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予備試験論文式試験対策

 そういえば、予備試験の短答の結果もでて、論文の勉強をしている時期だと思ったので、自分の経験から少し書きたいと思います。論文の勉強方法はわりと公開されていると思うので、参考のひとつにしてみてください。

1.総論

 予備試験の論文を解いたことがある人はわかると思いますが、なかなか難しいです。ただ、大切なことは基本事項をしっかりと押さえることだと思います。もちろん、1桁や2桁を目指したいという人は別ですが、普通に合格を目指すなら、難しいことをやらずに、過去問や今までやってきた基本的な問題をやり直すくらいで十分だと思います。実際に、私も基本事項を重視して勉強をしていましたが、11?位(3桁)でした。まあ、無理して新しいことをはじめるのも大変ですし。あとは、自分の論証を確認するなどして、メンタルを整えてください。

2.各論

2.1.民法

 初期の問題は割と難しいなと思いましたが、最近は普通な問題が多いです。なので、民事系科目の中では、一番軽いです。
 やったことは、

・新司法試験論文えんしゅう本〈3〉民事系民法(辰巳法律研究所、2008年)(改正非対応)

です。
 今であれば、改正に対応している、

・千葉恵美子ほか「Law Practice 民法Ⅰ総則・物権編〔第4版〕」(商事法務、2018年)
・千葉恵美子ほか「Law Practice 民法Ⅱ債権編〔第4版〕」(商事法務、2018年)

等で論点を一通りやればいいと思います。新司法試験では、普通に改正の条文操作が聞かれたりしていたので、改正点は少し押さえておいていいと思います。

2.2.刑法

 予備試験の科目の中では、比較的安定してとれる科目だと思います。処理量が多かったりするので、答案構成をすぐに終わらせて答案を書くことをお勧めします。
 やったことは、

・井田良ほか「刑法事例演習教材〔第3版〕」(有斐閣、2020年)(使用したのは2版です)

です。この範囲からしか出ないと思うので、一通りやれば大丈夫だと思います。

2.3.憲法

 統治から出たりと、よくわからない科目です。私は得意ではなかったです。ほかの科目でとればいいので、以上まで書ければいいと思います。

 やったことは、

・大沢秀介ほか「憲法事例演習教材」(有斐閣、2009年)(授業レジュメの復習)

です。
 個人的には、

・大沢秀介ほか「憲法事例演習」(成文堂、2017年)

でいいと思います。学者が答案構成を書いてくれているのでわかりやすいです。ただ、絶版となっているので、手に入るかは不明です。
 他には、こちらのブログを参考にするのもいいと思います。

2.4.民事訴訟法

 民事訴訟法は難しいです。全く知らないことが出てくるというわけではないですが、普段やっていることをひねってくる感じだと思います。
 やったことは、

・越山和広「ロジカル演習民事訴訟法」(弘文堂、2019年)

です。基本判例について丁寧に説明してくれているのでわかりやすいです。
 他には、

・山本和彦ほか「Law Practice 民事訴訟法〔第3版〕」(商事法務、2018年)

でもいいと思います。
 問題が難しいので難しい問題集をしなければならないと思いがちですが、基本論点が書ければそこそこ点数が入るので、基本論点の復習に注力してもらえればと思います。

2.5.刑事訴訟法

 刑法と同様基本事項が多いです。なので、刑事系で点をとっておきたいです。
 やったことは、

・古江頼隆「事例演習刑事訴訟法〔第2版〕」(有斐閣、2015年)(3版が7月に発売します)

です。古江の問題を全部押さえておけば大丈夫だと思います。時間があれば、判例百選もおさえてもいいかもしれません。

2.6.商法

 会社法は毎年難しいです。割と手続き的なところを聞いてくるので、論点しか勉強していないとなると少し厳しい面があるのかもしれません。

 やったことは、

・伊藤靖史ほか「事例で考える会社法〔第2版〕」(有斐閣、2015年)

です。ただ、予備試験であれば、

・黒沼悦郎ほか「Law Practice 商法〔第4版〕」(商事法務、2020年)

の問題を一通り押さえておけば足りると思います。事例で考えるは難しいですし、一からやると時間がかかってしまうので、解いたことがない場合にはロープラを解くことをお勧めします。
 また、手続きについては、軽く条文を見たり、

・伊藤靖史ほか「LEGAL QUEST 会社法〔第5版〕」(有斐閣、2021年)

