SRは経年分のへたりもある分不利な面もありますが。
 足回りについては,購入時点で車高調が入っていたので純正同士の比較にはならないですが,「ガタン」「ズドン」系の衝撃は12SRよりも丸くなっています。タイヤも古いので現状突っ込んだことは言えないですね。どちらも一般的な車に対しては明確に「固め」に分類されることは明確でしょう。

 先述の剛性感と硬めの足回りゆえ,コーナリングスピードは明確に速いです。12SRはある程度のルーズさというか,限界をあえて上げていないところがあったように感じるのですが,nismo Sは明確に限界を上げています。それは太くなった純正タイヤや,接地感にも表れています。

 剛性感が高くなっている一方で,シフトチェンジ時にたまに発生するエンジンのゆすられ感は強め。これはボディに対して1.5Lのエンジンが大きすぎるのでしょう。マウントがへたっているのもあるでしょうが。これがエンジンはこれ以上いらないと思った所以の一つ。

 また,nismo仕様のハイライトであるエアロパーツですが,ON/OFFを試していないのではっきり断言はできないのですが,たぶん効いているでしょう。12SRでは東名120km/hクルーズでいっぱいいっぱい,といったな感じでしたが,nismo Sは「まだ余裕ありそう」となります。どちらもエンジンは3500ちょっと回っているのでそっちは頑張っていますが。

 ちなみに120km/hクルーズ時の回転数は両者同じなので,ギア比は同一とみていいでしょう。つまり1.5Lへの排気量アップはすべて加速性能に割り当てられている格好です。排気量アップでトルクが太った分,ギア比をロング方向に変えることで燃費にも振る,ということもできるのですが,nismo Sはそのままなので排気量アップ分燃費はビハインドになります。と,いってもリッター15キロ前後なので絶望的に悪いわけではないです。

そこまで悪くはない

 ほんで次はユーティリティー周りを。内外装のクオリティについては,タイ生産になったり,新興国向けの色が濃くなったりとしたこともあっていろいろ言われてますが,「その通り」と思うところと「そこまでか?」と思うところがあります。

ベース車を思えば…ね

 まずは「その通り」から。デザイン面は,好みによるところがありますが,一般的には新興国顔と呼ばれるものでしょう。ベースのあからさまさからよくここまでスポーティーに持ち直したな,と思う次第。欧州車的で時間がたっても色褪せない前型からは差を感じてしまうのは否めません。内装は主にダッシュボードやステアリングのプラ感の強さなどは12SRに対して退歩は感じます。個人的にグローブボックスが小さくなっているのがマイナス。
 ただ,ベース車を代車で借りたことがあるのですが,そこから比べると「ようやっとる」といった感じ。ブラックパネルや布地でどうにか頑張って加飾して見劣りしないようにという苦労がうかがわれます。

 明確な不満点は先述の小さくなったグローブボックスに,ミラーどころかチケットホルダーさえもつていないサンバイザー,なぜか一個しかない後部座席のカップホルダー,分割で倒れない後席,といったところでしょうか。(結構ある……。)

 操作系は走りの車というところで頑張ってはいますが,シフトレバーのなまくら感が強いです。どこに入っているのか分からないほどの手ごたえのなさ,長めのストローク,ついでにクラッチもあいまい,とMTのツボがちょっと弱い。シフトは重めのノブに交換することでどうにか妥協できるフィールになりました。元の12SRも決して秀逸とは言えなかったフィールだっただけに,MTの設定が元々ないK13系をベースにする上では思うとおりに行かないところもあったのでしょう。

明確によくなっているとこもあるんですよ

 散々な書き様ですが,一方でよくなっているところもあります。

 まずシート周りから。標準のセミバケットシートはnismoのロゴ入り。サポートも12SRよりしっかりしており,ホールド感も良好です。後席の足元空間も拡大されています。頭上のスペースも広くなっているので,数値以上に広く感じます。この辺は新興国向けにスペースを確保したところの恩恵でしょうか。センタートンネルも低くなっていますが,どちらにせよ5人は数値上乗れますが,実際は4人が実用なのでそんなに大きな違いはないでしょう。

 そのほかユーティリティー関係は,ラゲッジは車格に対しては広めです。4人乗って1, 2泊の旅行程度なら難なくこなせるでしょう。それなりにスクエアな形状になっているのもグッド。メーターは12SRがタコメーター,スピードメーターだけだったのに対して,ごく小さいものですがディスプレイが追加されています。これで外気温や燃費,走行時間などが確認できます。ただ,燃費はかなり楽観的なので要注意。あと地味にキーレスエントリー化されました。リモコンキーと比べると取り出さなくていいだけで,こんなに楽になるのかと。

 総合するとトータルではよくなったところ,悪くなったところトントンかな,という感じ。ただよくなったところは時代的には当たり前のところな一方,悪くなったところが目につきやすいので損している印象ですね。

総論:楽しいぞ

 ということでまとめ。ホットハッチの中でも知る人ぞ知る名車とされる12SRに対して,nismo Sはその域に達していない,とするレビューが多いですがそこまで強調されるほどでもないです。おそらくその声はベース車のターゲットが変わったことに対する不満からきているものだと思いますし,実際そこには私も思うことはあります。

 ただ,アプローチは違えどオーバースペック気味のエンジンに,強化したボディと足回り,そこそこの実用性といったホットハッチに必要な要素は全く劣ってはいないです。現実問題として,12SRの状態が良いものは年式的にも厳しくなっているので,それも念頭に置くとnismo Sのほうが費用対満足度が高くなる可能性もあります。

 それにしてもスイスポもフルモデルチェンジにともないディスコンとなった今(今後追加あるかもしれないですが),このクラスのホットハッチは絶滅危惧種になってますね。ヤリスGR?あれは現代に蘇ったグループBのホモロゲモデルだから……。

 と,いうことで12SRとnismo Sの比較レビューでした。
 以上,お納めください。

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