人の記憶の曖昧さと創作物の共犯関係
4, 5歳のころの記憶というのは,所々あるもののそれが本当に自分のものなのかと思うことがある。光景は目に浮かぶのだが,自分の見聞きしたことなのか,それとも家族や友達から聞いたものなのか……時々分からなくなる。そんなことになるのは何も物心つく前後の話だけでもなく,学生時代や本の数か月前のことでもたまにある。
ともあれ,人の記憶というものはとかく曖昧で,簡単に上書きされる。だいたいは親しい人から。さながら外付けハードディスクだ。そして上書きされる度に記憶は鮮明になるが――ど