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音楽#5「さよならポニーテール~普遍的なポップスへ~」

 前回からの続きになります。さよポニ第3シーズン,現在進行形のシーズンです。このシーズンは「神さま」というこれまでのさよポニの大きな特徴を取り除き,より”概念”めいたものへ深化しています。

このシーズンの概要など

 このシーズンで発売されたアルバムは「夢見る惑星」と「君は僕の宇宙」です。さらにシングルはダウンロード版で「遠い日の花火」,レコード(7インチシングル)で「センチメンタル」,8センチ短冊シングルで「青春ノスタルジア」を発売しています。全体的な印象としては作詞作曲,ボーカルともにエース(ふっくん・みぃな)の関与度が相対的に下がっており,より多彩な曲,ボーカルを楽しむことができます。

 それにしても平成も終わろうとしているこのご時世に,レコードや短冊シングルを買うことになるとは思わなかったですよ…。このことを大学時代の先輩に話したら,「短冊シングルってなに?」って聞かれる始末。

 そしてビジュアル面では「神さま」が卒業し不在となります。アルバム類のイラストは臨時の神さまが担当しています。ビジュアルという制限からも解き放たれてさよポニはさらにポップミュージックを体現する概念に昇華していきます。

ポップスとは

 まずポップスってなんだよ,ってとこから始めようかと思います。ポップスって乱暴に言うと「人々に受け入れられた音楽すべて」を指しているんじゃないかと思うのです。別の言い方をするとポップスはポップスであるために音楽的な記号は必要ないということです。たとえば,ロックであればエレキギターを中心にした構成,演歌であれば音階やこぶし,といったように他の音楽のジャンルには多少なりとも音楽的な記号を含んでいます。

 一方で,ポップスはサカナクションのようなテクノ・電子音楽系からアイドル音楽までを包含しています。音楽的な記号は関係なくポップスに含まれています。また,ポップスについてはさよポニのプロデューサーであるクロネコ氏もこう言っています。

 「すべては ばらばらでありつつ 同時にすべてがつながっていること。そして そのことにすこやかに対処するのは とてもむつかしいということ」この前半部分はポップスは他のジャンルから独立しているが他のジャンルすべてを含んでいる。そんなところじゃないかと思います。

さよポニはポップスをポップスと感じさせる

 では「そのことにすこやかに対処するのは とてもむつかしいということ」とはどういうことか,私は「ポップスをポップスと感じさせること」なんじゃないかと思うのです。

 ポップスを聞いているとき「ああ,これはポップスだ」なんて思うことなんてないでしょう。大抵は「ああ,誰々の曲だな」とか「ああ,○○風の曲だな」と感じると思います。

 ところがさよポニの,特に第3シーズンのアルバムを聴くと80'sアレンジ,バラード,テクノ系,アイドル系と多様なアレンジでいろんな曲を楽しめます。また,過去の曲のオマージュもふんだんに含まれています。こうした「かつてポップスであった音楽たち」をもう一度今の時代に呼び起こす,この傾向は第2シーズンの「円盤ゆ~とぴあ」から出ています。

 また形の面でもレコード,短冊シングルといったようにかつてポップスが人々の手に渡っていた方法で届けています。

 過去の音楽,媒体を丁寧につなげていくことでさよポニはポップスをポップスと感じさせてくれます。

さよポニが生み出す普遍的なポップス

 ポップスというのは流行り廃りがあり,常に移り変わっていくが上にタイムレスな魅力を表現するのは難しいです。故に,時間にとらわれない普遍的なポップスといったものを表現されたことはなかったように思います。

 さよポニは長い時間をかけて音楽,媒体に過去のポップスを織り込み,さらにはビジュアルすらも放棄することで普遍的なポップスを表現しています。これはさよポニの一つの到達点ではないかと思います。一つの到達点に達したさよポニが次はどんな世界に連れて行ってくれるか,楽しみで仕方がないですね。

おわりに

 さよポニシーズン紹介シリーズ,これにて完結です。またさよポニについてはちょくちょく書いていきますが,しばらくは他の音楽を書いていこうかと思います。

 以上,お納めください。

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