等の基本書を読んで確認しておくといいと思います。もし、授業のレジュメ等があればそれを読むでもいいと思います。

2.7.行政法

 人によっては今から始めるという人もいると思います。まあ、頑張れば何とかなると思うので、頑張りましょう。
 やったことは、

・曽和俊文・野呂充・北村和生編「事例研究行政法〔第3版〕」(日本評論社、2016年)(第1部のみ、国賠除く、一応起案した)
・土田伸也「実践演習行政法」(弘文堂、2018年)
・橋本博之「行政法解釈の基礎ー「仕組み」から解く」(日本評論社、2013年)(わからない部分のみ)

です。この中では、土田先生の予備解説は必須かなと思います。学者の答案がついているので、書き方がわからないという人は真似するところからはじめるといいのではないでしょうか。
 また、今まで行政法の演習書を解いたけどいまいち解き方的なところがわからないという人は橋本先生の本はお勧めです。新司法試験が題材なのであまり読んでくれる人もいないのですが、行き詰っているなら是非。最近では、橋本先生が連載をやっていたりするので、新司法試験はちょっと…という人はこちらもチェックしてみてください。
 他にも、

・板垣勝彦「公務員をめざす人に贈る 行政法教科書」(法律文化社、2018年)

を通読して論点以外の部分も勉強しました。初学者の人や知識で不安がある人は、板垣先生の講義を聞いてみるといいと思います。行政法のイメージが全く分からないという人や一通りやったけど全く頭に残っていない…という人にお勧めです。
 行政の最近の傾向は論証暗記の人を絶望に落としに行く感じなので、頻出部分以外についても対策すべきです。もっとも、深い理解は不要で、判例を覚えていて、自分の言葉で何かしら書ければいいと思います。

2.8.実務科目

⑴民事実務
 民事実務は、要件事実、民事執行保全、二段の推定、準備書面、法曹倫理、がよく出題されていると思います。私は特にできなかったのですが、それでも「A」がきたので、高い水準が求められているわけではないと思います。一応、実務科目は2科目分でカウントされるので、行政法とあわせていい評価をとってみてください。

ア.要件事実

・司法研修所編「新問題研究 要件事実 付ー民法(債権関係)改正に伴う補遺ー」(法曹会2020年)
・大島眞一「新版 完全講義 民事裁判実務の基礎[入門編]〔第2版〕」(民事法研究会、2019年)
・司法研修所編「10訂 民事判決起案の手引き(補訂版)」(法曹会、2020年)の事実適示記載例集

を使用していました。時間がない場合は、新問題研究と手引きの事実適示記載例集で足りる気はします。ただ、大島本(入門)があれば、要件事実から、民事執行保全、法曹倫理までカバーできるので、それを1冊やるのでもいいと思います。あとは、過去問をやれば最低限の知識は身につくのではないかと思います。

イ.民事執行保全

・上原敏夫・長谷部由起子・山本和彦「民事執行・保全法〔第6版〕」(有斐閣アルマ2020年)
・司法試験予備試験法律実務基礎科目ハンドブック1民事実務基礎〔第5版〕」(辰巳法律研究所、2020年)

を使用しました。こちらも論文対策であれば、ハンドブックと過去問で十分対策できると思います。
※大島先生の本にも民事執行保全法は書かれていますが、令和元年改正に対応していないと思うので少しだけ注意が必要かなと思います。もちろん、論文式試験くらいなので気にせずに使用していいとは思いますが。

ウ.二段の二段の推定
 普通に民事訴訟法の勉強をしてもらえればいいと思います。あとは過去問だ確認してもらえればいいと思います。

エ.準備書面
 何をやればいいのかよくわからなかったので、2回試験の民事弁護起案対策の準備書面の部分を読んでいました。やっている人はいなかったですが、個人的にはよかったと思っています。まあ、そんなことをせずとも過去問を解いていけばできるようにはなると思います。

オ.法曹倫理

・日本弁護士連合会弁護士倫理委員会編「解説 弁護士職務規定〔第3版〕」(日本弁護士連合会、2017年)

と、上記の大島先生の本を使っていました。過去問に出てくるものを押さえておけば大丈夫です。

カ.過去問
 辰巳のハンドブックを使用しました。それと、出題趣旨ですかね。

キ. おすすめ
 今自分がやるなら、

・大島眞一「新版 完全講義 民事裁判実務の基礎[入門編]〔第2版〕」(民事法研究会、2019年)
・大島眞一「完全講義 法律実務基礎科目[民事]ー司法試験予備試験過去問解説・参考答案ー」(民事法研究会、2021年)

