ずいぶん前から準備していた旅行の
それはそれは楽しみにしていた旅行の
集合場所についた瞬間にちょっとした欠落を感じてしまうのは
その終わりを明確に意識してしまうからで

それを振り切ろうとして思い切り楽しむんだけど
どう足掻いても最後の目的地は我が家なわけで
結局大きな喪失感とちょっとした安堵を覚えて日常に戻っていく

この喪失感はひどく厄介なもので
時にやり場のない空白を数日引きずりながら
日々をやり過ごすこともある

一方でこの喪失感を愛おしく感じることもあって
楽しい時間の証として
幸せを得られた残り香として
非日常を乗り越えた勲章として
胸の奥にしまっておけるこは悪いことではないと思っている

それは最初の輝きからは色褪せてしまうのが常だけど
時々取り出して埃を取ってあげる対象が増えるさまを見ながら
年を重ねていくのはひとつの幸福なのでしょう

それを意識せずともみんな何となくそれをわかっているから
そして日々を淡々と過ごすことに幸せを見出す難しさを知っているから
悲しい気持ちになりたくなくても
心の奥に隙間を作りたくなくても
また次の旅に出るのでしょう

選りすぐりの宿を予約して
目的地を曲がりくねった線でつなげて
カバンの隙間を最大限に活用して
そしてありったけの期待とその終わりの喪失感を大事に育てて
次の集合場所に向かうのでしょう

それではみなさま，よき喪失を