かなと思います。この2つをおさえればAは取れると思います。
 他の科目の勉強もあるでしょうし、やることを絞ったら、あとはそれだけをやればいいと思います。

⑵刑事実務
 よく出るところとしては、犯人性、事実認定(刑法)、刑事手続、公判前整理手続、伝聞、法曹倫理、だと思います。刑法や刑事訴訟法で勉強する部分はそちらでしっかりとやればいいので、刑事実務特有の部分に勉強時間を割いてもらえればと思います。

ア.犯人性
 犯人性は難しいです。実は法律問題ではなく、日本語の問題ではあるので、書き方を押さえれば何とかなると思います。
 やったことは、

・山本悠揮「伊藤塾予備試験論文・口述対策シリーズ 刑事実務基礎の定石」(弘文堂、2016年) 
・新庄健二「司法試験&予備試験 刑法・刑事訴訟法・刑事実務 論文 虎の巻」(辰巳法律研究所、2013年)

です。山本先生の本は1冊で手続きまで対応しているので、これ1冊でほぼ対応できると思います。新庄先生の本は、事実認定について詳細に書かれているのでわかりやすかったです。後は、こちらのブログを読んだり、2回試験対策を読んだりしていました。
 おそらく刑事実務の山場であると思うので、頑張ってみにつけてください。

イ.事実認定
 刑法の勉強をしていればいいので、特に気にすることはないと思います。事実を拾って評価するという姿勢を意識するといいかもしれません。

・司法試験予備試験法律実務基礎科目ハンドブック2刑事実務基礎〔第5版〕」(辰巳法律研究所、2020年)

にもまとまっているので、そちらを参照してもいいかもしれませんね。

ウ.刑事手続
 これに関しては、上記の山本先生の本で足りると思います。勾留や保釈等普段の論文で勉強していないところについて書けるようにしたいです。

エ.公判前整理手続
 刑事手続と同様に、山本先生の本で足りると思います。

・川出敏裕「判例講座刑事訴訟法〔公訴提起・公判・裁判篇〕」立花書房、2018年)

を合わせて読んでもいいと思います。類型証拠開示や主張関連証拠開示等についてできるようにしておきましょう(口述でもでます)。

オ.伝聞
 伝聞もよく出ます。そのため、できるようにしておきましょう。苦手な人は、法学教室で連載している「事例から考える刑事証拠法」がわかりやすくてお勧めです。

カ.法曹倫理
 過去問で出たものについて勉強すれば足りると思います。気になる人は、ハンドブックや山本先生の本の法曹倫理の箇所を勉強すればいいのではないでしょうか。

キ.過去問
 辰巳のハンドブックを使用しました。それと出題趣旨です。

ク.おすすめ
 必要最小限であれば、山本先生の本で一通り勉強して、ハンドブックの過去問部分を参照すればいいのではないかと思います。もちろん、ぶんせき本を持っている人はそちらでいいと思います。なお、過去問最新何年分かを見てから勉強するほうが何が必要かわかっていいかもしれません(民事実務も)。

2.9.一般教養

 一般教養に関してはブログを読んで勉強しようと思ったのですが、結局何もしませんでした。なお、そもそも一般教養はできないので、「E」評価でした。法律でとれればいいので、そんなに気にしなくてもいいと思いますが、勉強したい人はこちらを見てみてください。友人はこの記事で「A」をとっていたので参考になると思います。

3.まとめ

 最初にも書きましたが、基本的には今までやったことをもう一度やればいいと思います。なので、今勉強している人にとって、この記事はあまり参考にならないかもしれません。とはいえ、行政法や実務科目についてはじめて学習する人や独学で勉強していて方向性があっているのか不安という人や来年以降予備試験を目指すという人にとっては意味のあるものなのかなと思います。
 本番まで不安な中で勉強をしていると思いますが、今やっていることは自分の力になっているはずなので、最後まで走り抜けてください。微力ながら応援しています。

4.補足

 よくある論争の一つとして「答案を書く必要はあるのか?」というものがあると思います。個人的にはどちらでもよいと思います。というのも、一般的には書いた方がいいとは言われていますが、私は特に過去問の起案はしませんでしたが現に合格しています。なので、大事なことは起案をすることそれ自体ではなく、何のために起案をするのか、だと思います。時間配分を確認したいということやあまり書きなれていないから不安があるというのであれば書いた方がいいと思いますし、今まで割と書いてきて基本的な部分について不安はないけれど、応用的な部分は苦手というのであれば無理して書く必要はないと思います。

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